レビュー

音声通話、MNP、LTE、テザリング対応の端末&SIM「楽天モバイル」

音声通話、MNP、LTE、テザリング対応の端末&SIM「楽天モバイル」

SIMフリー入門にも最適な月額1250円~の格安SIMサービスのポイント

 10月29日にフュージョン・コミュニケーションズが発表した「楽天モバイル」は、ここのところ急速に存在感を増してきている、いわゆる格安SIMサービスだ。音声通話やMNPに対応していながら月額1250円からという料金は、多くの人の目に魅力的に映るのではないだろうか。また、ASUSの最新SIMフリーAndroid端末「ZenFone 5」が2万6400円という割安価格でセット販売される点も見逃せない。

 SIMとスマホの両方を格安で手に入れられるということで、SIMフリー端末の導入を考えている人や、他のSIMサービスからの乗り換えを考えている人にとって魅力の多そうな楽天モバイル。具体的にどんなサービスなのか、改めて詳しく見ていきたい。

格安SIMサービス「楽天モバイル」をチェック

低料金でも通話・SMS機能を搭載

ASUSの最新スマートフォンZenFone 5

 SIMロックが解除された(もしくはSIMロックされていない)SIMフリー端末と組み合わせることで、利用が可能になるSIMサービスだが、今やMVNO(仮想移動体通信事業者)と呼ばれる多数の企業が独自のSIMフリー端末向けサービスを展開しており、各社割安な料金やサービスの拡充を相次いで打ち出すなどして、競争が激化している。

 もともとSIMフリー(端末)は、海外滞在時に現地のモバイルネットワークを通常料金で(高額なローミングを利用せずに)使いたいという、どちらかというとビジネス寄りのニーズから活用されていたもの。しかし現在では、使い方によっては割高に感じられる国内主要キャリアの料金プランの代わりに、機能や通信容量などを絞ることで安価に抑えたいといった、主にコスト面のニーズからSIMフリーの動きが活発化している状況だ。

 今回の楽天モバイルについても、やはりコスト面を強く訴求した通信サービスと言える。安価でありながら音声通話やSMSを利用可能で、MNPにも対応すること、通常使用には十分な性能をもつASUSの最新Androidスマートフォンとセットで購入できること、といったところが他社との差別化ポイントとなる。楽天ブランドで提供されるサービスということもあり、楽天のECサイトなどで使える楽天スーパーポイントがもらえる特典を用意しているなど、さらなる割安感も演出している。

あまり通信しない人も1600円の「2.1GB」プランがおすすめ

 楽天モバイルの料金プランは4種類。これらをかいつまんで説明すると、最も低料金なのは月額1250円の「ベーシック」プランで、もちろん音声通話やSMSが利用可能。このプランのみ高速通信は標準サービスとして含まれていないが、一切通信できないのではなく、最大200kbpsの低速通信であれば追加料金なし、通信容量制限なしで利用できる。また、同プランを含め、全プランで100MBの通信容量ごとに300円を支払うオプションメニュー「容量追加パック」が用意されており、必要に応じて高速通信の枠を増やすことも可能だ。

 ベーシックプランは低速通信が主となるため、別途モバイルルーターを使用しており、高速通信はそちらに任せられるという人におすすめだ。スマートフォン単体で利用する場合、メールやLINE、Twitterなどが利用の中心で、高速通信をさほど必要としない用途が多い人、外出中は公衆無線LANを積極的に使う人、あるいは可能な限り安価に抑えつつ長く使っている電話番号を維持したい人などに向いたサービスとも言える。しかしながら、さほどヘビーに通信しない人でもネット接続時にストレスを感じたくないのであれば、「2.1GB」プラン以上を選んだ方が無難かもしれない。

 2.1GBプランは通信容量が月間2.1GBまでなら速度制限なしで利用できるもので、ドコモのLTEネットワークを使った下り最大150Mbps・上り最大50Mbpsの高速な通信が可能。容量超過後は200kbpsに制限される。月額料金は1600円で、ベーシックプランに350円のプラスとなるが、ベーシックプランで高速通信容量オプションを100MB足すだけで1550円になることを考えると、2.1GBプランは圧倒的なお得感があるのではないだろうか。

 その他、高速通信容量が4GBの「4GB」プラン(月額2150円)と、同7GBの「7GB」プラン(月額2960円)もある。単純に月間通信容量が増えているだけでなく、高速通信の制限が適用される直近3日間の合計通信容量についても360MB(2.1GBプラン)、800MB(4GBプラン)、1.2GB(7GBプラン)としっかり差を付けている。日によって通信頻度に幅があるユーザーにとっても安心だ。

 月の途中で契約した場合でも、これらの高速通信容量は全て付与される。他のSIMサービスの中には通信容量が当月の残日数の日割りとなるケースもあるが、楽天モバイルの場合はそういったことはない。月の後半であってもしっかり全ての通信容量を使うことができる。ただし、直近3日間の容量制限には注意しておく必要があるだろう。

 このあたりの使用状況については、セット販売のZenFone 5にプリインストールされ、Google Play Storeからもダウンロード可能な「楽天ブロードバンド」アプリでほぼリアルタイムに確認できるので、大いに活用したいところだ。

「楽天ブロードバンド」アプリ
楽天モバイルの通信量の状況をグラフィカルに把握できる

APN設定が楽になる工夫も

ZenFone 5のSIMカードスロットは背面カバーを外すと中央部に現れる

 いざ楽天モバイルを導入しよう、と思った時、どんな利用パターンがあり、どんな風に使い始めることになるだろうか。基本的にはZenFone 5のセットで購入する形と、SIMのみを購入して既存の端末で利用する形の2パターンになるわけだが、後者のSIMのみ利用するパターンについてはさらに2つに分かれる。

 1つは他社製のSIMフリー端末で利用する形で、もう1つはドコモのスマートフォンを利用する形だ。楽天モバイルが採用しているのはドコモのモバイルネットワークであるため、ドコモ端末であればSIMロック解除しなくてもそのまま流用できるわけだ。

 ただ、ZenFone 5とのセットでも、別の端末を利用するパターンでも、SIMカードを差し込めばすぐにネットワークにつながる、ということにはならない。他のSIMサービスと同様に、最初は「APN設定」が必要だ。初心者にとってはやや難しい設定と思われがちだが、楽天モバイルの場合はちょっとした配慮がなされており、難易度は低い。

 ZenFone 5のセット購入の場合、このAPN設定は簡単だ。端末を起動後、端末設定画面の「その他...」にある「モバイルネットワーク」から「アクセスポイント名」を選ぶと、楽天モバイルのSIMサービスを含め、その他多くのSIMサービスに対応するAPN設定プロファイルがずらっと一覧される。この中から最下部にある「楽天ブロードバンド 通話SIM……」を選択するだけでAPN設定は完了。すぐに通信が可能になる。

最初から大量に登録されているAPN設定プロファイル
もちろん楽天モバイルのプロファイルもある。APN設定はこれを選ぶだけ

 SIMフリー端末やドコモ端末を使う場合、購入時に受け取る書類やWebサイトのヘルプを見ながら手動でAPN設定を行うことになるが、Android端末のユーザーにおすすめなのが、「楽天ブロードバンド」アプリを使う方法だ。初めにWi-Fi設定とGoogleアカウントの設定だけ行ってGoogle Play Storeで提供されている「楽天ブロードバンド」アプリをダウンロードしておけば、APN設定の手間をある程度省くことができる。

「楽天ブロードバンド」アプリのメニューにはAPN設定の項目が用意されている
楽天モバイルのAPN設定値が表示され、コピー&ペーストでAPN設定の手間をある程度省ける

 「楽天ブロードバンド」アプリは、前述の通り楽天モバイルにおける一定期間の通信容量をチェックできるものだが、メニューに「APN設定」という項目が用意されており、これを選ぶとAPN設定に必要な設定値を表示する。1項目ずつクリップボードにコピーして、設定画面でペーストしていくだけでAPN設定を完了できるのだ。手動で設定することに変わりはないが、入力ミスを防いで確実に使い始められる点でメリットはあるだろう。

各種キャンペーンも積極的に活用したい

 通話も可能な楽天モバイルだが、通話料金は30秒当たり20円で、大手キャリアの通話し放題ではないプランの通話料金と変わらない。通話料金もできるだけ安価に抑えたいのであれば、同じく楽天が提供している「楽天でんわ」を組み合わせるのがおすすめだ。国内通話料が30秒当たり10円という通常の約半額となるうえ、新規登録者の先着10万名については3分までの通話が0円になるキャンペーンも実施中となっている(12月26日まで)。

 さらに多くのシチュエーションで安価に電話したいのであれば、音声・動画チャットアプリの「Viber」や、フュージョンが提供する050番号のIP電話アプリ「SMARTalk」を使うのもアリだろう。ZenFone 5のセット購入の場合、「楽天でんわ」の他に、「Viber」と「SMARTalk」のアプリも最初からプリインストールされているので、購入後にすぐさま利用登録しておきたいところ。どれも初期費用、月額基本料金はかからない。Viberについては、国内の固定電話宛の通話が無料になるキャンペーン(2014年11月7日時点)も実施されており、こちらも要チェックだ。

 また、ZenFone 5とセット購入すると、楽天スーパーポイントが1500ポイント(1500円相当)プレゼントされ、さらに楽天でんわに登録したユーザーは1000ポイント付与される。すでに楽天でんわのユーザーであってもOKだ。楽天モバイルの月額料金についても初月無料になるキャンペーンが行われており、お得度は高い(ポイント付与、初月無料のキャンペーンはいずれも11月19日9時59分まで)。

 唯一残念なところは、MNPの手続きに現状2~3日かかる点。乗り換えを考えているユーザーにとってはやや不便の感じる部分だが、近い将来に即日対応できるようにすると公表されているので期待したいところ。また、楽天スーパーポイントとの連携についても、今は特典としてポイントが付与されるだけだが、いずれは楽天スーパーポイントで楽天モバイルの月額料金を支払えるようになる、というような流れにも期待できそうだ。

 料金設定はもちろん、通話・SMSを利用できるサービス内容も魅力的で、今後のサービスの広がりにも大きな期待がもてる。楽天モバイルは、SIMフリー入門者だけでなくすでに他社のSIMサービスに加入している人にとっても、乗り換え先の最有力候補の1つであることは間違いない。

日沼諭史