KDDI決算、田中氏がソフトバンクのプラチナバンドに言及
KDDI田中氏 |
KDDIは、2012年4月1日~6月30日の業績を発表した。KDDIの代表取締役社長である田中孝司氏はこの中で、ソフトバンクが25日よりスタートした「プラチナバンド」について言及した。
■田中氏「ある日突然、電波が改善することはない」
900MHz帯を獲得し競争力を増したソフトバンクのiPhoneに、auのiPhoneは対抗できるのか?――決算発表の質疑応答では、こうした主旨の質問が飛んだ。KDDIの田中氏は、同社が800MHz帯で運用していることに触れて、「我々は長い間800MHz帯を構築してきたが、ある日突然、電波が改善するということは全くない。電波は数年をかけてチューニングし、技術的なノウハウを貯めて適用していく。皆さんが想像されるような簡単なものではない」と話した。
また、「一朝一夕にエリアがきれいにできるとは思っていない。KDDIは3Gをマルチキャリア化し、さらにAdvancedを導入し改善してきている。それに、これから3Gは3.9Gへとシフトしていくので、今どうのこうのいうことはなく、とくに何もない」などと語った。田中氏は他社のどうこうよりも、同社が掲げる3M戦略をいかに推進していくかが重要であるとした。
なお、囲み取材の中では、ソフトバンクのiPhoneを導入する大手企業が、auのiPhoneに乗り換えたとする話題が出た。田中氏は、「もともとエリアは良い、ということで我々の法人部隊も営業を強めている」と説明した。
■3M戦略、スマートバリューとスマートパス
KDDIは、2012年1月に「ゲームチェンジ」を宣言し、これまでのモバイル中心の回線獲得モデルから、モバイルと固定網によるID登録数の拡大を目指し、さらに、コンテンツ利用によるID単位でのARPU(一人あたりの月ベースの売上高)の上昇を狙うビジネスモデルを導入した。
またKDDIでは、固定通信サービスの契約者に対し、auスマートフォンの利用料を割引きする「auスマートバリュー」を提供している。家族内のauシェア拡大とともに、KDDIグループだけでなく提携するFTTH/CATVの事業者も対象とすることで、契約拡大と顧客獲得単価の低減という相乗効果を狙ったサービスだ。
田中氏は、「auスマートバリュー」がサービス開始から4カ月で133万契約、世帯数にすると82万世帯を獲得したと説明した。3月末の2.0(au310万契約/155万世帯)ポイントを目指し、現在1.6(au133万契約/82万世帯)ポイントと順調に推移しているという。なお、スマートフォンの新規契約のうち25%が「auスマートバリュー」がもたらした契約となっている。固定網の「auひかり」については、新規契約の33%が「auスマートバリュー」を契約しており、「auスマートバリュー」全体では、auひかりは4割のシェアで、残りの6割は提携するFTTH/CATV事業者によるものだ。
スマートフォン時代のポータル「auスマートパス」については、6月末時点で147万契約となり。現時点ですでに150万契約を超えている状況とした。「auスマートパス」はAndroidスマートフォン向けのサービスとなるが、対応端末利用者の契約率は目標の80%近くにまで近づいたとした。
■大幅な減益も「計画通り」と田中氏
2012年度第1四半期のKDDIの業績は、売上高が前年同期比0.4%減の8612億1500万円、営業利益が前年同期比32.8%減の942億1100万円、経常利益は前年同期比31.9%減の901億8600万円、純利益は前年同期比28.7%減の512億9100万円となった。
大幅な減収減益となったが、田中氏は「3M戦略の本格化に向けた先行投資」であるとし、通期の営業利益予想の5000億円に修正がないことをアピールした。同氏は「ぱっと見ると大幅な減益だが、通期5000億円は我々のコミット(約束)であり当然変えない。社内の計画通りに進んでおり、足元の営業データもポジティブ(前向き)なので、5000億円について自信のゆらぎはない」と話した。
売上高の減少は、スマートフォンの拡大に伴う毎月割などによる通信料収入の減少や、機種変更の減少による端末販売収入の減少によるもの。第2四半期以降は、新800MHz帯への周波数再編が完了したことで、第1四半期までかかっていた500億円のコストが浮くほか、利用者の増加によって携帯事業も固定事象も第2四半期以降は収入増が期待できるという。
■パーソナル、バリュー、ビジネス、グローバル
なおKDDIでは、今回の第1四半期の業績報告より、これまでの移動体事業、固定通信事業といった分類ではなく、「パーソナル」「バリュー」「ビジネス」「グローバル」の4セグメントに変更している。
「パーソナル」は、家庭および個人向けの通信サービスや携帯端末販売などの事業分野。「バリュー」は、家庭おより個人向けのコンテンツ・決済サービスの分野。そして、「ビジネス」は法人向け、「グローバル」は海外の法人・個人向けとなる。
セグメント別の業績については以下の通り。
「パーソナル」事業は、売上高が前年同期比2.9%減の6658億円、営業利益は前年同期比37.9%減の651億円。「バリュー」事業は、売上高が前年同期比22.3%増の347億円、売上高が前年同期比6.7%減の101億円となった。
「ビジネス」事業は、前年同期1.9%増の1563億円、営業利益は前年同期比27.4%減の152億円、「グローバル」事業は、売上高が前年同期比18.4%増の463億円、営業利益が前年同期比22.2%増の14億円となった。
■解約率、販売手数料、ARPU、スマートフォン販売
なお、第1四半期のauの純増数は56.6万件で、auの解約率は0.61%、MNPによる契約数は15.7万件。NTTドコモ、au、ソフトバンクの3社による純増シェアは35.7%と2番手となった。auの販売手数料、いわゆるインセンティブは2万6000円。
また、第1四半期のauの通信ARPUは4240円で、バリュー事業の付加価値ARPUば250円、合計4490円となった。4240円の通信ARPUの内訳は、データ通信ARPUが2720円、音声ARPUが2040円となり、割引き適用額は520円となった。田中氏は、スマートフォンへのシフトによりデータARPUが上昇傾向にあるとした。
さらに、スマートフォンの販売数も前年同期の2.6倍となる167万台となった。通期目標の755万台(連結、800万台)に向けて、順調に推移していることを印象づけた。なお、第1四半期の毎月割設定単価は昨年度第4四半期の2000円を下回り、1700円となった。
このほか、3M戦略の本格化への先行投資額は第1四半期で160億円で、その約半分、80億円はネットワークのオフロード策への投資として今後も継続していく計画。残りの80億円のコストが第2四半期以降は減少していくものとみられる。
2012/7/25 18:58