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海外でもかざして支払える
海外でもかざして支払える
ドコモの「iD/PayPass」を体験!【前編】
(2014/1/20 11:00)
日本国内では、スマートフォンを使ったポストペイ(後払い)型のモバイル決済手段として、NTTドコモが提供する「iD」をはじめ、数種類のサービスが利用できるようになっている。しかし、それらはもともとが日本独自のFeliCaを採用した仕組みであるために、NFCの普及が進んでいる海外でサービス展開するには技術的な課題などがあって実現できていなかった。
あらかじめ必要な金額をチャージしておく手間がなく、かざすだけで支払いを完了できる便利さを、日本と同じように海外でも味わいたいと思っても、モバイル端末では不可能だったわけだ。クレジットカードの付帯サービスとして追加することで、一部サービスはカードをかざして決済できるようにはなっているものの、画面上で使用履歴などをすぐにチェックできたり、他のおサイフケータイサービスと一緒にまとめておける手軽さは、カード型にはないモバイル端末の大きな利点でもある。
この“日本で使えて海外で使えない”壁の突破口として期待されるのが、2014年2月5日から正式にサービスを開始する「iD/PayPass」。日本のおサイフケータイによる決済がそのまま海外でも通用するようになる、というものだが、「iD/PayPass」とは一体どういったサービスなのだろうか。前編の今回はそのサービス内容を詳しく解説する。また、次回の後編では実際にどのような形で使えるのか、先行してサービスを開始しているハワイ現地の体験レポートという形でご報告する予定だ。
iDとPayPassが一体になった「iD/PayPass」とは?
最初に「iD」と「PayPass」の各サービスについて改めて紹介しよう。
「iD」は、すでに述べたように、NTTドコモがFeliCaチップ搭載のカード・モバイル端末向けに開始した日本国内限定のポストペイ型非接触決済サービスだ。現在は多くのクレジットカード発行会社がiD対応のクレジットカード・専用カードを取り扱っており、iDの加盟店では、iD設定済の携帯電話やカードをかざすだけで商品を購入できる。利用金額は、設定しているクレジットカードの請求額、または携帯電話の利用料に合算されて請求される。
一方の「PayPass」は、MasterCardが日本を含むアジア、欧米、オセアニア地域の世界60カ国に展開しているポストペイ型の非接触決済サービス。MasterCardのクレジットカードに付帯サービスとしてアドインでき、各国のPayPass加盟店で支払いに利用できる。今のところMasterCardでは、PayPassで支払うためのスマートフォン向け専用アプリなどは、日本国内向けには用意していない。しかし、カードのみとはいえ、VISAやAmerican Expressも類似の非接触決済サービスを始めており、磁気を読み取るのではなく、かざして支払うというのは、今後のクレジットカード業界の世界的なトレンドと言えそうだ。
さて、2月5日から開始するNTTドコモの「iD/PayPass」だが、これはまさに上記2つのクレジットカードサービスが一体になったもの。iDを使えるようにしたスマートフォンに、iDの中の一機能のような形でPayPassを付加できるようになっている。FeliCaとともにNFCのチップも搭載するハイブリッド仕様が国内のスマートフォンの標準となることで、海外を中心に展開するサービスの取り込みも実現しやすくなったという側面もあるだろう。
スマートフォンで「iD/PayPass」を利用できるようにした後は、国内ではiDとして使え、海外を訪れた時はPayPassとして使うことができる(現時点で、国内ではPayPassとして利用することはできない)。iDについては国内約50万店(2013年8月末時点)、PayPassについては世界約160万店(2013年12月時点)がそれぞれ加盟しているとのことなので、「iD/PayPass」を導入したスマートフォンの使用可能範囲は、一気に広がることになる。
もちろんチャージは必要なく、海外でPayPassを使う時も、国内でiDを使う時と全く同じ感覚、同じ使い勝手で支払える。特に海外では、現金で支払っていると小銭の扱いに困ることが多い。どの硬貨がいくらなのかわかりにくく、結局紙幣ばかり使って帰国する頃にはお釣りの小銭で財布がずっしり、みたいなパターンになりがち(少なくとも筆者はいつもそう)。PayPassを使えばそんな面倒に悩まされることもなく、旅行の間ずっと身軽に過ごせるはずだ。
「iD/PayPass」を利用するには?
「iD/PayPass」を使い始めるには、いくつかの準備が必要となる。
まず、FeliCaとNFC(TypeA/B)の両方を搭載しているドコモのスマートフォンを所有していなければならない。対応機種はWebサイトで確認できるが、対応機種であってもドコモminiUIMカード(SIMカード)がピンク色のものでなければ利用できないので、それ以外の色ならドコモショップで交換してもらおう。多くの場合は無償で交換してくれるはずだ。
次に「DCMX」のクレジットカード発行を申し込む。「iD/PayPass」サービス開始時点では、ドコモが提供しているクレジットサービス「DCMX」のiDにのみ対応しており、その他の会社が発行するクレジットカードでのiDでは利用できない。たとえば他社のクレジットカードにiDを付加して、それにひもづける形でスマートフォンにiDの機能を追加しているユーザーも多いかもしれないが、この場合、当初は「iD/PayPass」に対応しないため新たにDCMXのクレジットカードを申し込む必要がある。また、PayPass機能が付加されているMasterCardのクレジットカードであっても、「iD/PayPass」には今のところ対応しない。
あくまでも、すでにDCMXのクレジットカードを持っているユーザーか、新たに申し込んでDCMXのクレジットカードを発行してもらったユーザーであることが「iD/PayPass」利用の前提だ。カードなしで、モバイル端末のみで使える「DCMX mini」も対応しないので、申込時には要注意。なお、ドコモによれば、将来的には他社クレジットカードのiDでも「iD/PayPass」を利用できるようになるとのことだ。
DCMXを申し込む際には、クレジットカードの種類をMasterCard、またはVISAから選択することになるが、ここではどちらを選択してもOK。申し込み完了後、本人確認や審査が完了次第クレジットカードが発行される。ちなみに、DCMXの申し込みはオンラインから行えるが、ドコモショップで直接申し込むことも可能。クレジットカード発行後はプリインストールアプリの「iDアプリ」上で登録操作を行うことで、ひとまずはiDの利用設定を行える。これで日本国内でスマートフォンのiDを使った支払いができるようになるわけだ。
さらに「iD/PayPass」を利用可能にするには、もう少しだけ設定が必要になる。正式なサービス開始日である2月5日まではトライアルという形で利用申し込みでき、すでにDCMXのクレジットカードを所有していて、今すぐに「iD/PayPass」を申し込みたいのであれば、ドコモのキャンペーンページにある手順に従って設定すればよい。2月5日以降は「iDアプリ」のアップデートにより、アプリ上から少ない手間で「iD/PayPass」機能を有効にして即座に利用可能になるとのことなので、設定が難しそうならそれまで待つのも手だろう。
ドコモユーザーならおトクなDCMX
他社のクレジットカードを所有している人だと、クレジットカードを新しく1枚増やすことにためらうかもしれない。また、当初「iD/PayPass」はDCMX限定のサービスということで、他社のクレジットカードも早急に「iD/PayPass」に対応してくれることを期待したいところではある。ただ、DCMXでは、クレジットカードの利用に応じたドコモポイントの付与や、iD支払い時のドコモポイント充当といった特典があるほか、タイミングによっては他にもさまざまなキャンペーンが実施されているので、ドコモユーザーにとっては入会しておいて損のないサービスと言える。
「iD/PayPass」は2014年2月5日から正式サービスインとなるが、前述した通りトライアルという形でハワイでは先行利用が可能となっている。後編の次回は、日本人にも人気の高い観光地ハワイでどのように「iD/PayPass」を使えるのか、実際に現地で試した結果をレポートしたい。