石川温の「スマホ業界 Watch」
アップルの“後出しジャンケン”、初の折りたたみ「iPhone Duo」にGalaxyはどう挑むか
2026年9月11日 11:32
アップルは2026年9月9日(現地時間)、スペシャルイベントを開催し、同社初の折りたたみスマートフォン「iPhone Duo」を発表した。会場で実際にiPhone Duoを触ってみたが、「アップルは後出しジャンケンが本当に上手い」というのが率直な感想となった。
iPhone Duoは閉じると5.4インチ、開くと7.6インチ。重さは254gだ。閉じたときにはやや重たく、分厚い感じもするが、表面積がコンパクトなので携帯性はかなりいい。開いてしまえば、iPhone Airより薄いということで、そこまで重量感はないように思う。
折りたたみスマホと言えば、やたらと「折り目」が話題に上る。iPhone Duoは画面に反射を抑える特殊加工(Nano-texture仕上げ)を施しているため、光が反射せず、点灯中に折り目が気になることはほとんどなかった。光沢のないNano-textureということで、コンテンツを見やすいというのもプラスだろう。
iPhone Duoを触っていて何度も頭をよぎったのが「これ、かつてのGalaxy Z Foldでは」という既視感だった。Galaxyが薄型を狙い、そぎ落としてきた機能を、アップルは丁寧に拾い上げ、初の折りたたみiPhoneに載せてきた。
例えば、インカメラ。ディスプレイの下にカメラを埋め込む「アンダーディスプレイカメラ」を採用しており、コンテンツ視聴時にパンチホールが一切、見えない。かつてサムスン電子もGalaxy Z Foldでやっていたが、薄型化を追求するあまり「画質が悪い」ということでやめてしまった。
確かにiPhone Duoもカメラの解像度が低いのか、スペックシートに具体的な数値の記載はない。ちなみに画質が気になってiPhone Duoで撮影してみたが、そこまで劣化しているとは感じなかった。
次に、本体を途中まで開いた状態で保持できる「フレックスモード」。実は8月から比較用にGalaxy Z Fold8を使っているのだが、Fold8ではフレックスモードが使えない。使っているときには「なくてもいいかも」と思っていたのに、ほぼ同等サイズのiPhone Duoで使えてしまうと、なにげに便利かもと思うようになってしまった。就寝中は時計を常時表示、ビデオ会議はノートパソコンのようにテーブルに置いて参加できる。
そして、ペン入力だ。かつてGalaxy Z FoldはSペン対応を売りにしていたが、これも切り捨てられた。iPhone Duoでは今後のアップデートでiPad用のペンが使えるようになる。しかも、外側と内側、両方のディスプレイで使える。
実際、折り目があるなかで、どれだけペンの使い勝手がいいかは未知数だが、早く試してみたい。「もしかしたら、iPad的に使えるかも」という期待を抱かせてくれる。
ちなみに発表会の会場では、アウトカメラで子供を撮影する際、外側のディスプレイにスヌーピーを表示して、子供の気を引かせる機能で来場者から歓声が上がっていた。この機能もすでにGalaxyで実装済みだ(なくしてはいない)。
アンダーディスプレイカメラ、フレックスモード、ペン入力。サムスン電子が折りたたみを薄くする過程で切り落としてきた機能を、アップルはことごとく拾い上げて搭載し、ほかに追随してきた機能もある。サムスン電子が地団駄を踏んでいる姿が目に浮かぶ。
アップルは折りたたみのiPhoneを長年、研究、開発していたとされている。先行するサムスン電子に勝つためには「アンダーディスプレイカメラ」「フレックスモード」「ペン入力」は搭載して当然だと思っていたのではないか。
一方で、サムスン電子は自ら機能をそぎ落とし、競争から降りた。サムスン電子が「折りたたみスマートフォンは分厚いようだといつまで経っても売れない」というユーザー調査の結果を受け、薄型化に邁進していたら、いつの間にか、機能やスペックをそぎ落としてしまった。
アップルの強みはハードとOSの一体的な開発だ。しかも、半導体やモデムなども自社で設計している。カメラ部分に主要部品を集中させ、薄型化を実現。iPhone Airで培った技術を武器にiPhone Duoを生み出した。
iPhone Duoを使っていて心地よいと感じるのが、折りたたんだときのユーザー体験だ。閉じた状態で、外側のディスプレイで見ていたコンテンツが、開いてもそのまま継続する。動画アプリなら、途中まで開くと外側画面で再生を続け、ノートパソコンのように開けば画面半分に再生ボタンを表示してくれる。
このシームレスに動作する体験は、サムスン電子が8世代に渡って折りたたみを作ってきても実現できなかった。ハードはサムスン電子、OSはグーグル・Androidということで、何年も「折りたたみならではの操作体系」を頑張ってきたが、直感的な操作感にはなりきっていない。
今回のiPhone Duoを見て、サムスン電子は間違いなく悔しがっているだろう。間違いなく、サムスン電子の闘志に火がついたはずだ。
まさに折りたたみの先駆者というお株を奪われた格好だが、次のGalaxy Z Foldでフレックスモードやペン入力を復活させてくるのか。アップルの後出しジャンケンに対する、サムスン電子の次の一手が楽しみだ。






