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楽天モバイル、大手でも格安でもない「まったく新しい立ち位置を目指す」
5分かけ放題と新端末のセットプラン提供、楽天ポイント充当も開始
2016年6月28日 17:36
楽天は、MVNOサービス「楽天モバイル」の夏のラインナップや新サービスについて発表会を開催した。登壇した楽天 副社長執行役員の平井康文氏は、「業界のチャレンジャー」「MVNOの風雲児を目指す」「格安でも大手キャリアでもない、まったく新しいサービスを目指す」と楽天モバイルの立ち位置を示し、今後の戦略を解説した。
かけ放題の提供で「潮目が変わった」
平井氏は、LTEという言葉が一般にも広まったことと同様に、「MVNO」「格安スマホ」もこれから市民権を得るとした上で、「MVNO業界の風雲児として進化し続ける。さまざまな挑戦をする」と、楽天モバイルが積極的にサービスを拡張していく様子を語る。
「1月に発表会を開催し、6つの公約を掲げ、その中でも特に『5分かけ放題オプション』は大きな反響をいただいた。大手キャリアの半額であり、新しい価値が生まれた日だった。潮目が変わった瞬間だったと考えている」。
「従来は、通話はあまりせず、データ通信料も抑えたいという人がメインのユーザー層だった。それが、5分かけ放題オプションの発表後、通話もデータもたくさん、なおかつ安く使いたい、そういう新しい層にターゲットを拡大した。大手キャリアとの比較で楽天モバイルを検討していただける人がたくさん増えた。結果、多い時では、新規契約の半数以上が5分かけ放題オプションを同時に申し込むというところまできた」。
「1月の時点で、新規契約に占める通話SIMの割合は62%だった。これも非常に高い数字だが、5月の時点では新規の80%が通話SIMになった。このこと自体、楽天モバイルがユーザーにとっての1台目やメインのスマホになっていることの証ではないかと感じている」。
平井氏はこのように、「5分かけ放題」の発表を機に、通話サービスを中心とした契約が拡大している様子を語る。
大手でも格安でもない「まったく新しい立ち位置を目指す」
平井氏はまた、3月から楽天が実施している楽天スーパーポイントの還元率拡大キャンペーン「SPU(スーパーポイントアップ)7」を紹介し、「ひとつのビジョンにたどり着いた」とする。それは「ちょっといいモバイル、もっと楽しい毎日」というコピーで、これを大きなビジョンとして掲げるという。
「今やスマホは、人間の206本の骨に続く、207本目の骨。スマホそのものが体の一部、生活の一部になっている。『ちょっといいモバイル、もっと楽しい毎日』を実現することを、社員一同、強く強くコミットメント(約束)していく」
「キャリアのような過剰サービスはしない。従来の大手キャリアでもない、格安スマホでもない、まったく新しい立ち位置、まったく新しい顧客価値を創造していく。そういう存在になりたい」と平井氏は語り、MVNOの群雄割拠の時代を迎えて、第三極を形成していきたい構えをみせている。
楽天スーパーポイントがたくさん貯まる様子をアピール
続いて登壇した楽天 執行役員 楽天モバイル事業長の大尾嘉宏人氏からは、サービスの拡充が説明された。
特に、楽天を通じた買い物で楽天スーパーポイントがたくさん貯まり、それが楽天モバイルの利用料の支払いに利用できるようになるという点は、大量のピンポン球(ポイント)をケースに貯めていく演出でアピール。ポイントの利用料への充当は比較的早い時期に対応が表明されていただけに、“楽天経済圏”の中心に取り込まれることで、既存のさまざまなメリットを活用できることを時間をかけて訴えた。
大尾嘉氏からは、リアル店舗の拡充についても語られた。すでに年内に100店舗を出店するという方針が示されているが、先日は福岡、北海道にオープンしたことや、発表会当日に沖縄に初出店することや、ゲオモバイルアキバ店、立川フロム中武店、池袋サンシャイン通りなどでオープンし、店舗数は72店舗にまで拡大することを紹介した。
「8割の店には専門スタッフを配置しているが、そこで分かったことは想像以上にシニアの方が多いということ」と同氏は語り、自宅出張サポートや「あんしんリモートサポート」の提供を紹介した。
シニア層については、発表会後の質疑応答でも平井氏が「今後、シニア層を取り込んでいくのは非常に重要。都会だけでなく地方も含めてしっかりとやっていく。より密着した支援が重要」との考えを明らかにしている。
元ソニーの黒住氏が初登壇、arrowsとAQUOSを語る
楽天モバイルで取り扱う新しいスマートフォンとしては、この日、「arrows M03」と「AQUOS mini SH-M03」が発表されている。
端末の紹介を行ったのは、楽天 楽天モバイル事業 チーフプロダクトオフィサーの黒住吉郎氏。同氏はかつてソニーモバイルコミュニケーションズに在籍し、「Xperia Z2」などXperiaシリーズの企画を牽引していた人物で、楽天の発表会に登壇するのはこれが初めて。
黒住氏はすでに楽天モバイルとして取り扱いを発表している「HUAWEI P9」や「ZTE BLADE」に触れ、特に「P9」については「持った瞬間に分かるクオリティ。私のようなカメラの素人がとっても素晴らしいボケが得られる。最近のお気に入りになっている」と紹介するなど、高い品質であることをアピールした。
夏の新商品として紹介した「arrows M03」については、「まず、デザインが素晴らしい。持った瞬間に分かるメタルフレーム。両面をフラットなパネルで挟み込んでいる」とした上で、「富士通の人に言われた。それ(メタルフレームや両面フラット)じゃぁXperiaと一緒ですよね、と。工夫していると言うので、どこがと聞いた。このコーナーは彫刻的なつくりになっている、と。ここは、個性になっていると思う」と、デザイン面でも差別化が図られている様子を語る。同氏はこの端末を「プレミアムミッドレンジスマホ」と紹介した。
「AQUOS mini SH-M03」については、「特徴はコンパクトさで、4.7インチ。もうひとつの特徴は軽さで、120g。バッテリー入っているの? と思うような軽さ。IGZO液晶で消費電力を抑え、電池持ちを実現している」と小型・軽量な特徴を語り、カメラについてもインカメラで広角レンズを採用し便利になっている様子を紹介した。この端末については「プレミアムコンパクトスマホ」と紹介している。
カンパニー制移行で楽天モバイルは「通信&エナジーカンパニー」の事業に
最後に再び登壇した平井氏は、「道のりは平坦ではない。規制改革も必要。MVNO事業は進展してり、そのうち事業者間での淘汰が始まるかもしれない」と警戒感も見せる一方、楽天が7月から社内カンパニー制に移行し、12のカンパニーのうちのひとつが、エネルギー事業をまとめた「通信&エナジーカンパニー」になることを紹介する。
楽天モバイル事業、固定通信サービスの楽天コミュニケーションズ、楽天エナジー事業が一体化するもので、カンパニープレジデントには平井氏が就任する。4月から始めたエナジー事業を一体化することで、「ユーザーの利便性を高めていく」とした。
新たなカンパニーについては、「3つのサービスには関連性もあり、来年からはガス事業もこのカンパニーで始める。知恵を絞って価値提供をしていく。ユーザーひとりひとりから、家族や世帯といった枠組みで捉えてサービス開発を行っていく」と平井氏は、ターゲット層や枠組みも変わっていく様子を語っている。