国内外にきめ細やかに対応するシャープの「Feel Logic」思想


シャープ 河内氏

 シャープは、夏モデルとして各社に投入したスマートフォンの新製品説明会を開催した。同日、スマートフォン向けユーザーインターフェイス(UI)「Feel UX」や、健康管理サービスについても発表された。

 登壇したシャープの通信システム事業本部 グローバル商品開発センター副所長 兼 プロダクト企画部長の河内巌氏は、スマートフォン市場の変化として、最先端層、先進層への買い換えが落ち着き、「今年は安定嗜好な人たちのスマートフォンへの買い換えが一気に広がる」と予測した。シャープの調査では、この安定嗜好のユーザー層には、シャープのさまざまな製品を利用するユーザーが含まれているという。

 こうした中、2012年夏のシャープはAndroid端末9モデル、フィーチャーフォン2モデル、再参入を果たしたPHS端末1モデルの合計12モデルを投入する。これまで同様にユーザーのニーズに対応する幅広い商品ラインナップを用意するとともに、新たなユーザー体験を提供していく方針だ。

製品特徴

 説明会では、ハイパフォーマンスラインとしてNTTドコモ向けの「AQUOS PHONE ZETA SH-09D」「AQUOS PHONE sv SH-10D」、auの「AQUOS PHONE SERIE ISW16SH」、ソフトバンクの「AQUOS PHONE Xx 106SH」が紹介された。これらは、ハードウェア面では、高画質化と省電力化を実現するディスプレイ「Super CG Silicon液晶」、より忠実な色再現性を実現する描画エンジン「SVエンジン3」などが特徴となるモデルだ。

 「Super CG Silicon液晶」では、液晶の透過率の改善され輝度が従来製品の約2倍に高められたほか、バックライトの制御が効率化され、メモリを搭載したことで主に静止画面での省電力化を実現した。

 また「SVエンジン3」では、色が表示・印刷できる範囲を意味する色空間の国際規格であるsRGB規格をサポートし、ナチュラルカラーモードが用意された。屋外で利用することの多い携帯電話のディスプレイは、パソコンのディスプレイよりも色が濃く表示されるようチューニングされている。このため、パソコン向けに色が再現されているネットショップなどでは、ディスプレイで確認した色と購入した商品の色が異なって見える場合もあるという。ナチュラルカラーモードでは元画像に忠実な色を再現することで、スマートフォンを使ったネットショッピングなどに活用できる。

 このほか、スタンダードラインとして、ドコモの「AQUOS PHONE st SH-07D」、auの「AQUOS PHONE SL IS15SH」、ソフトバンクの「PANTONE 5 107SH」などが紹介された。



Feel Logic

 シャープは多様なニーズに合わせた幅広いラインナップを展開し、国内の携帯電話出荷数で首位を維持してきたが、2011年度は首位の座を富士通に明け渡し、アップルに次ぐ3位となってしまった。発表会で河内氏は、「残念ながら3位になってしまった。あらゆる手を打ってきたが、不足していたかなと思う」と話し、よりきめ細やかにユーザーのニーズに対応し、“ジャパニーズ・フィット”つまり、日本のユーザーに最適な製品を追求していく姿勢を見せた。

 河内氏は、「ラインナップだけでグローバルパワーに勝てるとは思っていない。今日は我々の開発思想に立ち戻りたい」と述べ、「Feel Logic」と呼ぶ開発への基本的な考え方を示した。

 「Feel Logic」の3本柱は、直感的に操作できる「Feel Operation」、匠の技で快適性を提供する「Feel Meister」、驚きの新体験を提供する「Feel Creation」で構成される。

frogのPaul Pugh氏

 「Feel Operation」は、シャープが新たに開発し、今後グローバル展開も予定されているUI「Feel UX」がそれに当たる。米デザインハウスであるfrogと共同開発したもので、今回の夏モデルから搭載されている。シンプルなレイアウトながら、工夫をこらしたさまざまな仕掛けが用意されており、特徴的なロック画面もその1つだ。ロック画面には5種類の画像を待受画像として設定可能で、ロック解除なしで電話やメール、カメラ起動といった頻繁に使う機能にアクセスできる。また、時刻表示部分を左右にスライドさせると、天気や株価などの情報も確認できる。

 メインメニューは、アプリとウィジェット、ショートカットの3ライン構成となり、アプリのアイコン長押しして、他のアプリアイコンと重ねると複数のアプリをフォルダに格納できる。今回の発表会にはfrogより、Paul Pugh氏(VP of Creative,Software Innovation)が登壇し、「スマートフォンで重要なのはアプリであり、Feel UXはアプリへのスムーズなアクセスを提供する」などと話していた。

 「Feel Meister」は、シャープがこれまで研鑽を積んできた技術的な優位性に当たるもので、「エコ技」や文字入力、辞書機能、ダイレクトトラッキング技術などがそれに当たる。「Feel Creation」としては、先述した「SVエンジン3」や、約0.4秒で起動するカメラ機能、カメラのHDR撮影機能などが紹介された。

 このほか河内氏は、「グローバルにもFeel Logicの思想を受け継いでいきたい」などと語った。シャープでは、製造業大手の台湾ホンハイ(鴻海、FOXCONN)グループとの資本業務提携を明らかにしているが、河内氏は「国内向けもホンハイと積極的に協力関係を整えていきたい、現在協議中」などと話した。



シャープの機器間連携、健康管理サービスにも

SHヘルスケアインターフェイスを開発

 シャープの携帯電話は、フィーチャーフォンが主流だった時代から同社のAV機器との充実した連携機能が用意されており、スマートフォンでもその連携機能は拡充されている。18日、シャープは、NTTレゾナントやエー・アンド・デイ(A&D)とともに、健康管理分野における機器間連携の取り組みを発表した。

 NTTレゾナントは、クラウド型健康管理サービス「gooからだログ」において、体組成計がスマートフォンなどと連携する新サービスを展開する。健康管理機器の相互接続規格である「コンティニュア」対応の体組成計で計測すると、専用アプリが搭載されたスマートフォンにBluetoothで自動的に計測データが転送され、「gooからだログ」で健康管理が行えるというものだ。

 シャープでは、Android 4.0以降でコンティニュア対応機器を連携させるためのミドルウェア「SHヘルスケアインターフェイス」を開発。これまでのFeliCaインターフェイスに加えてコンティニア規格をサポートした形となる。NTTレゾナントと機器メーカーのA&Dと共同発表となるが、汎用的な仕組みとなるよう目指したものという。

 発表会ではデモンストレーションが行われた。コンティニュア対応A&D製体組成計に乗ると、あらかじめ登録しておいたスマートフォン(最大5台)へ自動的にデータが転送される。一般的な体組成計は、登録した番号を選択した上で計測することで個別のデータを管理するが、今回の体組成計は初回に番号登録するだけで、その後、計測するたびに番号を選択する必要がない。体重と体内インピーダンスで前回のデータと照合し、自動的に該当するスマートフォンにデータが転送される。双子など体組成計が判断できない場合のみ選択する。このほか、対応血圧計なども紹介された。


体組成計のデモンストレーション。Bluetoothでデータが自動的に転送される
COCOROBOのデモンストレーション

スマートフォン


Feel UX


 




(津田 啓夢)

2012/6/18 15:47