ケータイ用語の基礎知識

第760回:「3CC CA」「4CC CA」 とは

 「LTE」や「LTE-Advanced」といった、現在、モバイル通信で利用されている通信方式では、通信用の周波数帯域を増やすことで、通信速度を上げられます。たとえば、5MHz幅という帯域を使って37.5Mbpsで通信できれば、(同じ条件下であれば)10MHz幅ではその倍の75Mbps、さらに倍の20MHz幅であれば150Mbpsで通信ができるわけです。

 しかし現実を見ると、スマートフォンなどが利用できるモバイル向けの周波数帯(400MHz帯~5GHz帯程度)は、すでに非常に多くの目的で利用されています。ひとつまとまった帯域を確保するのはかなり難しいのです。50MHz、100MHzと連続した帯域をこれらの目的のために再整備するのは非常に難しいと言えるでしょう。

 この一度に使っている連続した帯域ひとつのことを“Component Carrier”と呼びます。“Component”は構成部分、“Carrier”は搬送波を意味する英語です。Component Carrier、略してCCをまとめて束ねる技術は「キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation)と呼びます。本連載の「第659回:キャリアアグリゲーションとは」でも説明しましたが、キャリアアグリゲーションは2つのCCだけでなく、3つ、4つを束ねることもできます。

 そこで、キャリアアグリゲーションを「CA」と略し、3つのCCを使ってキャリアアグリゲーションを行うことを「3CC CA」、4つのCCを使ってキャリアアグリゲーションを行うことを「4CC CA」と呼びます。

 従来のCAと比べて、3CC CA、4CC CAのメリットは、通信のさらなる高速化、そして複数の周波数帯を使うことによる通信の安定化です。2つよりも3つ、4つと多くのCCを使うことで、好条件下ではCCひとつを使ったLTEの3倍、4倍、データをやり取りできます。条件が悪い環境でも、ひとつのCCでは致命的だった通信を、ほかの周波数帯のCCであれば回避できる、といったことが考えられるわけです。

日本の3CC CA

 2016年6月現在、日本国内でも3CC CAでのサービスが始まっています。

 たとえばNTTドコモの場合、3CC CAを「PREMIUM 4G」と名付けてサービスしています。2016年夏の対応機種は、「Galaxy S7 edge(SC-02H)」「Xperia X Performance(SO-04H)」です。これらの機種では2GHz帯(下り最大112.5Mbps)+1.7GHz帯(150Mbps)+800MHz帯(112.5Mbps)の3つのCCを使い、下り最大375Mbpsの通信が可能となります

 auのKDDIの場合、2GHz帯のFDD-LTEのほかに、UQコミュニケーションズの「WiMAX2+」(2.5GHz帯)を組み合わせた3CC CAサービスを提供しています。WiMAX2+は技術的にはTDD-LTE(時分割多重方式)とほぼ同じものですから、「FDD-LTE」+「TDD-LTE」+「TDD-LTE」の3CC CA LTEと言っていいでしょう。

 ソフトバンク、東名阪の一部エリアで提供する3CC CAは、2GHz帯(115.2Mbps)、1.8GHz帯(76.8Mbps)、900MHz帯(76.8Mbps)で最大262.5Mbpsとなっています。2016年夏モデルの「Xperia X Performance (502SO)」「AQUOS Xx3 (506SH)」などが対応機種となっています。

表記も決められている

 3GPPでは、3CC CAがどのLTEバンドを使って通信を行っているかを表記する方法も定めています。「CA_x-x-x」と言うように「CA」でキャリアアグリゲーションであることを示し、そのあと、使用しているLTEバンドの番号を書きます。たとえば、先のドコモの例でいえば、最大375Mbpsの3CC CAは、LTEバンド1と3と19が使用されているので「CA_1-3-19」と表記されます。

 2016年6月現在、3CC CAのサービスが開始されていますが、スマートフォン側のハードウェアが対応していけば、今後、4CC CAのサービスも、大きな課題もなく、開始されるとみられます。今後のモバイルサービスの進化の方向のひとつと言えるでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)