石川温の「スマホ業界 Watch」
なぜシャープがEVを手掛けるのか――フォックスコンの“スマホ生産ビジネスモデル”と気になる“国内生産地”
2025年10月28日 08:36
シャープはEVのコンセプトモデル「LDK+」の第2弾を発表した。10月30日から開催される「Japan Mobility Show 2025」で公開される。
「シャープがなぜEVなんて出すのか」と不思議に感じる人も多いだろう。また「シャープのEVなんてコンセプトで終わるに決まっている」と思う人がいて当然だ。
しかし、背景を知るとなぜシャープがEVに参入し、意外と製品化も現実味を帯びているという点に納得がいくはずだ。
シャープがEVに参入するのは親会社が台湾の鴻海科技集團(フォックスコン)だからという点が大きい。
フォックスコンと言えば、電子機器の受託製造サービス(EMS)を手がけ、iPhoneの製造に関わってきたことで有名だ。日本ではソフトバンクのロボットであるPepperもフォックスコン製といわれている。
そんなフォックスコンだが、実はEVの受託製造にも乗り出している。自動車はEVやソフトウェア化が進むことで、これまで自動車メーカーと下請けによる垂直統合から、水平分業になろうとしている。
そんななか、フォックスコンはEVのプラットフォームを手がけることで、さまざまな企業から発注を受けてEVを作ろうとしている。自分たちのブランドでEVを売るようなことはせず、iPhoneのように、自分たちは黒子に徹するつもりのようだ。
実際、2023年4月に台湾で開催された「TAIPEI AMPA 2023」という展示会イベントにフォックスコンが3種類のリファレンスモデルを展示していた。
シャープがベースにしようとしている「Model A」はなかったが、クロスオーバーSUVのModel BやステーションワゴンのModel C、ピックアックトラックのModel Vが展示されていた。
自動車メーカーやEVに参入したい企業はフォックスコンが用意している、これらのレファレンスモデルに対して、オリジナルのデザインを付け加えたり、ほぼそのままの状態でブランドをつけて売ることが可能だ。
スマートフォンも、EMS(Electronics Manufacturing Services、電子機器製造サービス)が用意したこうしたレファレンスモデルに、自分たちのデザインや技術でアレンジしたり、ブランドをつけて製品化されていたりする。まさにスマートフォンで培った知見で、フォックスコンはEVをやろうとしているのだ。
フォックスコン自身もバッテリーや電動制御といった基礎技術部分に強みがある。また、フォックスコンのレファレンスモデルを世界のさまざまなメーカーが採用し、売れまくれば、それだけ技術的なノウハウも溜まり、信頼性や安全性も高まっていくことだろう。
“停めている時がメイン”のEV「LDK+」
シャープ「LDK+」は実は「自宅に止めている時がメイン」というコンセプトのEVだ。
自家用車としてクルマを所有している場合、平日はほとんど自宅に停めっぱなしで、使うのは週末や長期休暇のタイミングぐらいというのがほとんどだろう。
そこでLDK+は車内の居住空間を重視し、普段はリビングやリモートワークスペース用に使えるような設計にしているという。運転席は回転し、後部座席と向かい合わせる事ができる。スクリーンがあり、プロジェクターで映画などを見られるようにする。
V2H(Vehicle to Home)システムとも連携し、太陽光発電や住宅用蓄電池間でパワーマネジメントも行えるようになるようだ。
シャープは車内空間を開発する一方、走行に関する部分はフォックスコンが手がけることになる。まさに水平分業で開発していくというわけだ。
こうした背景からも、シャープがEVに参入して、実際に販売していくという計画も、かなり現実味を帯びてくるというわけだ。
ただ、個人的に気になったのが、このLDK+をどこで作るのかという点だ。
プレスカンファレンスで質問したところ「フォックスコンが決めること」(シャープ担当者)ということで見事にはぐらかされてしまった。
フォックスコンのEV事業責任者である関潤最高戦略責任者(CSO)が2025年4月に日本のイベントに登壇した際には「日本で売るEVは日本でつくりたい」と語っていた。
日産自動車は追浜工場を閉鎖する計画を発表しているが、その追浜工場をフォックスコンが買収するのではないかと言われていた。日本でもEVを売りたいフォックスコンにとって、追浜工場は理想的な土地のはずだ。
しかし、一部報道によれば、日産とフォックスコンの交渉は破談になったようだ。
シャープではLDK+を2027年中に販売したいとしてる。果たして、フォックスコンは日本のどこでLDK+を作るつもりなのだろうか。




