レビュー
「ASUS ZenFone 5」ファーストインプレッション
「ASUS ZenFone 5」ファーストインプレッション
驚異のコスパを実現したLTE対応SIMフリースマホ
(2014/10/28 15:00)
ASUS(エイスース)から国内販売が発表されたSIMロックフリーのAndroidスマートフォン「ZenFone(ゼンフォン) 5」(A500KL)。一足早く実機を入手し、試用する機会を得たので、ファーストインプレッションをお届けする。
バランス感のあるスペックと上質なデザイン
ASUSというと、自作パソコンを組むようなPCユーザーには馴染みのあるブランドで、Eee PCのような低価格ノートPCを発売したり、最近では低価格なタブレット「MeMO Pad」を販売したりしてきた。こうした事情を知らないユーザーにとっては、得体の知れないブランドということになってしまうのかもしれないが、同社がGoogleの7インチタブレット「Nexus 7」を製造しているという背景を知れば、そんな不安は払拭されるだろう。2014年8月にはau向けにLTE対応のAndroidタブレット「MeMO Pad 8」を供給するなど、日本の携帯電話市場での存在感が高まりつつある状況だ。
そんなASUSが本格的に日本のスマートフォン市場に参入するにあたって投入するのが「ZenFone 5」ということになる。
ブラック、ホワイト、レッド、ゴールドの4色のラインナップのうち、今回試用したのはレッドのモデルだが、背面のマットな仕上げや正面下部のスピン加工などからは上質な雰囲気が漂う。チープな印象は全く無い。
スペック面では、海外では同じ「ZenFone 5」の名称でLTE非対応の「A500CG」という型番が振られたモデルも販売されており、少しややこしいが、日本で販売されるのはLTE対応の「A500KL」というモデルとなる。A500CGではインテルのAtomプロセッサーとなっていたが、A500KLはLTE対応ということもあってかクアルコムのチップセットが採用されている。
日本においては、キャリアモデルとして販売される端末の多くでハイエンドのチップセット「Snapdragon 800」シリーズが採用されているため、Snapdragon 400というと若干パフォーマンス面で不安を抱くかもしれない。しかし、最近では同じシリーズのチップセットが「らくらくスマートフォン3」や「DIGNO T 302KC」といった、とりわけコストパフォーマンスを意識したキャリアモデルでも採用され始めており、実使用において特に不満に感じる場面は無いだろう。ZenFone 5については、メモリー(RAM)の容量も2GBということで、同一チップセットで1GBしか積んでいないモデルに比べると、しばらく使ってインストールしたアプリが増えてきても軽快に動作する。
対応する通信方式と周波数帯は、LTEが2100(1)/1800(3)/2600(7)/900(8)/800(19)MHz、W-CDMAが2100(1)/1900(2)/850(5)/800(6)/900(8)/800(19)MHz、GSMが850/900/1800/1900MHzで、対応するSIMカードのサイズはmicroSIMとなる。海外で販売されている「A500KL」と比べると、きちんと日本向けに対応する周波数帯をカスタマイズしていることが分かる。ちなみに、「A500CG」ではSIMカードが2枚装着できるデュアルSIMスロットが用意されているが、「A500KL」はシングルSIMスロット仕様となっており、背面カバーを外して現れるSIMカードスロットにはデュアルSIMスロット用のスペースが見てとれる。
ディスプレイは、5インチ、1280×720ドットのIPS液晶。カメラは、800万画素のアウトカメラと200万画素のインカメラを装備する。無線LANはIEEE802.11b/g/nをサポート。バッテリー容量は2100mAh。大きさは148.2×72.8×10.34mm、重さは145gということで、実際に手に取った感覚としては、昨今のAndroid端末の標準的なサイズ感と言える。
ATOK搭載から感じるASUSの本気度
ZenFone 5を起動し、使い始めてまず驚いたのは、日本語変換エンジンとして「ATOK」を搭載していたところだ。スマートフォンでのATOKと言えば、富士通製の端末に搭載された「Super ATOK ULTIAS」が記憶に新しいところだが、そこまで大きなカスタマイズの手は入っていないものの、ZenFone 5にも「ATOK for ASUS」としてAndroid版のATOKがプリインストールされている。
Android版のATOKについては、「auスマートパス」やドコモの「スゴ得コンテンツ」の契約ユーザー向けには無償で提供されているが、通常は有償(Google Playでは1543円で販売)のアプリとして配信されている。MVNO向けSIMロックフリー端末では、とにかく価格重視でできる限りそぎ落とせるものはそぎ落としたいという意識が働きそうだが、あえて日本市場向けにATOKを積んできたところからも、ASUSの本気度がうかがえる。
また、ZenFone 5のユーザーインターフェイスは、同社が独自に開発した「Zen UI」でテイストが揃えられており、低価格スマホによくあるような素のAndroidの殺風景なホームアプリとは異なる。Android標準のホームアプリとは見た目が少し異なるとはいえ、操作の作法が大きく異なるということはなく、Android端末を使ったことがあるユーザーであれば、操作に戸惑うことはないだろう。ちなみに、ホーム画面のアイコンや文字を大きく表示し、スマホ初心者やシニアユーザーでも操作しやすくした「簡単モード」も用意されている。
細かい配慮としては、ブルーライトをカットして電子書籍などを読む際の目の疲れを軽減する「読書モード」や、タッチパネルの感度を制御して手袋をつけたままでも端末を操作できる「手袋モード」なども搭載している。Bluetooth経由でZenFone 5をパソコンのタッチパッドとして使えるようにする「Remote Link」のようなアプリもプリセットされているあたりは、実にPCメーカーらしいところだ。
ただ、ワンセグ・フルセグ、おサイフケータイといった、いわゆる日本仕様については非対応。ストラップホールも防水対応も無い。このあたりはグローバル標準なので致し方ない部分ではあるが、今後のモデルではNFCぐらいはサポートする必要が出てくるのかもしれない。アプリについても、ATOKを積んで、手鏡になる「ミラー」や簡易ライトとして使える「フラッシュライト」のような小技アプリでユーザーへの配慮を見せつつ、QRコードリーダーがプリセットされていなかったりするなど、もう一声と言いたくなる場面も無くはない。