ケータイ用語の基礎知識

第600回:Firefox OS とは

 「Firefox OS」は、Mozillaが開発しているモバイル端末向けOSです。2011年から開発がスタートし、当初は「Boot to Gecko」という名前でした。

Firefox OSのホーム画面(Firefox OSシミュレータによるもの)。通話、ブラウザなどのアイコンが並んでいる。ここにウィジェットを置くことなども可能だ

 「Firefox」といえば、Mozillaが開発したPC用のブラウザの名前として知られていますが、「Firefox OS」も、Mozillaが開発を進めているブラウザの技術をベースとしたモバイル向けOSとなっています。

 オープンソースのOSとして開発されており、どのメーカーでも無償で利用できるほか、自由にカスタマイズして販売することも可能です。

 日本メーカー、あるいは日本国内では、まだ登場されていませんが、海外では2013年1月、スマートフォンの開発者向けプレビュー機として、「Keon」「Peak」の2モデルが、スペインの通信事業者であるTelefonica、同じくスペインに拠点を置くスマートフォン開発のベンチャー企業、Geeksphoneの協力により開発され、2月から販売が開始されることになっています。

アプリケーションはHTML5で作成

 「Firefox OS」向けのアプリケーションは、ネイティブアプリの作成も可能なものの、基本的にはJavaScriptとCSSを含む「HTML5」で作成されます。

 「HTML5」とは、従来からWebコンテンツ作成に使われているマークアップ言語「HTML」の最新版で、アプリケーションの作成なども可能な、非常に強力な仕様になっています。たとえば、オーディオ、ビデオ、アニメーション、オフラインでの動作、ストレージ、双方向通信といった機能まで実装されています。現在のパソコン用の新しいWebブラウザの多くが既にHTML5に対応しており、また、その標準に基づいて作られています。そのため、HTML5アプリは、どの環境でも動くというメリットがあります。

 そうしたHTML5によるアプリに対し、「FireFox OS」ではスピーディな処理が可能とされています。

 「Firefox OS」は、その内部でベースとなるLinuxがあり、その上でWebブラウザ「Firefox」のエンジンである「Geckoエンジン」が動いている、といった構造になっています。たとえば、Androidでは、仮想マシンと呼ばれる「Dalvik VM」という仕組みが存在し、その上でブラウザが動いて、さらにそのブラウザ上でHTML5アプリが動く、という形になっています。こうした複雑な多層構造となっているのに比べ、「Firefox OS」では、OS→エンジン→HTML5アプリ、というシンプルな形ですので、HTML5によるアプリもスムーズに動作できる、というわけです。

 ちなみに、アプリケーションは、配信プラットフォーム「Firefox Marketplace」(当初はMozilla Marketplaceという仮称)で行われます。その操作方法は、iPhoneなどのiOS向け配信プラットフォームである「AppStore」や、Android向けの「Google Play」と同様で、好きなアプリケーションのジャンルからアプリケーションを選んでインストールする、という流れです。Twitterなど、大手サービスにアクセスできるアプリなどが、既に配信されています。

 こうした配信プラットフォームが用意される一方で、アプリ自体が「HTML5」ということで、Webコンテンツとして提供できる仕組みでもあります。つまり「Mozilla Marketplace」を利用せずとも、アクセスするだけでアプリケーションを使えるようにする、といったこともできます。

 ちなみに、HTML5で開発されたWebブラウザ向けアプリは、既に少なくない数が存在します。こうしたコンテンツは、多少の修正を加えることで、「Firefox OS」上で動かすことができます。このように、潜在的に多くのアプリが既に存在しているのというの点は、「Firefox OS」の魅力であるといえるでしょう。なお、Firefox OSのユーザーインターフェイスは「Gaia」という名称になります。

 このほか、セキュリティ関連では、「Firefox OS」には、アプリにどんな動作を許可するか、インストール時と実行時にそうした権限を設定する“ハイブリッド方式”となっています。たとえばAndroidでは、アプリの権限の設定は、インストール時にのみ画面に表示され、その段階で「許可するかしないか」、ユーザーが判断する形になっています。ただ、その設定内容はわかりやすいどうかといった点で課題があります。Firefox OSでは、インストール後でも特定機能を止めることができますので、悪意のあるアプリはもちろん、便利に思えるアプリでもアドレス帳へアクセス権限は与えたくない、などといった場合に対応でき、万が一の悪用を防げるようになっています。こうした点では、他のプラットフォームよりセキュリティ面では向上していると言えるでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)