レビュー
グーグル「Pixel 5」のカメラでブラブラ撮影を楽しむ
2020年10月22日 06:00
10月15日に発売されたグーグル「Pixel 5」は、5Gに対応したAndroidスマートフォンだ。
手触りがよく高級感があるマット地の外装や、コロナ時代にマッチした指紋認証をはじめ、先進のカメラ性能、パンチホール式フロントカメラ、防水仕様、ワイヤレス充電など、質感と機能のバランスがいい端末に仕上がっている。
スペックなど詳細は本誌の別記事を参照して頂きたい。キモとなる5Gはカバーエリアの問題で恩恵をすぐに受けることはなさそうだが、カメラ性能は端末を手にした瞬間から楽しめる機能だ。グーグルより「Pixel 5」が届いたので、その写りを試すべくブラブラと各所を撮り歩いてみた。すでに旧モデルであるが、アップル「iPhone 11 Pro」との比較もいくつか行った。
使用感
「Pixel 5」は1220万画素広角カメラと1600万画素超広角カメラのデュアルカメラとなる。
広角カメラは光学および電子式手ブレ補正機能搭載だ。画角はそれぞれ35mmフルサイズ換算で約27mm/F1.7と約16mm/F2.2となる。
スクリーンに表示される「.6x」「1x」「2x」のアイコンをタップするか、ピンチイン/アウトでシームレスに画角を変更可能だ。
「.6x」が超広角カメラ、「1x」が広角カメラで、これより上は超解像ズームとなる。なおデジタルズームは最大7倍までの撮影が可能となっている。パンチホール式のフロントカメラは800万画素だ。
「Pixel 5」の撮影はとても楽しい。まずカメラの起動がラクである。ポケットに突っ込んだ「Pixel 5」を握り、電源ボタンをダブルクリックすればいいのだ。
端末をパッと出すとカメラが立ち上がっているので気になったシーンを撮り逃すことがない。手探りでもカメラスタンバイできるのは頼もしい。レスポンスも良好だし、バッテリーの保ちも驚異的なのでバンバンと撮影できるのがいい。
「Pixel」シリーズは「Computational Photography(コンピュテーショナル フォトグラフィー)」の権化、といった印象が強いが、 フォトグラファーに調整の余地を残してくれているところがうれしい のだ。
もしRAWが必要であればカメラの詳細設定画面から「RAW + JPEG」での撮影、保存も可能だし、露出補正も使いやすい。
スクリーンをタップすると2つのゲージが現れ、ハイライトとシャドウの明るさを別々にコントロールして好みの仕上がりでシャッターを切ることができる。この「デュアル露出補正」は好みの露出で撮影ができるのでとても重宝している。
また水準器もなかなかだ。「Pixel 4」シリーズでも搭載されていたのだが、水平のものが画面内にあるときにジワッと出現していた。「Pixel 5」ではそのスピードが速くなり、ほとんどのシーンで出てくれるのがありがたい。使用感に不満はない。
3つの画角
広角
静岡・駿府城公園を広角カメラで。35mmフルサイズ換算約27mmの画角は素直でいい印象だ。
薄曇りだったのでフラットな絵となったが、城壁や石垣のディテール、雲の立体感や水面も解像感も問題がない。
超広角
次はウルトラワイドレンズ(超広角カメラ)だ。35mmフルサイズ換算約16mmのスケール感は迫力がある。
パンフォーカスなためシャープさこそ広角カメラに譲るが、それはピクセル等倍で見た場合だ。
このワイド感があれば室内も広く撮影できるし、大人数での記念写真も背景とともに写し込めるだろう。
2倍ズーム
最後は「2x」だ。広角カメラのデジタルズームとなるが描写はなかなかのもの。さすがは「超解像ズーム」のPixelである。
ディテールと解像感もよく、発色も多の2つのカメラと揃っていて素晴らしい。普通に使用して遜色のない画質である。
iPhone 11 Pro との比較
さてここでウルトラワイドレンズをライバルであるiPhoneと比較してみよう。
新型が出てしまったためすでに旧モデルとなる「iPhone 11 Pro」と撮り比べてみた。横浜・みなとみらい名物の水陸両用の観光バスをリアから撮ったが、どちらをチョイスするかは好みの問題、といったところか。
発色も見た目に近くいい雰囲気だ。車体のラッピングされた部分の表現もよく、車内の様子もよく起きており、ヒトの見た目に近い仕上がりとなっている
一方、iPhone 11 Proは35mmフルサイズ換算約13mmなのでワイド感がより強調されている。
またシャープネスと発色も強めになっており、カッチリ感と色鮮やかさが眩しい仕上がりだ
ポートレートモード
「Pixel」シリーズが得意なポートレートモードを見てみよう。
スマートフォンカメラで背景をぼかす手段は、AI、デュアルピクセルやデュアルカメラの視差を利用する方法などが存在する。シングルカメラだった「Pixel 3」シリーズからAIを活用し、美しいボケと卓越した境界判定を実現していたが、「Pixel 5」にもその伝統はしっかりと息づいている模様だ。
静岡のとあるバーカウンターを何気なくポートレートモードで撮ったカット。フックで吊り下げられているワイングラスの数々がキレイに境界判定され、しっかりとボケて背景と分離されている。これはスゴい。またカウンター上に置かれたボトルのボケ感もなかなかだ。
上で登場した水陸両用観光バスのサイドミラーをポートレートモードで。
ガラスの向こうにビルが見える難しいシチュエーションだが、大きな破綻もなくしっかりと境界判定をして背景をぼかしてくれた。
ライバルが苦手な部分だが「Pixel 5」は何の問題もなくこなした。
iPhone 11 Pro との比較
ふたたび「iPhone 11 Pro」と較べてみよう。よく話題になる「グラス、ストロー問題」だ。
ライバルは透明、半透明、極端に細い被写体(髪の毛などだ!)などの場合、境界が溶けてしまうような描写になることが多い。
これは撮影するアングルを変えれば改善する場合がみられるが、「Pixel 5」の場合はほぼ全てのシーンでさほど問題なくきちんと描写してくれた。
この辺りはグーグルの面目躍如といったところか。「iPhone 12」シリーズではどうなっているか気になるところである。
グラスのエッジ、ストローの全体部分ともにキレイに境界判定され、背景とキチンと分離された描写をしてくれた「Pixel5」。
拡大するとストロー部分にジャギーも見られるが等倍で確認しなければまず問題はない。
iPhone 11 Proはグラスの上端部分とストローの先端が空間に溶けてしまっている。
いくつかアングルを微妙に変えてシャッターを切ったが、この角度のものが一番写りがよかった。ストロー部分はジャギーこそ見られないが、先端がこれでは使えないショットとなる。
ポートレートライト
ポートレートモードでの新機能が「ポートレートライト」だ。これはポートレートモードで撮影後、仕上がりを確認しながらフィルライト(補助光)を、自由自在に位置と強弱を変えて効果を反映させる独特の機能だ。
これは動画を見てもらった方がわかりやすいだろう。とても面白い機能で、ボケ効果やピント位置を撮影後に調節できる「Pixel 5」の新しい武器と言える。
ちなみにマスクをした状態の場合は「顔」だと認識されず、「ポートレートライト」機能が有効にならなかった。
行きつけのバーの女性スタッフにセルフィー(自撮り)してもらった。
「Pixel 5」は暗所のセルフィーでも仕上がりが美しい。
なおかつ仕上げ時に「ポートレートライト」加工できるのが強い。同機能で顔正面にフィルライトを当てて明るく調整した。
Night Sight(ナイトモード)
さて「Pixel」シリーズといえば夜間撮影に強いという定評がある。
英語名では「Night Sight」と銘打たれたこの機能は手持ちでの夜景撮影シーンを一変させた。「え、こんな暗さで写真が撮れるの?」という暗所でも気軽に手持ち撮影ができるのだから驚きだ。
デジタル一眼に三脚が必要な環境でもラクラクと美しい写真が撮れるのだ。
端末をしっかりと固定すれば「星空撮影モード」が起動し、天の川すら簡単に撮影できる。今回は試す時間がなかったが本誌過去の記事を参照してほしい。
以前は光量が少ない環境だと「ナイトモードを試しますか?」というようなガイドが出て、フォトグラファーが切り替えて撮影しなければならなかったが、「Pixel 5」からは同様なシチュエーションだと自動的に「Night Sight」がオンになるようだ。
もちろん任意で外すことも可能。被写体に「Pixel 5」を向けてただシャッターを切るだけで、ムーディーなナイトシーンを撮れるのが魅力だ。色合いも美しい。
「Night Sight」は明暗差のバランスをうまくとって写真を仕上げてくれる。やや過剰に思える時もあるが、ゴージャス感をうまく演出してくれる撮影機能だと言えよう。「Night Sight」も「デュアル露出補正」が使えるので、好みのシーンにすることもたやすい。バーのボトルたちも煌びやかに写せた
iPhone 11 Pro との比較
夜に滅法強い「Pixel」シリーズに対し、近年ナイトモードを搭載して「夜に弱い」というイメージを払拭しつつあるのがiPhoneシリーズだ。光量に応じてシャッタースピードをスライダー操作によって変更することができる。
横浜の海を撮影してみたが、ホワイトバランス補正が弱いのがiPhone 11 Pro、しっかりと補正するのが「Pixel 5」という印象を持った。
さすが元祖ナイトモード。色かぶりも抑えられており、好ましい色合いに仕上がっている。
シャドウ部を拡大してみるとノイズ感もあるが、あえて残してノッペリ感をなくしているような印象だ
iPhone 11 Proはやや暖色系に色が転んでしまった。しかしそれほど悪い描写ではなく健闘していると思う。
シャドウ部はノイズを打ち消す方向の処理で塗り絵感が高い。新型は広角と超広角カメラでナイトモードが使えるので、ようやく「Pixel」シリーズに追いつくことになる。
ムービー
最後に動画での新機能についてもお知らせしたい。手ブレ補正機能が大幅に進化しているのだ。
「標準」「ロック」「アクティブ」「シネマティック撮影」の4つからなり、動きの大きさに応じてチョイスできる。
一般的な撮影は「標準」で、動きが大きい場合は「アクティブ」などである。なかなか「アクティブ」の威力はスゴく、アクションカメラ顔負けのスタビライズを見せてくれた。
特に面白いのが新機能「シネマティック撮影」だ。まるで映画のワンシーンのようにゆっくりとスムーズなパンニングを実現してくれる。スライダーにムービーカメラを載せて撮影したカようなショットを歩きながら撮影可能だ。
横浜港の様子をペデストリアンデッキから歩きながら撮影。音声記録はないがムーディーな映像を誰でもカンタンに撮ることができるだろう
まとめ
いろいろと発売前から撮り歩いて試したが、「Pixel 5」はなかなか使えるカメラスマートフォンだという印象を持った。
超広角カメラを新搭載し、定評あるナイトモード「Night Sight」も写りがよく、「ポートレートモード」も相変わらず強いときている。
また以前から「RAW」(DNGフォーマット)撮影にも対応しているし、バッテリーの保ちも良好。薄くて軽く、カメラの起動も高速だ。価格もリーズナブルだし、5Gにもしっかりと対応している。スキがない、というのが正直なところだ。
気になった点はシャッター音が「Pixel 4」シリーズより大きくなったところだろうか。
これから話題のスマホが登場してくるが、今年はこの「Pixel 5」でもいいのではないか? と思わせてくれる完成度だと感じた。それくらい気に入った端末である。
撮影協力:OldValley Dining