クアルコム、新興国をサポートしてスマホ市場拡大を狙う

　クアルコムは、11月28日～29日にかけて報道関係者向けの説明会「Editors' Week」をサンディエゴの本社で開催し、同社のスマートフォン向けの取り組みを説明した。

■元インテルのChandrasekher氏が登壇

Anand Chandrasekher氏

　28日の説明会冒頭に登場したAnand Chandrasekher氏（Senior Vice President & Chief Marketing Officer）は、かつてインテルでSenior Vice Presidentを務めていた人物。インテル在籍時には、モバイルへの対応の重要性を訴え、CentrinoやAtomといったテクノロジーを世に送り出してきた。

　インテルでの経験やスマートフォンを中心とした昨今のIT業界の動向を踏まえ、同氏は、モバイル通信を軸にした「Computing Redefined」、従来の1000倍のトラフィックとも想定される「Unprecedented Data Demand」をさばく必要性、AR（Augmented Reality）などに代表される「Digital 6th Sense」の3つの重要なトレンドがあると語る。なお、後述の各担当者によるプレゼンテーションは、それらを補強する形で行われている。

　同氏はまた、携帯電話にとって発熱面での許容範囲は1W（1000mW）程度とした上で、他社のチップと比較し、同じ消費電力なら1.5倍以上のパフォーマンス、同じ処理を行うなら半分程度の消費電力で済む、とSnapdragonシリーズの優位性をアピールした。

■「QRD」で新興国をサポート

　続いて登壇したSean O'Leary氏（Senior Director of Product Management）は、主に新興国でのスマートフォンの普及を目指して開始したサポート事業「Qualcomm Reference Design」（QRD）について解説した。

　QRDは、端末の設計図から使用する部品といったハードウェア、OS、アプリケーションといったソフトウェア、さらには製造現場で必要となるツール類、テスト環境までを揃えたサポートプログラム。同氏は、この枠組みを導入すれば、低価格のスマートフォンを他社と差別化できる要素を残した形で短期間に開発・製造できるとする。

　テスト環境については、Android端末からGoogle Playへの接続を可能にするために必要となる互換性テスト（CTS）も含まれる。さすがに日本の技術基準適合証明（技適マーク）や通信事業者ごとに必要とされる動作検証などは対象外だが、新興国に見られるオープンマーケット向けの製品を製造する上では、必要十分な要素を満たしている。

　同氏は、新興国市場において、2Gから3G、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行が予想以上のペースで進行しており、こうしたニーズに応える上でQRDが重要な役割を担うと語る。

　なお、多くのスマートフォンに搭載されているSnapdragonやGobiシリーズのチップについては、特に目新しい話は聞かれなかったが、Michelle Leyden Li氏（Senior Director of Marketing）は、次世代の製品が近日中に発表される予定としている。


Sean O'Leary氏	Michelle Leyden Li氏

■もう一つの選択肢「Firefox OS」

　「事業においてOSが占める重要性が日に日に高まっている」と語るのは、Jason Bremner氏（Senior Vice President of Product Management）。

　同社のSnapdragonシリーズは、Androidをはじめ、Windows Phone、BlackBerry（QNX）、さらにFirefox OSをサポートしていくことで、各OSベンダーや端末メーカーと強固なパートナーシップを結んでいることを強調。このうち、Firefox OSについては、来年のMobile World Congressで詳細を発表し、2013年中頃には製品が市場で出回る見通しであることを明らかにした。

　また、Lauren Thorpe氏（Senior Director of Business Development）は、Snapdragonの可能性を示しながら、スマートフォン市場のさらなる拡大を図るべく、同社がアプリベンダー向けに提供している各種SDKについて説明した。

　同氏は、AR技術を簡単に実装できる「Vuforia」、P2Pにより通信ゲームやマルチスクリーン、ソーシャルコミュニケーションを実現できる「AllJoyn」、リアルタイム画像認識技術の「FastCV」を紹介。アプリベンダーには、これらのSDKをぜひ活用してほしいと述べた。