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一ヶ谷兼乃のPocket PC「GFORT」レビュー
ドコモが提案するPDAの新機軸

 NTTドコモ「GFORT」。大きさ85×25.5×135mm、重さ300g(充電池含む)。
 NTTドコモは携帯端末を販売するだけでなく、モバイル通信を行うための、いろいろな機器を販売している。ポケットボードのようなNTTドコモが独自の製品を一から企画し販売しているものから、既存に販売されている製品をモバイル通信向けにアレンジしてNTTドコモブランドとして販売しているものまで様々なものを手がけてきた。

 今回紹介するGFORTは、昨年9月のカシオのPocket PC「E-700」の発売から数ヵ月遅れでNTTドコモブランドで発売されたPocket PCである。NTTドコモが基本仕様から細かい部分まで手を入れ、全く別な性格の製品に仕上がっている。E-700とGFORTは、カタログ上で比べてみても、多くの部分のスペックは同じではあるが、コンセプトが異なるため製品の方向性を決める重要なスペックが変更されているのだ。カシオのE-700に関しては、広野氏のレポートを参考にして欲しい。


P-in Comp@ctを挿せる“強い”Pocket PC

 E-700とGFORTの異なる部分で、筆者が最も大きな仕様変更だと感じているのが、拡張スロットである。E-700のSDカード/マルチメディアカード用スロットから、GFORTではCF Type2スロットに変更されている。SDカード/マルチメディアカードはメモリカードであるために、ストレージ拡張用としてしか利用できないが、CF Type2スロットであれば、それを利用できる拡張機器の種類は多い。


 例えば、コンパクトフラッシュとしたメモリストレージ以外に、P-in Comp@ctといったカード型PHSカードを挿して手軽にモバイル通信したり、CFタイプのNICを挿して高速にWindowsマシンとのデータのやり取りを行なうこともできるようになり、GFORTの活用方法が大きく広がるのだ。


 GFORTとカシオの「E-700」。GFORTのほうが若干大きく、厚みがある。拡張スロットは、GFORTがCF、E-700がSD/MMC。イヤホン端子の位置が変更されているほか、GFORTにはWindowsボタンが追加されている。
 次は、何といっても他のPDAには見られないデザインだろう。これまでのPDAのほとんどは、薄型化、軽量化を目指しているが、開発者がPDAとはどういうものであるのかをゼロから考え直し、独自のコンセプトを持って企画されたのが、GFORTのこのデザインである。PDAは持ち歩くものであるから、タフでなくてはいけないということなのだ。

 確かに、ほとんどのPDAは、手を滑らして落としてしまうと、まず間違いなく液晶が割れたり、本体が分解してしまう。そこまで激しい衝撃でなく場合でも、カバンの中に入れていて動いてしまい擦り傷がついてしまったり、満員電車のなかで押されてしまって本体が割れてしまうといったことも多々ある。

 しかし、GFORTの場合、本体全体がグルーの軟質なプラスティックのジャケットに包まれており、多少の衝撃では壊れないようになっている。また、ありがたいのは、このジャケットにより防滴になっていることだ。ちょっとしたトラブルで水がかかってしまったり、雨に降られてしまっても大丈夫なのだ。GFORT本体に装備されている各コネクタなどは全てカバーされ、完璧なまでに防滴へのこだわりを感じることができる。この点においても、最近のスリムでスマートなPDAであれば故障してしまう可能性が高い。


 拡張カードを挿す場合には、本体上部に被さっているジャケット部分をいったん剥がす必要がある。写真はP-in Comp@ctを挿したところ。
 ただ、CF Type2スロットに拡張カードを挿す場合には、本体上部に被さっているジャケット部分をいったん剥がす必要がある。物理的にGFORTのスロットに収まる拡張カードであれば、剥がしたジャケットを装着しなおすことができるが、P-in Comp@ctやNICなどのようにはみ出してしまう形状の場合には、ジャケットを被すことができないために、防滴性能は下がってしまうことになる。同様にACアダプタを使って充電しているときや、PC接続ケーブルを接続しているとき、ヘッドホンを挿しているとき、CUT Keyを接続しているときは、各コネクタに装備されているカバーは剥がしておかないといけないために、防滴性能は下がる。


豊富な付属品

 付属のリモコン付きステレオヘッドホン、片手だけで文字入力ができるキーボードCUT Key、ソフトケース。
 そして、GFORTの特徴として、様々なアクセサリが標準添付されていることもあげられる。他のPDAには、別途購入しなくてばいけないオプション扱いになりそうなものでも標準添付されているのだ。

 例えば、PCと接続するための専用USBケーブルやリモコン付きのステレオヘッドホン、片手だけで文字入力ができるキーボードCUT Key、ソフトケースなどは、他のPDAではオプション品として扱われてもいいものではないだろうか。GFORTでは、これらのアクセサリが全て付属するのだ。付属する豊富なアクセサリのなかでも、他のPDAにないものがCUT Keyである。

 CUT Keyは、ミサワホームが開発した22個のキーを使って文字入力を行うキーボードだ。キーを複数回押して、子音と母音を組み合わせで入力する方式で、片手だけで文字入力ができる特徴をもっている。NTTドコモの製品「パクティ」でも採用されている入力方式である。


 CUT Keyを装着。一度慣れてしまえば、長文入力でも短時間で入力することができる。
 GFORTに付属するCUT KeyはGFORT専用のもので、本体の下部に直接装着できるため、左手で本体を持ち、右手でキー入力するといったことが可能になる。他にない入力方式のため慣れるまで時間がかかるが、一度慣れてしまえば、長文入力でも短時間で入力することができる。キーボードが付いていない小型のPDAでは、まず文字入力で問題になることが多いが、GFORTでは習熟すれはCUT Keyを使い、相当なスピードで文字入力をすることが可能になるだろう。このCUT KeyのGFORT本体への取り付け、取り外しは数秒で行なうことができるほど簡単である。

 しかし、GFORT自体Pocket PCとしてトップクラスの処理能力を持っているために、筆者がしばらく使っていた環境では、手書き入力やソフトウェアキーボードでも、文字入力で不満を感じることはなかった。ただ、PDAをメインのメール端末として利用するのであれば、CUT Keyなりのキーボード入力ができるGFORTは魅力ある製品であるのではないだろうか。

 CUT Key以外にも、GFORTでMP3データなどを気軽に高音質で再生できるよにリモコン付きステレオヘッドホンや、本体だけでなくCUT Keyや拡張カードなども一緒に持ち運ぶときに便利なソフトケースなども付属している。GFORTを買ってくれば、これらのアクセサリも一度に揃えることができる。

 唯一付属していないのが、携帯電話やPHSとGFORTを接続するケーブルである。これは、GFORTを購入した人が、通信機器として何を選択するかによって、決まってくるアクセサリであるため、別売となっているのではないかと考えられる。もしくは、GFORTユーザの多くはP-in Comp@ctとの組み合わせで使うのではないかという、NTTドコモの読みがあるのかもしれない。


いろいろなシチュエーションで利用できるPocket PC

 GFORTのPocket PCとしての仕様はE-700と同様で、E-700自体、国内で発売されているPocket PCとして、現在でもトップレベルの人気であり、CPUのパワーや発色が良く見やすい液晶画面は他のPocket PCを凌ぐ性能を誇っている。GFORTは、このE-700の基本性能を同じにしているために、現行のPocket PCとしてトップレベルのパフォーマンスを持っている。それに加え、CF Type2スロットの拡張性の高さ、防滴性やちょっとした衝撃でも壊れない耐久性を備えたタフネスなボディ、他のPDAにはない鮮やかで堅牢なイメージといった個性をもつ魅力的なPocket PCに仕上がっている。

 使用感も極めて良好で、Pocket PCという仕様の中では、まず文句のない仕上がりになっている。液晶は、広くて明るいもので、非常に見やすい。描画速度に関しても不満を感じることはない。左側面にあるボタンやダイヤルも操作しやすい形状になっている。前面にある各ボタンも軽い感じで押しやすく、誤操作したことはなかった。スピーカからの再生音に関しても十分ば音量と音質が確保されている。さすがに、音楽を再生するには付属のステレオヘッドホンを使ったほうがいい。ちなみに、付属のリモコン付きヘッドホンは、リモコン部分とヘッドホン部分が切り離せないタイプなので、別なヘッドホンを使いたい場合にはリモコンでの操作は諦める必要がある。

 E-700に比べ増えた体積や重量、個性的なデザインであるGFORTは、ユーザーを選ぶかもしれないが、PDAとして使う製品としては極めて高いパフォーマンスを持つ。充実したアクセサリが付属しながら、実売価格は他のPocket PCよりも低くなっており、モバイル通信からいろいろなシチュエーションで利用できるPocket PCの購入を考えているのであれば、GFORTは最も注目度が高い存在となるだろう。

 ただ欲をいえば、GFORTにはCUT Keyをはじめ、様々なアクセサリーが標準添付されているが、ユーザによっては全く使わないものがあるのではないだろうか。個人的にはアクセサリは別売にしてもらい、本体の価格をもっと低く設定して欲しい。別売にすると、同じアクセサリを揃えたときに、結果的に購入金額が高くなってしまうかもしれないが、アクセサリ付きパッケージと、本体だけのパッケージの2種類を用意して、ユーザが必要に応じて選択できるようにしてもらいたいものだ。



URL
  「GFORT」のニュースリリース
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/00/whatnew1206b.html
  「GFORT」の製品情報
  http://www.nttdocomo.co.jp/mobile/lineup/gfort/index.html
  「E-700」の製品情報
  http://www.casio.co.jp/pocketpc/e700/
  「パクティ」の製品情報
  http://www.nttdocomo.co.jp/mobile/lineup/pacty/


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(一ヶ谷兼乃)
2001/01/26 00:00

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