ケータイ用語の基礎知識

第601回:フルHDディスプレイ とは

 「フルHDディスプレイ」とは、1920×1080ドットという解像度のディスプレイのことを指す言葉として利用されています。これまでは家庭用のテレビ、パソコンのディスプレイで使われる言葉でしたが、最近になってスマートフォンで、フルHDディスプレイを搭載する機種が登場してきました。

 たとえば、auでは、2012年12月に発売された「HTC J butterfly HTL21」が、フルHD対応のディスプレイを搭載しています。ドコモの2013年春モデルのスマートフォンでは、「ELUGA X P-02E」「Xperia Z SO-02E」「ARROWS X F-02E」「Optimus G pro L-04E」がフルHD対応ディスプレイを搭載しています。

auのフルHDディスプレイ搭載機種「HTC J butterfly HTL21」
ドコモの春モデル「ELUGA X P-02E」

 そして「フルHD」とは、以前の本連載でもご紹介しましたが、画面のサイズ、解像度を指す言葉の1つです。現在のハイビジョン放送やブルーレイなどの映像の最大サイズである1920×1080ドット、207万3600画素を、どこも欠けることなく表示できるディスプレイは、「フルHD対応」と呼ばれます。かつて本稿では、フルHD動画を再生できる機種の登場で解説しましたが、ついにフルHDを表示できるスマートフォンが登場したというわけです。

「フルHD」と「HD」の違いとは

 2012年発表のスマートフォンには“HD対応”ディスプレイのものが多くありました。一方、今年は、フルHD対応機種が増えてくると予想されています。ところで、「フルHD」と「HD」の違いはなんでしょう。

 まず、HDですが、これは「高解像度」を意味する英語「High Definition」の略です。JEITA(電子情報技術産業協会)では、長方形のディスプレイのうち、短い方の辺の画素数が650以上あるものを「HD」と規定しています。つまり、縦の長さが650ドット以上のディスプレイは「HDディスプレイ」ということになります。

 そのHDは、もともとは、テレビ放送用語で、デジタルテレビ放送の映像信号には、かつての地上アナログテレビと同じ走査線、525本の方式(SDTV)と、720本(702p)、1080本(1080p)の方式があります。このうち、最も解像度の高い1080本の方式をフルHDあるいは、フルハイビジョンと呼んでいます。つまり、フルHDの「フル」は、「フルスペック」の「フル」を意味しているわけです。ちなみに、HDTV(ハイビジョン)放送では、地上デジタル放送は1440×1080ドットで、BSデジタル放送では1920×1080ドットで放送されています。

 スマートフォンの場合、今のところ、BSハイビジョン放送を受信したり、ブルーレイディスクを再生するわけではありませんので、画面がフルHDでもあまりこれらとは関係がないと言えますので、画素数が多ければそれだけ美しい画面で利用することができる、という点がメリットに挙げられます。一方で、その高精細な表示を活かす取り組みもスタートしています。たとえばNTTドコモは、ブルーレイレコーダーとの連携機能を発表しています。またNTTぷららの映像配信サービス「ひかりTV」と連携します。これらの連携によって、フルHDディスプレイ搭載のスマートフォンでは、録画した高精細な番組を外出先でも視聴できるようになります。

 またドコモは、新たな動画圧縮方式「HEVC」で圧縮された動画をモバイル機器やパソコンで復号するソフトウェアを3月中にも提供する予定としています。この技術が広まれば、スマートフォンでのフルHD動画コンテンツが多く登場すると期待でき、そう遠くない将来に、スマートフォンのフルHDディスプレイの実力を実感できるようになりそうです。

 ちなみに、タブレットでは一部機種で1920×1200ドットと、フルHDよりもさらに解像度が高いものが存在しています。こうした1920×1200ドットのディスプレイは「WUXGA」ディスプレイとも呼ばれます。こちらは、パソコンのディスプレイ解像度を由来にする呼び方で、ワイド(横長)なUXGAを意味しています。UXGAはUltraXGAを意味していて1600×1200ドットのことを言います。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)