iPhone駆け込み寺
iPhone 13のカメラはどこがすごくなったの? スペック表ではわかりにくい進化ポイントを解説
2021年9月18日 00:00
iPhone 13シリーズで進化した最大のポイントはカメラだ。プロセッサや電池、Proモデルのディスプレイなんかも進化ポイントではあるが、言ってはなんだが割と地味な進化で、やはり目玉はカメラだと言える。
スペック表を見ると、カメラ性能は前モデルのiPhone 12シリーズとあまり変わっていない。画素数は12メガピクセルのままだ。もっとも、画素数は2015年モデルのiPhone 6sから12メガピクセルのままなので、スマホのレンズとセンサーサイズでは、現状、12メガピクセルが最適解、とアップルは考えているのかもしれない。正直、筆者もそんな気はする。
画素数以外を見ても、一部のレンズのF値が少し変わっただけで、もしかしたら同じカメラモジュールなのでは、と思ってしまいそうになるが、実はスペック表に現れにくい部分で、大きな進化を遂げている。今回はこのiPhone 13のカメラの進化について、詳しく解説していこう。
スタンダードモデルは利用頻度の高い広角カメラがセンサー大型化
iPhone 13/13 miniの広角カメラ(標準カメラ)は、26mm相当でf/1.6などスペック値はiPhone 12/12 mini/12 Proと変わっていないが、内部的にはピクセルサイズ1.7μmの大型センサーを採用している。この1.7μmのセンサーは、昨年のiPhone 12 Pro Maxだけが採用していた。さらにiPhone 12 Pro Maxだけだったセンサーシフト式の光学手ぶれ補正も採用している。
昨年の最高モデルのみに採用されていた特別仕様がminiも含むスタンダード両モデルに搭載されるのは、これは大きな進化ポイントだ。この広角カメラは利用頻度の高いカメラでもあるので、この強化は非常に影響が大きい。
iPhone 13/13 miniの超広角カメラは、スペック値としては13mm相当でf/2.4と変わっていないが、こちらも新設計され、暗所での性能が向上しているという。超広角カメラも地味に利用頻度が高いので、ここの強化も有難いが、しかし広角カメラのセンサー大型化の方が大きな進化ポイントなので、なるべく超広角には頼らず、広角カメラ側を使いたいところだ。
Proモデルのカメラもセンサー大型化。望遠カメラ倍率も3倍に
iPhone 13 Pro/13 Pro Maxのカメラは、スタンダードモデルよりもさらに進化している。
まず超広角カメラはf/1.8と、従来モデルやiPhone 13/13 miniのf/2.4より大幅に明るくなり、新たに最短2cmのマクロ撮影にも対応した。これまで撮れなかったような写真にまで表現が広げられそうだ。
標準の広角カメラも強化され、レンズはf/1.5、センサーのピクセルサイズは1.9μmと大型化している。iPhone 12シリーズでは大型センサーはiPhone 12 Pro Maxだけだったが、iPhone 13シリーズではiPhone 13 Pro/13 Pro Maxの両Proモデルがともに同スペックに強化されている。カメラのために大型モデルを選ぶ必要はなく、純粋に大きさだけでモデルを選べるようになったのは、これも地味にありがたいポイントだ。
Proモデル独自の仕様でもある望遠カメラも刷新され、ズーム倍率は標準の3倍(77mm相当)となった。F値はf/2.8だ。前モデルと比較すると、iPhone 12 Proが2倍(f/2.0)、iPhone 12 Pro Maxが2.5倍(f/2.2)だったが、今回はPro/Pro Maxの両モデルが同じスペックのカメラを搭載する。望遠倍率が増えた代わりにF値が大きく(暗く)なっているが、これは仕方ないところだろう。
ただ、スマホサイズの望遠カメラは、あまり画質が良くないものが多い。iPhone 13 Pro/13 Pro Maxの望遠カメラの画質がどうなるか、実写レビューの機会が楽しみでもある。
RAW撮影やLiDARセンサーはProモデル限定
iPhone 12シリーズ同様、iPhone 13シリーズでもApple ProRAWフォーマットのRAW撮影にはProモデルのみが対応する。ここはスタンダードモデルでも、とも思うが、しかし実際のところ筆者は1年間、iPhone 12 miniとiPhone 12 Pro Maxを併用したが、ProRAWはほとんど使わなかった。標準のHEIFフォーマットでもWeb掲載には十分だし、ProRAWは1枚の容量が大きすぎて扱いにくいのだ。よほどのこだわりと編集環境がないと、ProRAW非対応でも困らないだろう。
また、LiDARもProモデルのみが搭載し、そのLiDARを活用するナイトモードでのポートレート撮影はProモデルのみの機能となる。LiDARはカメラ以外にもARアプリの高精度化にも使われるので、そういったアプリを多用する人にもおすすめだ。しかしiOS/iPadOSのARフレームワーク(ARKit)は非常に優秀で、LiDAR非搭載iPhoneでもARアプリは十分に高精度でもある。
iPhone 13 Pro/13 Pro Maxは静止画のProRAWに加え、動画ではApple ProResの撮影に対応する(後日アップデートにて対応)。ProResはプロ用の編集アプリで編集することを前提とした映像フォーマットだ。ただし128GBモデルは4K 30fpsのProRes撮影できず、最大で1080p 30fpsとなる。
ProResは非常に高いビットレートとなるので、単純にストレージ容量が128GBだと足りないということかもしれないし、256GB以上のモデルだとストレージの書き込み速度が速いとか、CPUも少し良いものになっているとか、そういった可能性もある。この辺りの本当の理由はわからないが、4KでProRes撮影したい人は256GB以上のモデルを選ぼう。4KのProResを扱えるような映像のプロは、1TBモデルしか眼中にないと思うが……。
スタンダード/Pro共通の進化ポイントも見逃せない
このほかにもiPhone 13シリーズ共通の機能として、「フォトグラフスタイル」という新機能が搭載される。これは写真全体の色調などの要素をユーザーが撮影時に設定できるというもの。スタイルを選ぶだけでなく、数値の調整もできる。
これはカメラ撮影時の自動パイプライン処理に組み込まれているので、HEIFで保存した写真を後で編集するよりも高精度・高画質に処理されるはずだ。ほとんどのケースではこれまで通り、フルオートで撮っても問題ないと思うが、もともとレンズ交換デジカメでマニュアル撮影をしているような、写真にこだわるユーザーにとっては嬉しい機能だろう。
新機能の「シネマティックモード」
動画撮影では新たに「シネマティックモード」が搭載される。これもProモデルだけでなくスタンダードモデルでも利用できる。これは静止画における「ポートレートモード」の動画版、といったもので、後から被写界深度を調整したり、撮影時のフォーカスを被写体に応じて自動切り替えしたりといったことができる。どんな機能かはアップルが公開している動画を見ればわかる、というか見ないとわかりにくい機能なので、ぜひ試聴して欲しい。これがiPhone 13 miniでも使えると思うと、なかなかにすごい。
ただこのシネマティックモード、日常生活の記録というよりも、名称通り「シネマ(映画)」のための機能、かも知れない。脚本を書き、絵コンテを起こし、役者と舞台もセッティングし、ジンバルや照明、レフ板なども用意して初めて生きる、そんな機能だ。もちろんパーティなどのイベント撮影でも使えるとは思うが、趣味でミニドラマを撮影してる、みたいな人じゃないと活用しきれない気もする。しかしそうした機能がスタンダードモデルでも使えてしまうのは、ちょっと面白い。
TrueDepthカメラが小型化
ディスプレイ上部に搭載される「TrueDepthカメラ」も地味に進化している。まずノッチ部が20%ほど小型化した。このノッチ部、全モデルで同サイズだったので、ディスプレイサイズの小さなiPhone 13 miniではとくに影響の大きな進化ポイントだ。
しかしこのTrueDepthカメラ、レンズがパワーアップしたとは特にアナウンスされていない(スマートHDR 4やフォトグラフスタイルなど、ソフト処理は他のカメラ同様に強化されている)。同時発表のiPad mini(第6世代)や最新世代のiPad Proは、122度の超広角に対応し、テレビ電話アプリで被写体人物に自動クローズアップする「センターフレーム(Center Stage)」という新機能を搭載しているが、iPhoneにはそれらの機能は乗らないようだ。
テレビ会議するとき、iPadは卓上に置くのに対し、iPhoneは手に持つことが多いので、そういった使い方の差を考慮してのことかもしれないが、筆者としてはそれでもiPhoneで「センターステージ」を使ってみたいところだ。