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格安スマホでも楽天ならではの付加価値を――楽天モバイル発表会
2016年10月27日 20:41
楽天は、MVNO「楽天モバイル」として2016年冬~2017年春に販売する端末や新サービスに関する発表会を開催した。
端末に関するニュース記事、新サービスに関するニュース記事は別途掲載している。本稿では発表会のプレゼンテーションについてお伝えする。
冒頭に登壇した楽天 副社長執行役員 通信&エナジーカンパニー プレジデントの平井康文氏は、「楽天モバイル」のサービスが2周年を迎えることや、三木谷社長が「1000万加入を目指す」と高らかに宣言してサービスを開始したこと、1周年のタイミングでは銀座にリアル店舗をオープンしたことなどを振り返る。
「MVNO市場をみると、継続して大きな成長をしている。時代の流れ、環境の流れの中で「MVNO」の認知度が大きく高まり、市場の中でもしかるべきシェア、しかるべき立ち位置をとれている」と平井氏は現在のMVNO市場を語る。
「躍進するMVNO市場の中で、光栄なことにMMD研究所の調査では「メインで利用している格安SIMサービス」でシェアナンバー1になった。日経MJの1万人調査でも利用している格安スマホでは他社を大幅に追い抜きシェアナンバー1という評価もいただいた」と、平井氏は楽天モバイルがMVNO市場の中でも大きく存在感を示せている様子を語り、「楽天モバイルの進化がシェアという形で表れてきたといえる」と自信をみせる。
平井氏は、同社がこの2年間で注力してきたのは「ユーザーのニーズに愚直に応える」「オリジナリティを楽天グループ全体のエコシステムを活用して、活かしていく」の2つだとした上で、回線交換での通話のかけ放題や、端末代金も含めた「コミコミプラン」を提供してきたことを振り返る。
YOSHIKIを起用したテレビCMやプロモーションも好評とのことで、発表会では、ドラムを叩くシーンが収録された第2弾のCM映像を公開。楽天が協賛、YOSHIKIも協力した「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」でポップアップストア(後述)を展開したところ、会期の3日間で、通常の店頭を上回る申し込みがあったという。
実店舗など「リアルタッチポイント」の展開は、2016年1月に「年内に100カ所」と宣言されていたが、10月27日時点で106カ所に展開。「これからも積極的に展開していく」と、計画を前倒しで進めていく方針を示す。
「楽天グループ最大の武器を投入した」という取り組みは、楽天スーパーポイントで楽天モバイルの料金を支払えるようにした点。「現在、ユーザーの利用金額の45%が楽天スーパーポイントで支払われている。1人で月額1600円とするなら、720円分がポイントで支払われている計算になる」とのことで、「1600円が880円。破壊的な価格でMVNOサービスを利用できていることになる。他社では真似できない、楽天ならではのサービスだと確信している」と自信を語った。
データシェアと大容量プラン
新サービスのうち、データシェアと大容量プランについては、楽天 執行役員 楽天モバイル事業 ヴァイスプレジデントの大尾嘉宏人氏から説明された。大尾嘉氏はそれぞれを紹介した上で、大容量プランとデータシェアの組み合わせによるメリットや利用イメージについて、大きな紙芝居を用意して解説。同氏は以前、ポイントの貯まりやすさについて、多数のピンポン玉をケースに流し込んで紹介していたが、今回もひと手間かけた解説で「誰とでも分け合える」といったアピールポイントを紹介した。
リアルタッチポイント、2017年は150カ所を展開
大尾嘉氏からは、楽天モバイルの実店舗の展開について、今後の方針が語られた。
同氏は2017年内に150カ所以上の展開が目標としたほか、パートナー企業としてジェラート・アイスクリームを展開する「ViTO」と協力し、年内をめどにコラボショップを東京・下北沢にオープンする予定であることを明らかにした。
また、設定サポート付きの「ご自宅出張申込」は、ユーザー全員を対象に、2017年1月31日までは半額の4150円(税抜)で提供することも発表した。
さらにタッチポイントの強化として、「ポップアップストア」も展開していく。これは前述の「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」の会場でも展開された取り組みで、ショッピングモールや量販店、駅など、さまざまな場所にすばやく展開できる仕組みになっている。
楽天モバイルの「ポップアップストア」は、端末を展示するL字型の小さな机だけで構成されているが、実際には、机の基部が大きなスーツケースを開いた状態になっている。展示・販促物や一部の商品の在庫などはすべてスーツケースに収納して持ち運べるようになっている。
この「ポップアップストア」により、用意した在庫の商品はMNPを含めて即日開通・即日受け渡しが可能という。楽天モバイルの実店舗が未上陸という13県には、このポップアップストアを活用し展開していく。具体的には、大分県のゲオモバイル、熊本県のゆめタウン光の森を皮切りに、土日を中心に展開していく予定。
AQUOSケータイ投入「ガラケーでもユーザーの心をつかんでいきたい」
端末については、楽天 楽天モバイル事業 チーフプロダクトオフィサーの黒住吉郎氏が担当し、シャープ製のスマートフォン「AQUOS SH-M04」と、LTE対応のフィーチャーフォン型端末「AQUOSケータイ SH-N01」、ファーウェイ製のタブレット「MediaPad T1 7.0 LTE」を紹介した。
「AQUOS SH-M04」については、ミドルクラスの端末として、シャープのノウハウの集大成としたほか、「充実した機能だけでなく、ちょっとしたおもてなしのような部分がAQUOSの魅力」と紹介した。
「AQUOSケータイ SH-N01」は、SIMフリーでLTEに対応した折りたたみ型で、ワンプッシュのオープンボタン、防水・防塵、長時間駆動といった特徴を紹介。ユーザーからの声として「分かりやすい適正価格の格安スマホこそ、ガラケーにふさわしいのではないか。なぜガラケーがないのか」という声が多いことや、大手キャリアのLTEケータイで中心になっている2段階定額は分かりにくいと指摘。月間3.1GBで、5分かけ放題などプランは分かりやすく、分割払いでは価格も魅力的になっているとし、「いわゆるガラケーでもユーザーの心をつかんでいきたい」と意気込みをみせた。
2017年は「大きく勝負に出る年」
最後に再び登壇した平井氏は、「この2年間でMVNO事業の基礎はできあがった。楽天モバイルの事業は、楽天グループの3つのビジョンの中で『スピード』に分類されている。その観点では、この2年間、十分に戦ってきた。2017年はこの基礎から、大きく勝負に出る年。楽天モバイルのみならず、MVNO業界全体にとっても勝負の年だと感じている」とした上で、以下のように今後を語る。
「脱『格安スマホ』。MVNO事業=格安スマホではない。似て非なるもの。しかし未だに多くのメディアは、分かりやすいこともあって、(MVNOの意味で)格安スマホという言葉を使っている。『MVNO』という言葉、このアルファベット4文字が一般用語として記載されるようになる、その勝負の年が、来年。楽天モバイルは3年目が始まる。『MVNO』を、次の常識にしていく」(平井氏)。
カウントフリーは検討せず
質疑応答の時間には、「LINEモバイル」などが提供している、SNSなど一部サービスのパケット通信を使用量にカウントしない「カウントフリー」について、導入する意向があるかどうか聞かれた。大尾嘉氏は「今のところ、検討は行っていない」と回答し、楽天市場やポイントシステムなどの楽天独自のエコシステムで差別化を図っていく方針を示した。
脱「格安スマホ」と宣言した点について、「脱格安(後)の世界観がみえない」と聞かれると、平井氏は「価格だけ(が特徴)で、安かろう・悪かろうという印象から脱却したい。安いけど、良いサービス。付加価値を提供できるかどうか、というもの」と説明し、価格は抑えながら、内容は充実させていくのが脱「格安スマホ」宣言の趣旨であるとした。
この点に関連し、お昼時など混雑時の通信速度の低下が目立っているという指摘には、黒住氏が「素直に我々も、一生懸命勉強しながら、改善しているステージにある。一部の不満の声は届いており、(指摘を)否定するつもりはない。通信速度の改善の兆しはみえているので、満足することなく、より一層努力していく」と回答、前向きに取り組んでいく姿勢を示している。
また囲み取材では、ドコモなどMNOとの差別化では、やはり価格競争に陥るのではないかと聞かれた。平井氏は「今日現在、楽天市場のトランザクション(取引)の6割はスマホからになっている。これは今後もっともっと加速していく。モバイルの技術もネイティブアプリだけでなくHTML5などもある。これらを組み合わせることで、楽天の経済圏で利用しているユーザーにとってベストなプラットフォーム、ベストなポータル、それが楽天モバイルである。そういう付加価値訴求をしていく。楽天のIDは1億1000万件以上ある。楽天モバイルの事業単体をみるのではなく、楽天グループのシナジーを考えたときに、通信分野での『楽天モバイル』の端末は、すべての楽天のサービスをベストにエンジョイできる。そういうふうに総合的に考えている」と、付加価値は楽天グループ全体で訴求していくと回答している。