法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

5Gへの道程と夏の注目製品が見えたMWC 2017

 スペイン・バルセロナにおいて、2月27日から3月2日まで開催されていたモバイル業界最大のイベント「Mobile World Congress 2017」。すでに、本誌では現地から数多くの速報記事が掲載されたが、今年は5Gへの道程と夏商戦へ向けた注目製品が相次いで発表されるなど、充実した内容のイベントだったと言えそうだ。注目されるニュースをピックアップしながら、MWC 2017の気になるポイントを振り返ってみよう。

会場は昨年までと同じFira Barcelona

新製品が発表される? されない?

 世界のモバイル業界において、もっとも注目される展示会と言えば、やはり、GSMAが主催するMobile World Congress(MWC)をおいて、他にはない。世界中の携帯電話事業者や通信機器メーカー、端末メーカー、ソフトウェアベンダー、関連企業などが集まり、最新製品や最新技術を展示する一方、関係各社同士の商談なども広く行なわれ、業界にとってはもっとも重要なイベントのひとつに位置付けられている。主催するGSMAは携帯電話事業者を中心に構成された業界団体であり、3GPPなどと並び、通信技術の標準化などにも取り組んでいるため、各社の展示や基調講演などを見ることで、通信技術の最新動向や今後のトレンドを知ることもできる。

 また、MWCには世界中の携帯電話事業者や関連企業が集まるため、このタイミングで端末などの新製品を発表する機会にもなっている。かつてのケータイ時代は国内市場から見て今ひとつ縁がない印象だったが、現在はスマートフォンやタブレットなどが主流であるため、MWCのタイミングで発表された製品が夏商戦以降に国内市場に投入されるケースが増えてきている。

 なかでもサムスン、ソニーモバイル、LGエレクトロニクス、ファーウェイ、ZTEといった国内でもおなじみのメーカーは、例年、この時期に新製品を発表しており、昨年もサムスンがGalaxy S7 edge、ソニーモバイルが新しい世代となるXperia Xシリーズを発表しており、注目が集まるタイミングとなっている。Lenovoグループ傘下となっているモトローラも、欧州市場に「Motorola」ブランドで製品を展開していることもあり、今年は会期前日にプレスイベントを催して新製品を発表するなど、存在感を増してきている。

 例年、MWCの時期が近付いてくると、各端末メーカーや関連企業からは会期前日などに開催されるプレスカンファレンスや説明会の案内が届き、編集部や筆者は「いよいよ、今年もはじまるな」という印象を持つが、今年に限っていえば、サムスンがGalaxy Note 7のバッテリー発火問題の影響もあり、「次期モデルのGalaxy S8(?)を発表を見送るのでは?」「いや、Note 7の問題は1月の説明会で一件落着なので、MWCでは発表するんじゃないか」といった情報が飛び交い、関係者をやきもきさせた。結果は本誌でもお伝えした通り(※関連記事)、MWC 2017でのGalaxy S8の発表は見送られ、3月29日にイベントを開催することがアナウンスされた。

5Gへの道筋が見えた?

 今年のMWC 2017で最大のトピックと言えば、やはり、次世代の通信技術である「5G」への道筋が見えたことだろう。

5Gを利用したVRの体験コーナーを提供していたNTTドコモ

 携帯電話の通信技術については、第一世代のアナログ、第二世代のデジタルに続き、2000年代はW-CDMAやCDMA 2000などの第三世代(3G)、近年はLTEによる「4G」が中心的に利用されてきており、現在は複数の周波数帯域を束ねて伝送するキャリアアグリゲーションにより、理論値ながらも受信時最大600Mbpsオーバーの高速通信を実現している。この4Gに続く、次なる通信方式として、提供されるのが「5G」「5G NR(New Radio)」ということになる。

 5Gについてはこれまでも標準化の議論が進められてきたが、今回のMWC 2017の会期初日には、日本のNTTドコモやKDDIをはじめ、AT&T、British Telecom、Deutsche Telecom、TIM、Vodafoneといった通信事業者、クアルコムやエリクソン、インテルといった関連企業、ファーウェイやLGエレクトロニクス、ZTEなどのハードウェアベンダーなど、世界の国・地域を代表する22社が5G標準化の早期策定に合意し、2019年にも大規模トライアルや商用トライアルをスタートさせることで合意したことが、各社連名のプレスリリースで発表された。

 これに追随する形で3月10日には、標準化団体の3GPP側からも、5G NRの商用展開を早期に可能にする提案に合意することが発表されており、いよいよ本格的に5G時代へと足を踏み出すことになる。

 5Gの内容については、MWC 2017の本誌レポート記事にある、NTTドコモの吉澤社長中村氏尾上氏KDDIの古賀氏それぞれへのインタビュー、クアルコムエリクソンのブースレポートなどを参照していただけるとわかりやすいが、通信速度においては、基本的にはLTEやWiMAXなどでも採用されてきた「OFDMA」(Orthogonal Frequency Division Multiple Access/直交周波数分割多元接続)を使い、複数のアンテナで伝送する「MIMO」(Multi Input Multi Output)を組み合わせ、これまでLTEではサポートされていなかった高い周波数帯域もキャリアアグリゲーションで利用することにより、光回線並みの受信時最大1Gbpsを実現する。

 国内でのサービスインはオリンピックイヤーである2020年がターゲットとされており、エリアはおそらくトラフィックの多い都市部を中心に展開していくことが想定されるが、端末そのものは3Gや4G LTEとの併用になるため、ユーザーにとっては徐々に移行が進んでいくような形になりそうだ。

 標準化が進められている5Gは、現在、各社の携帯電話を利用している我々ユーザーにとって、即座に何か影響があるようなものではないが、少なくとも次の世代の技術が標準化され、いずれ我々の手の中、あるいはIoTなどで生活の中に溶け込んでくる方向性が見えてきたことは確かであり、今後、ユーザーとしてもそのことを頭の片隅にでも置いて、自分のモバイルライフや通信環境を考えていく必要がありそうだ。

新端末は夏商戦に投入される?

 さて、最新の通信技術の動向は気になるところだが、ユーザーにとって、それ以上に気になるのは新製品の動向だろう。

 前述のように、MWC 2017の会期に合わせ、今回も各端末メーカーが新製品を発表しており、それらの内の何機種かは国内市場への投入が期待される。それぞれの製品の細かい仕様などについては、各速報レポートを参照していただきたいが、ここでは各メーカー別に新製品をピックアップして紹介しよう。

LGエレクトロニクス

 まず、会期前日のプレスカンファレンスで先陣を切ったのは、LGエレクトロニクスだ。LGエレクトロニクスは昨年、ユニークなモジュール構造を実現した「LG G5」を発表したが、残念ながら、バッテリーを含めて着脱するという構造が携帯電話事業者にもユーザーにも今ひとつ受け入れられなかったようで、今回は巻き返しを図るべく、同社の強みであるディスプレイに特徴を持たせた「LG G6」を発表した

LGエレクトロニクスは18:9のフルビジョンディスプレイを搭載したLG G6を発表

 現在、多くのスマートフォンは画面の縦横比が16:9のディスプレイを採用しているが、LG G6は映画の16:9や絵画などの縦横比をヒントに、18:9という新しい縦横比のディスプレイを採用している。解像度としては2560×1440ドットで、対角サイズは5.7インチと大きいが、ボディ幅は71.9mmに抑えられており、スリムなボディとも相まって、非常に持ちやすい印象だ。

 18:9のディスプレイはWebページやコンテンツの閲覧をはじめ、映像やゲームなども迫力ある画面で楽しむことができるが、Android 7.0 Nougatの画面分割表示にも最適化されており、分割表示中に端末の向きを変えると、縦画面と横画面が自動的に切り替わるしくみになっている。18:9のゲームコンテンツもGoogle Playを通じて配信される予定となっている。

 LGエレクトロニクスの端末と言えば、au向けにisai BEATやNTTドコモ向けにV20 Proを供給しているが、今回のLG G6が日本のキャリアで採用されるかどうかは、今のところは未定となっている。ただ、この18:9という新しい縦横比のディスプレイはこれまでの大画面ディスプレイ搭載端末と一線を画す扱いやすさであり、個性的なラインアップが求められる傾向にある国内の各携帯電話事業者から登場する可能性は十分にあると言えそうだ。

ファーウェイ

 続いて、昨年は国内の各携帯電話事業者向けに加え、SIMフリー市場で大きく存在感を増したファーウェイも会期前日にイベントを開催し、フラッグシップモデル「P10」「P10 Plus」「HUAWEI WATCH 2」を発表した

豊富なカラーバリエーションを揃えたHuawei P10/P10 Plus

 ファーウェイのPシリーズと言えば、国内ではライカと協業したカメラを搭載するP9、リーズナブルな価格を実現したP9 liteがたいへん好調な売れ行きを記録したが、今回のP10/P10 PlusはP9の後継モデルに位置付けられる。Pシリーズは昨年まで、4月頃に独自のイベントを開催して最新モデルを発表してきたが、今回はサムスンがGalaxy Sシリーズの新モデル発表を見送ったことを狙ったのか、1カ月ほど前倒しして後継モデルを発表した格好だ。

 今回のP10/P10 Plusは、P9やMate 9などでも高い評価を得た独ライカとの協業によるデュアルカメラを継承しており、上位モデルのP10 PlusにはP9に搭載されていたライカのレンズ「SUMMARIT」(ズマリット)よりも上位に位置付けられるF1.8「SUMMILUX」(ズミルックス)レンズが採用されている。ライカとの協業はメインカメラに加え、インカメラにも拡大したが、その代わりにファーウェイ端末でおなじみのビューティーモードがなくなり、背景のぼかしなどができるポートレートモードに変更されている。

P10 Plusは基本的にP10のデザインを踏襲している。デュアルカメラのレンズにはライカ製「SUMMILUX」を採用

 また、ハードウェアでは従来モデルでは背面に備えられていた指紋認証センサーがホームボタンに内蔵され、前面ガラスと一体化されたデザインに仕上げられている。形状は若干異なるが、iPhone 7/7 Plusのジェットブラックなどでも採用されている、周囲のリングや枠のない形状となっている。同じデザインの指紋認証センサー内蔵の多機能なホームボタンは後述するモトローラのMoto G5/G5 Plusでも採用されており、今年の新しいトレンドになるかもしれない。

 国内市場での販売については、ファーウェイ・ジャパンのデバイス・プレジデントの呉波氏のインタビューで「可能性はあると思いますよ」という表現に留められていたが、これまでの流れから考えても、主力のP10は国内に投入される可能性が高いと見て間違いないだろう。もしかすると、昨年のP9 lite同様、普及モデルの「P10 lite」も企画されることになるかもしれない。

モトローラ

 Lenovoグループ傘下のモトローラは、MWC 2017の会期に合わせ、Moto Gシリーズの第5世代となる「Moto G5」「Moto G5 Plus」を発表した

国内では3月31日から販売が開始されるMoto G5/G5 Plus(写真はMoto G5)

 モトローラのスマートフォンと言えば、国内では昨年、いち早くDSDS(デュアルSIM・デュアルスタンバイ)を実現したMoto G4 Plusが好調な売れ行きを記録し、ハードウェアを拡張できるMotoModsという新しいコンセプトを実現したMoto Zを発売するなど、着実に存在感を増しつつある。

 今回発表されたMoto G5/G5 Plusは、Moto G4 Plusの後継に位置付けられるミッドレンジのモデル。3月16日には、国内向けに3月31日から販売開始することが発表されている。Moto G5はSnapdragon 430を搭載したミッドレンジのスマートフォンながら、欧州向けでは199ユーロ(国内向けは2万2800円、税別)というリーズナブルな価格を実現している。

 Moto G5 PlusはMoto G5の5.0インチよりもひと回り大きい5.2インチフルHD液晶ディスプレイを搭載し、チップセットにSnapdragon 625を採用する。注目すべきはメインの12Mピクセルのカメラで、Galaxy S7 edgeなどでも好評を得たデュアルピクセルセンサーを採用している点だ。F1.7と明るいレンズとの組み合わせにより、暗いところでもすばやいオートフォーカスを可能にしているという。手に持ったとき、ひねってカメラを起動、2回振ってライト点灯という「Motoアクション」も継承されており、実用性と楽しみを兼ね備えたモデルとなっている。国内での販売と反響が楽しみなモデルだ。

サムスン

 昨年のMWC 2016開催時のイベントでは、数千人がGear VRを同時に体験するという、過去例に見ない取り組みを成功させたサムスンだが、前述のように、昨年グローバル向けに発表・発売したGalaxy Note 7のバッテリー発火問題もあり、今回のMWC 2017に合わせたイベントでは“Galaxy S8”と噂されている次期モデルの発表を見送り、タブレットの「Galaxy Tab S3」、Windows 10搭載の「Galaxy Book」を発表した

Galaxy Noteシリーズの流れを受け継いだSペンに対応するGalaxy Tab S3
Windows 10搭載の2in1ノート「Galaxy Book」

 いずれのモデルも、Galaxy Noteシリーズに採用され好評を得てきたSペンに対応しており、Galaxy Tab S3では同じAndroidプラットフォームを採用しているため、Galaxy Noteシリーズで採用されていたユーザーインターフェイスも継承されている。

 Galaxy Bookは12インチと10.6インチのモデルがラインアップされており、マイクロソフトのSurfaceシリーズなどと同じように、2in1スタイルのモデルとして仕上げられている。昨年、ファーウェイがMWC 2016開催時、大方の予想に反して、Windows 10搭載のMateBookを発表し、来場者を驚かせたが、サムスンのGalaxy Bookも同じように、スマートフォンのブランド力をパソコンの世界にも持ち込もうという勢いを感じさせる。LTE対応モデルもラインアップされており、国内市場への投入も期待したいところだが、これまでサムスンは国内市場で自社ブランドのパソコンを販売していないため、やや実現は難しそうだ。この他にも、GearVRと連動するコントローラーも発表されている。

 今回のサムスンのプレスイベントで非常に気になったのが、全体的な仕切りや演出の悪さだ。昨年のGear VRを使った大々的なイベントから想像もできないほどの内容で、本紙速報でもお伝えしたように、本来、プレスイベントに入れるはずもない環境保護団体の活動家が乱入するなどの不手際も見受けられた。発表会場も非常に手狭なうえ、タッチ&トライ会場は中に入ることも難しいほどの混雑と狭さで、これまでのサムスンのイベントからは考えられないほど仕切りの悪いイベントだった。

 このイベントで、3月29日には米ニューヨークで同社の発表イベント「Unpacked」を開催することが明らかにされ、ここではGalaxy S8が発表されると予想されるが、製品の内容とは別に、こうしたイベント運営でマイナスイメージを重ねてしまうと、イメージの回復を図る段階にある同社の展開が、一段と厳しくなってしまうかもしれない。

ソニーモバイル

 昨年、Xperiaシリーズの新しい章として、Xperia Zシリーズに代わり「Xperia X」シリーズを発表したソニーモバイルだが、今回はMWC 2017の会期初日の早朝に、同社ブースでプレスイベントを行ない、世界初の「4K HDR」ディスプレイを搭載したXperia XZ Premium、新設計のMotionEyeカメラを搭載したXperia XZs、新興国などの普及価格帯を狙ったXperia XA1/XA1 Ultraを発表した

4K HDRディスプレイを搭載したXperia XZ Premiumの背面は、Xperia Z5 Premium同様、クロームの光沢仕上げ

 Xperia XZ Premiumは、2015年発売のXperia Z5 Premium以来の4K相当の液晶パネルを搭載したモデルだが、今回は家庭用テレビでも最新の製品に採用されはじめているHDRにも対応し、これまでよりも明暗差のしっかりした映像コンテンツが楽しむことができる。4K HDR対応コンテンツについては「Amazon Prime」の動画配信サービスから供給されることが発表されている。Xperia XZ Premiumにはクアルコムの最新チップセットであるSnapdragon 835が採用されており、ネットワーク側が対応していれば、受信時最大1GbpsのCAT.16にも対応する。ちなみに、Xperia XZsはXperia XZベースのため、CAT.11までの対応となる。

 Xperia XZ PremiumとXperia XZsに共通で搭載されているのが、新たに開発された「MotionEye」と呼ばれるカメラだ。MotionEyeはソニーが新たに開発したメモリー積層型イメージセンサーを利用したもので、センサーに内蔵されたメモリーによって、信号の転送速度を向上することにより、最大960fpsのスーパースローモーション撮影機能を実現している。撮影した映像は最大960fpsで再生される部分も含め、MP4形式で保存されるため、家族や友だちの間で共有したり、SNSなどに投稿して、より多くの人と楽しむこともできる。この他にもPredictiveCapture(先読み撮影)により、シャッターチャンスを逃さない撮影を可能にするなど、Xperiaシリーズのカメラらしい進化を遂げている。

 Xperia XA1/XA1 Ultraは昨年発売されたXperia XA/XA Ultraの後継モデルで、チップセットの強化に加え、昨年のXperia XZと同じカメラを搭載するなど、全体的にスペックが向上している。

 また、スマートフォン以外にもXperiaのブランドを拡大するスマートプロダクトの製品として、これまで参考出品という形で展示されてきたプロジェクター搭載の据置型デバイス「Xperia Touch」がいよいよ正式に製品化された。プロジェクターで投影したところ(机や壁面など)をタッチすることで、タブレットなどと同じような感覚で操作できる製品で、家族間のコミュニケーションデバイスのような形での利用も想定しているという。

プロジェクターを内蔵したXperia Touchがいよいよ製品化

 さらに、参考出品という形で、昨年に国内でも発売された「Xperia Ear」をベースに、両耳の下側から装着して耳の穴を塞がず、周囲の音といっしょに音楽を楽しんだり、音声操作ができる「Xperia Ear Open-style」も公開された。Xperia Earシリーズは、単なるイヤホンやヘッドセットではなく、スマートフォンと連携するXperia Agentと呼ばれるエージェント機能を備えており、デバイスに話しかけながら、メッセージを送信したり、音楽再生するなどの操作をできるようにしている。

 ソニーモバイルが発表した製品群の内、Xperia XZ PremiumやXperia XZsはおそらく国内市場にも投入されることになるだろうが、これまでも何度か指摘されてきたように、やはり製品サイクルの短さが気になるところだろう。

 なかでも昨年のXperia XZを購入したユーザーから見れば、わずか4カ月ほどでカメラが大きく進化した新製品が発表され、順当に行けば、発売から半年後(今年5月頃)には自分の買ったモデルが型遅れになってしまうからだ。

 かねてから、こうした製品サイクルの短さには疑問を感じ、商品企画担当者インタビューなどでも何度となく指摘してきたが、今回のような状況を見ると、短いサイクルで次々と新モデルを投入することは、Xperiaシリーズの性(さが)としか言いようがない。

 ユーザーとしては、意地でも新モデルについていくか(笑)、購入してすぐに型遅れになっても、進化を必要以上に気にせず、自分の持つモデルを使い続けるしかないのかもしれない。MotionEyeで楽しめる撮影など、製品としての完成度は確実に高いが、ユーザーとしてそういった機能を評価する以前に、短期間でも進化をし続けるXperiaシリーズの宿命のようなものをどう捉えるのか、判断する必要があるのかもしれない。

楽しみな夏商戦

 冒頭でも触れたように、MWCはモバイル業界最大のイベントであり、その年や今後数年のトレンドを占う意味でも重要な意味を持つ。数年内というスパンの動向については、本稿でも触れたように、業界全体が5Gへ向けて、本格的に動き出したということであり、その年(2017年)という切り口で言えば、この春から夏へかけて、今回発表された新製品のいくつかが日本市場にも投入され、スマートフォンを中心としたモバイル市場がよりにぎやかになりそうな印象ということだ。

 ただ、今回の各社の発表を見て、各社ともある程度リーズナブルな価格で、必要十分なスペックを持ち、個性や特徴のあるモデルをラインアップしてきたという印象を持った。

 国内では各携帯電話事業者による月々サポートなどの月額割引サービスが存在するため、端末本来の価格が今ひとつ見えにくくなっているが、今回の発表を見ると、200ユーロ前後(2万円台半ば)から購入できるモデルが存在し、かなりハイスペックのフラッグシップモデルでも700ユーロ(8万円台半ば)で購入できるレベルでまとめられている。

 国内外では1台あたり10万円を軽く超えるモデルも販売されているが、市場全体としては、もう少し買いやすい価格帯のモデルが増えてくるのではないかという印象だ。国内では昨年まとめられた携帯電話料金のタスクフォースをきっかけに、市場環境が大きく変動する時期を迎えているが、その動きとグローバル向けに発表された製品の国内投入がどのような形でリンクしてくるのかなど、今後の動向が非常に楽しみになってきた。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめる iPhone 7/7 Plus超入門」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門」、「できるポケット HUAWEI P9/P9 lite基本&活用ワザ完全ガイド」、「できるWindows 10b」、「できるゼロからはじめる Windows タブレット超入門 ウィンドウズ 10 対応」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。