社員の位置をリアルタイム共有、Google Mapsの企業向けサービス


 グーグル株式会社は10日、地図・位置情報技術を活用した企業向けサービス「Google Maps Coordinate」について、日本での提供を開始したと発表した。社外で業務を行う従業員を管理するためのクラウドベースのソリューションで、現在位置がリアルタイムで地図上に表示され、人員の配置や作業の指示を効率よく行えるという。

 Google Maps Coordinateでは、Android 2.3/3.0/4.0以降のモバイル端末にアプリをインストールすることで、社内の管理者がウェブブラウザー上のコンソールで各従業員の位置やステータスを管理できる仕組み。例えば、空いている従業員は緑、次の現場に移動中の従業員は青のアイコンでGoogle Maps上に表示するようになっている。

 これにより管理者は、業務が発生した現場の最も近くにいる従業員を把握し、指示を出すことが可能だ。ウェブコンソール上からジョブを作成し、地図上でピンをドラッグすることで具体的な場所を指定すると、該当する従業員の端末にジョブがすぐに通知される仕組みだ。

 通知を受け取った従業員が現場到着時にチェックインする機能もあり、移動時間などを正確に把握できる。また、作業完了報告や現場で得た資料なども取り込んでクラウドで共有する機能もあり、作業の指示資料も含めてペーパーレスで行える。ジョブの作成機能などは、企業の事業内容に応じてカスタマイズ可能。レガシーシステムとも接続可能だ。

 位置情報は、GPSのほか、Wi-Fiアクセスポイントや基地局セルを利用した位置認識にも対応。従業員が屋内や地下にいても確認でき、建物内のマップ(インドア Google マップ)とも連携可能だとしている。

 なお、従業員のプライバシーにも配慮しており、就業時間を設定しておき、その時間が過ぎたら位置情報の取得を停止するといった機能もある。


管理者側のウェブコンソール画面従業員側のジョブ管理画面
チャックイン/アウト機能や現場で収集した情報の共有機能もある位置情報のログを分析することでから業務の効率化につなげられる

 米GoogleグローバルGEOセールス統括責任者のタルーン・バハナガー氏によると、あらゆるビジネスで扱う情報のうち8割は位置情報が必要であり、そうしたニーズに対応するのが「Google Maps API for Business」「Google Earth Enterprise」といったプロダクトだという。

 こうした地理空間情報関連のプロダクトは同社の企業向けプロダクトの中でも最も売れている分野であり、世界の大手企業を含む2万5000社以上で導入済み。文字やスプレッドシートの形式だけでは大量になるデータも、地図上で視覚化して表示することで、企業のアセット管理や危機対応などの場面で迅速な判断が行えるようになるのがメリットとアピールする。

 実際、従来もGoogleの地理空間情報プロダクトを用いてアセット管理などを行ってきた企業もある。導入事例としては、国際宅配便サービス大手のDHLが車両などの位置管理や顧客への情報公開、ルート最適化などに活用しているほか、日本企業では日立建機が世界中で稼働している建設重機の状況を地図上で管理し、稼働率などを把握しているという。


米GoogleグローバルGEOセールス統括責任者のタルーン・バハナガー氏Googleの企業向け地理空間情報関連のプロダクト

 一方で、Google Maps Coordinate担当シニアプロダクトマネージャーのダン・チュウ氏は、こうしたシステムを自社開発するような物流や警備といった専門企業でなくとも、業務における位置情報のニーズが幅広い企業において高まっていることを指摘。従業員の位置情報や作業ステータスの管理をより手軽に行えるソリューションとして、Google Maps Coordinateを提供することにしたと説明した。

 なお、IDCの調査によれば、モバイル端末を使用しながら業務を行う“モバイルワーカー”の人口が、2015年までに労働人口の37.2%に増加するという。ダン・チュウ氏は、特に日本ではモバイルワーカーが64.8%を占めるとの予測を紹介し、Google Maps Coordinateを日本で提供することの重要性をアピールした。


Google Maps Coordinate担当シニアプロダクトマネージャーのダン・チュウ氏Google Earth担当プロダクトマネージャーのディラン・ロリマー氏

 

(永沢 茂)

2012/7/10 18:45