レビュー

いよいよ発売「Pixel 9 Pro XL」、グーグル最新のAIスマホを体験する

Googleのスマートフォン最新モデル「Pixel 9 Pro XL」

 グーグルは、Pixelシリーズ最新モデル「Pixel 9 Pro XL」を8月22日に発売する。

 価格は、グーグル直販サイトでは128GBモデルが15万9900円、256GBモデルが17万4900円、512GBモデルが21万2900円。そのほかNTTドコモ(512GBのみ)、au、ソフトバンク各社でも購入可能となっている。

6.8インチディスプレイ、側面はメタル素材

 ディスプレイは6.8インチ(1344×2992ドット)、アスペクト比20:9のOLEDパネルで、「Super Actua ディスプレイ」を採用する。

ディスプレイサイズは6.8インチ

 最大輝度は2000ニト(HDR輝度)/3000ニト(ピーク輝度)で、コントラスト比は2,000,000:1以上。リフレッシュレートは可変で最大120Hz、HDRをサポート。

 24ビットフルカラー(1600万色)となっており、ピクセル密度も486PPIとなっている。

背面デザイン

 製品名にXLとあるため、大型化しているようなイメージだが、前モデルの「Pixel 8 Pro」が6.7インチと、「Pixel 9 Pro XL」とほぼ同じなため、ディスプレイサイズ的には「Pixel 9 Pro XL」が実質的な「Pixel 8 Pro」の後継モデルと言える。

サイズ的にはPixel 8 Proと同等

 本体の大きさは約76.6×8.5×162.8mmで重さは約221g。「Pixel 8 Pro」は約76.5×8.8×162.6mmだったので、全体的なサイズもかなり似ている。

 ただし側面のデザインは従来のPixelシリーズとは違い平面のため、大きくなった印象を受ける。

 側面はポリッシュ加工のメタル素材で、背面はマット加工のガラス仕上げ。高級感はあるものの、カメラ回りのデザインを除けばiPhone 15 Proシリーズに似たデザインだ。

 とはいえ、サムスンのGalaxy S24シリーズも側面の丸みをなくした、同じような箱形のデザインを採用しているので、トレンドといえばトレンド。設計や強度的にもこのデザインのほうが有利であることも確かだ。

本体左側面
本体右側面
本体上部
本体下部にType-CとSIMトレーを装備

 機能や性能のためではなく、個性を出すためだけに背面パネルを透明にしたり、革など特別な素材を使ったり、ピカピカ光る装飾をつけることに、本末転倒と見なす人がいるかもしれない。それは方向性の違いであり、ハイエンドを志向する機種が、今、最新の設計思想でシンプルに機能性を追求すると、このデザインになるのだろう。

 フロントガラスおよび背面パネルは傷がつきにくいCorning Gorilla Glass Victus 2カバーガラスを採用。IP68に準拠した防塵、防水性能となっている。

 製品の全重量に対してリサイクル素材を18%以上使用しており、アルミニウムに関しては100%リサイクル素材を用いている。

 本体カラーはObsidian(オブシディアン/黒系)、Porcelain(ポーセリン/白系)、Hazel(ハーゼル/グレー系)、Rose Quartz(ローズクォーツ/ピンク系)の4色。純正ケース(5720円)も同色のものが用意されている。

 チップセットは最新の「Google Tensor G4」だが、プライバシー保護などの処理を行う「Titan M2 セキュリティコプロセッサー」は前モデルと同じ。

 生体認証は画面内の指紋認証と顔認証が利用可能。指紋認証は超音波センサーに変更されており、実際に使ってみるとロック解除などで読み取りミスが減っている印象だ。

指紋認証はかなり精度がアップしている印象

 メモリーは16GB、内蔵ストレージは128GBと256GB、512GBの3モデル。ストレージは利用開始時で30GB弱ほどを使用していた。

 後述するが、Pixel 9 Proシリーズでは、動画撮影機能がかなり強化されているので、動作撮影目的で購入する場合は、ストレージ容量は大きいモデルを選んだほうが良さそうだ。

 搭載されているチップセットのTensor G4は、CPUが1Prime(高性能)+3P(パフォーマンス)+4E(エフィシェンシー、効率的なCPU)の8コア構成。Tensor G3は1Prime+4P+4Eの9コア構成だったため、コア数は減っている。

 また、GPUはTensor G3と同じMali-G715。ただしCPUはすべてのコアがひと世代新しくなっており、クロック数もアップ。そのため、トータル的なパフォーマンスはTensor G3よりも向上している。

CPU-Zでチェックした、Tensor G4の詳細

 チップセットの性能としてはこれまでのPixelシリーズ同様、普段使いとしては問題ないレベル。ただし、描画が精細な3Dゲームなどは、クアルコムのSnapdragonシリーズの最上位&最新モデルを搭載しているスマートフォンを選んだ方が満足度は高そうだ。

バッテリーの実力は

 バッテリー容量は5060mAh。最大輝度でYouTubeの4K動画を充電100%の状態から再生し続けたところ、約12時間34分でバッテリー残量がゼロになった。

 今回のPixel 9 Pro XLは画面輝度も向上しており、最大輝度だとかなり明るいので、実用的な明るさの設定であれば連続再生時間はもっと延びそうだ。

 充電は最大37Wの急速充電に対応しており、別売の45W充電器を使用した場合、30分ほどで70%までの充電が可能。またワイヤレス充電(最大23W)も利用でき、マグネットも内蔵している。

広がりのあるステレオスピーカー

 本体スピーカーはステレオ仕様。左右のバランスは悪くないが、本体周囲全面に音が広がって行く感じで、背面の音量もかなりある。高音質でコンテンツを楽しむなら、別途イヤホンなどを使用したほうが良い。

 オーディオテスターアプリで1000Hzの正弦波を最大ボリュームで鳴らして、15cm離れたところの音量は約86.3dbだった。

1000Hzの正弦波を最大ボリュームで鳴らして、約86.3db

通信面のスペック

 通信面では、セルラーの対応バンドが、5Gはn1 / 2 / 3 / 5 / 7 / 8 / 12 / 14 / 20 / 25 / 26 / 28 / 30 / 38 / 40 / 41 / 66 / 71 /75 / 77 / 78 / 79。

 Pixel 8 Proの5Gはミリ波にも対応していたが、Pixel 9 Pro XLはSub6のみで非対応。現状のエリア展開を考えるとミリ波が使えるのはかなり限定的なため、実用的には問題ないとも言えるが、ハイエンドモデルとしては残念なポイントでもある。

 物理SIMは本体左側面にピンで押し出すタイプのトレーを装備。nanoSIM1枚をセット可能。eSIMにも対応しており、デュアルeSIMでの運用も可能となっている。

 無線LANはWi-Fi 7に対応し、Bluetoothはバージョン5.3。

 従来モデルと同じくFeliCaも搭載されており、おサイフケータイなども利用可能だ。

SIMトレーはnanoSIMを1枚セット可能

広角・超広角・望遠のトリプルカメラ

 カメラは背面に広角カメラ(5000万画素、画角82度、F値1.68、センサーサイズ1/1.31インチ)と超広角カメラ(4800万画素、画角123度、F値1.7、センサーサイズ1/2.55インチ)、望遠カメラ(4800万画素、画角22度、F値2.8、センサーサイズ1/2.55インチ)を搭載したトリプル仕様と、Pixel 8 Proとほぼ性能的には同等。

 Pixel 9 Pro XLでは、フロントカメラが強化されており、4200万画素、画角103度、F値2.2と、Pixel 8 Proの10500万画素から大幅に解像度がアップ。画角も広くなっているので、自撮りでも背景をより広くとりこんだ構図にできる。

パンチホールタイプのインカメラで、4200万画素にアップ

 ちなみに製品写真では、かなり背面カメラ周辺の出っ張りが気になるデザインとなっているが、実測では約11.7mmとPixel 8 Proとほぼ同じ。傾斜のない鋭角的なデザインのため、かなり突出した印象を与えるようだ。

見た目はカメラ回りがかなり突出している印象
実測で厚みは11.7mmほど

 実機で、さまざまな場面を撮影してみた。夜間での撮影以外は手持ちでの撮影だが、とくにピントなどはあわせず、そのままシャッターを切ればミスショットなく撮れるのは素晴らしい。また前モデル同様、プロ設定も用意されており、ピクセルビニングを解除した5000万画素での撮影や、RAW形式での保存にも対応している。

プロ設定で5000万画素とRAWでの撮影にも対応
広角の1倍で撮影
望遠5倍で撮影
デジタルズーム最大の30倍で撮影
超広角の0.5倍で撮影
広角の1倍でマクロにならないギリギリの距離で撮影
マクロをオンにした状態で撮影
「夜景モード」の1倍で撮影
「夜景モード」の望遠5倍で撮影
「夜景モード」の超広角0.5倍で撮影
インカメラで撮影

夜でも撮れるようになったパノラマ

 写真撮影のモードとしては「パノラマ」での撮影方法ではこれまでと違いがある。

 従来モデルでは、シャッターボタンを押すと、そのまま左右どちらかに、ゆっくりとズレないように動かし続けて撮影していた。

 一方、Pixel 9 Pro XLではシャッターボタンを押すと、画面内に表示されるガイドとなる点に合わせるように右方向に動かし、一旦止めて撮影。さらに右方向に移動させて何度か同じ撮影をくりかえし、終了したいときにはもう一度シャッターボタンを押すという方式になっている。

パノラマはカメラを動かして点の位置をあわせて撮影する方法に
暗い場所でもキレイなパノラマが撮影可能になった

 動かしている最中を取り込むのではなく、止めてから撮影を繰り返す形式なので、夜間でも明るいパノラマ写真が撮れるようになった。

カメラでもAIを駆使した新体験

 さらに撮影係を変えて2回撮影することで、集合写真を全員で1枚の写真に収められる「一緒に写る」を追加。見ず知らずの人に撮影を頼む必要がなくなるのは便利だ。

「一緒に写る」を使えば、二人しかいない場合でも三脚不要で同じ構図に収めて撮れる

 また動画では、ブーストを使った8K動画の撮影や夜景モードが追加。ブーストは撮影したデータをGoogleフォトにアップロードして、そこで8Kへのアップや夜景撮影の品質アップを行った上で、端末へダウンロードするという仕様になっている。

ブースト機能で8K動画の作成が可能に
動画にも夜景モードが登場
夜景モードで撮影したブースト変換前の動画のスクリーンショット
夜景モードで撮影した動画のブースト変換後のスクリーンショット

 今回は、残念ながら8Kへのアップは半日経ってもなぜか処理が終わらず、確認はできていない。このあたりの処理スピードは今後の課題と言えそうだ。

 もちろんAIを使った「消しゴムマジック」などの、写真編集機能は引き続き搭載。Pixel 9 Pro XLではさらに背景の足りない部分を書き足して背景を広くする「オートフレーム」といった機能も搭載している。

足りない周りの風景を書き足してくれるオートフレーム機能
オートフレームで自然な感じで背景が広くなった

グーグルのAI「Gemini」も手軽に

 Pixel 9 Pro XLでは、Geminiもより手軽に利用できるというのもポイント。

 電源ボタン長押しで呼び出し、音声入力によるGoogleアプリと連携した情報のピックアップも可能だ。

 ただしGeminiに関しては、現状では日本語で利用できない機能も多く、今後の対応待ちといった感じ。

日本語での利用がまだまだ限定されるが、GoogleのAIサービスGeminiがいち早く利用できるのはポイント

 最新のハイエンドスマートフォンとしては、基本スペックも高く、カメラ性能も引き続き高いクオリティの「Pixel 9 Pro XL」。Pixel 6シリーズ以前のユーザーなら、十分買い替えの対象として候補に挙げられるスマートフォンだ。