ドコモのモバイル空間統計、都市計画や防災でのメリット確認


 NTTドコモは、携帯電話の位置情報を利用する「モバイル空間統計」について、これまで大学と行ってきた実験の結果、有用性が確認されたと発表した。それぞれ学会での発表が予定されている。

 「モバイル空間統計」は、ユーザーが持ち運ぶ携帯電話の位置情報や、ユーザーの属性をとりまとめ、統計処理した人口の推計値。時間軸で東京都心を見ると、朝は住宅地エリアからオフィス街へ人が移動し、夜には繁華街が賑わう、といった様子がわかる。ユーザーのプライバシーを侵害しないよう、生年月日などの情報は取り除かれるが、性別や年齢層といった情報は活用される。

 これまでドコモでは、東京大学とともに千葉県柏市において都市計画に関する研究を、工学院大学と防災計画分野での研究を行っており、その結果が今回まとめられ、「モバイル空間統計」が役立つことがわかった。たとえば都市計画においては、街を訪れる人が多いにも関わらず、バス停や本数が少ない地域を選び、コミュニティバスの運行改善などに役立てられる。商業エリアや農業エリアなどの1日の人口変動を確認することで、各エリアの利用実態の評価、あるいは今後の用途について「モバイル空間統計」を検討材料にできるという。昨年9月から行ってきた実験により、コミュニティバスなどの運行改善のほか、子育て世代の女性の昼間人口推計を元にした公園整備への活用、市街地を訪れる人の動向を元にした活性化対策といった点が新たに活用可能な事例として浮かび上がってきたという。

 一方、防災関連では、都内で発生する帰宅困難者の推計が可能で、帰宅困難者の支援施策に活用できる。災害時に徒歩で帰宅しようとしたユーザーの数も推計可能とのこと。防災分野の実験は3月31日まで行われているが、研究結果は仮定の震災に基づいたものとなっている。東日本大震災が発生した際には、通信規制を実施した影響で位置データが正確に収集できておらず、震災当日のデータ自体はあるものの、今後どのように活用するかは未定とのこと。

 



(関口 聖)

2011/5/24 18:54