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KDDIが利尻島で「しまものラボ」、離島の地域活性化を目指す

 KDDIは北海道利尻町、利尻町商工会、NPO法人離島経済新聞社とともに、離島の地域活性化を目指す「しまものプロジェクト」の一環として、5月25日から8月にかけて利尻島で「しまものラボ」を開始する。

 「しまものラボ」は、販路拡大や商品PRに課題を抱える離島の事業者を対象に、オンライン講座で販売の基礎を学ぶというもので、2016年10月~2017年1月に鹿児島県の喜界島において同様の取り組みが行われていた。

 4カ月にわたる講座では、専門講師が商品販売のノウハウを伝授。あわせてauスマートパスの商品モニターや、KDDI社員による試食アンケートなどで市場調査を実施。全国販売に向けての注意点などを学んでいく。希望者には、タブレットを活用した商品のプロモーション動画の制作体験講座も実施される。全講座終了後には、全国約2500店舗のauショップで購入可能な「au WALLET Market」に受講者の商品が並ぶ予定。

今回の発表に先立ち、5月19日にはKDDI本社ビル1Fエントランスで離島応援マルシェが開催され、多くの社員や近隣住民が訪れた
利尻島のほか、喜界島や小笠原諸島の名産品も販売されていた

記者会見の模様

(左から)利尻町 町長の保野洋一氏、利尻町商工会 事務局長の八講博之氏、離島経済新聞社の鯨本あつこ氏、KDDI 北海道総支社 管理部長の岩澤政行氏。町長の左は同町のマスコットキャラクター「りしりん」

 5月25日に利尻町役場で行われた会見には、利尻町 町長の保野洋一氏、利尻町商工会 事務局長の八講博之氏、離島経済新聞社の鯨本あつこ氏、KDDI 北海道総支社 管理部長の岩澤政行氏らが出席。

 町長の保野氏は冒頭で、「北海道北部に浮かぶ利尻島は、中央に標高1721mの利尻山を仰ぎ、利尻礼文サロベツ国立公園に指定される豊かな自然の中で、全国的に有名な利尻昆布やウニなどの海の幸に恵まれた漁業と観光の島。利尻町は、その島の西南部に位置する、人口2100人余りの町」と地元を紹介。

 同氏は、「全国的に見ても各地域共通の課題だが、利尻町も同様に人口減少が著しく、それを背景にした様々な課題が存在している。その中で基幹産業の漁業・観光業を中心に産業振興、移住・定住促進など、地域全体で山積する課題解決に向けた取り組みを行っている。産業振興に結び付く地域を代表する産品についても、生産者、商工会、民間事業者が中心となって独自に試行錯誤して商品開発や、札幌、東京など各地のイベントへの出展等による販路の開拓・拡大などを行ってきた」と同町が抱える課題を説明。今回実施される「しまものラボ」を通じて、町の活性化を加速させたいと語った。

 続いて登壇したKDDIの岩澤政行氏は、「しまものプロジェクト」の実施の背景や、「しまものラボ」の概要について説明。「しまものマルシェ」への出店事業者の一例として、売上が約10%増となった事例や、喜界島で実施した全5回の「しまものラボ」への参加者にアンケートを行ったところ、全事業者から「参加してよかった」という回答があったことを紹介。同氏によれば、喜界島での反省点を踏まえ、利尻町で行う「しまものラボ」では、新たに全国販売に向けた食品衛生や安全面などに関する留意点を講座内容に盛り込み、販路拡大を進めやすいよう改善したという。

 また、同プロジェクトをサポートする離島経済新聞社の鯨本あつこ氏は、「離島の共通課題はたくさんあるが、商品を販売していこうとした時に課題となるのは、市場から離れていること、少量多品種のものが多いこと、自然の中で作られることから生産が不安定であることが多く、販路を拡大しようとするといろいろな壁にぶつかること。良いものだけど、ちょっと売り方が難しいもの、お客様の声が分からないもの、少量がゆえにコストがかかってしまうものを、いかに欲しいと思うお客様に届けるかということを『しまものラボ』を通してお手伝いしたい」と述べ、“伝えていくこと”の重要性を説明した。

KDDI CSR・環境推進室 室長の鳥光健太郎氏

 プレゼンテーション後の質疑に応じた、KDDI CSR・環境推進室 室長の鳥光健太郎氏は、「しまものラボ」を利尻で行うことになった経緯について、「国交省が有人国境離島を国が後押しをするような取り組みが始まっており、利尻島がそれに該当している。東京で行われる島と企業をマッチングするようなイベントに参加しているが、利尻町側から我々の取り組みに興味をもっていただき、ぜひ一緒にやりたいという声をいただき、熱い思いを感じたので、利尻島を選んだ」と振り返った。

 また、喜界島での実施を振り返り、「島の事業者の産品を実際にau WALLET MarketのようなECサイトで販売していくにあたり、食品衛生上の超えなければいけないハードルがたくさんあるというところが非常に大きな課題だと感じた」という。その上で、「今回は特に5回の講座のうちの1回で、ECサイトで全国に向けて販売するためには、こんな取り組みをしなければいけない、こんな食品衛生上の制約があるので、そこを改善しなければいけない、といったところも含めて講座の中で取り扱っていくということにした」と、講座の内容についてもブラッシュアップを図っていることを説明した。

商品の良さをいかに伝えるかに挑戦

会見後に開催された第1回の講座は、プロデューサー/ブランドコンサルタントの松田龍太郎氏を講師に迎えて開催

 利尻町での受講者の一人、同町で酒屋・津田商店を営む高橋哲也さんは、「基本的な物の売り方を学び、ネットを使った販売にも取り組んでいきたい」と、今回の講座を受講することにした理由を説明する。

 また、ご当地アイスを作る北利ん道の平川智春さんは、「私は一般の主婦だったが、ご当地アイスを作りたくて、乾燥ウニ(うに珍味)、昆布からのお塩、根昆布スプーンができた。何も知らない素人だったので、何もかも学びたい。パッケージも自分で手作りしたので、物足りないところがある。そういうところから、どういう風にしたらお客さんに見てもらえるか、手に取ってもらえるかを勉強していきたい」と語る。

 ECサイトで全国に向けて販売していくことを前提に、パッケージングをはじめ、島外で伝えたいことを代弁するようなツールの制作やパブリシティの打ち方、さらには最適な価格設定などに関心を持って取り組んでいくようだ。

利尻富士(利尻山)
北利ん道
ご当地アイス「愛す利尻山」を作る北利ん道の平川智春さん
ご当地アイスを作る過程で3つの特許を取得したのだとか
津田商店
お酒のほかにもさまざまな商品を扱う
テレビ等で紹介され、有名になった「利尻昆布ラーメン」
利尻 島の駅 海藻の里・利尻
店内では目を引くパッケージの土産物が販売されている
本物のなまこを干して作られた「なまこストラップ」