NVIDIA、国内で「Tegra 2」の詳細を解説


Tegra 2

 エヌビディア ジャパン(NVIDIA)は、国内で記者向けに「Tegra 2」に関する説明会を開催した。このチップはLG製の「Optimus Pad L-06C」に搭載されており、LGの担当者も登壇して特徴を解説した。

 「Tegra 2」(テグラ 2)は、NVIDIAがモバイル端末向けに開発したチップ。1GHz駆動のデュアルコアCPUに加えて、GPU(ULP GeForce)、動画、メモリ、カメラの画像処理、オーディオなど8つのコアが内蔵されたヘテロジニアス・マルチコアSOC(System on a Chip)で、通信モデム以外の多くの機能にワンチップで対応する。Android 3.0のタブレット型端末として「Optimus Pad L-06C」がTegra 2を搭載するほか、同じAndroid 3.0搭載でKDDIから発売された、「XOOM Wi-Fi TBi11M」もTegra 2を搭載。海外市場では、LGやモトローラなどがTegra 2搭載のスマートフォンも展開している。

Optimus Padは日本が最初

LG Electronics Japan プロダクト&ビジネスグループ モバイルコミュニケーション 主任のキム・ヒチョル氏

 説明会では最初にLG Electronics Japan プロダクト&ビジネスグループ モバイルコミュニケーション 主任のキム・ヒチョル氏が登壇し、「Optimus Pad L-06C」の特徴を語った。同氏はOptimus Padの8.9インチという画面サイズについて、「どうやって差別化していくかという中で、現時点で8.9インチを市場に出すことにした。片手で持てる最大のサイズで、我々のライバルも8.9インチの製品を発表している。このサイズは継続していく予定」と語り、10インチと7インチの間を埋める製品として継続的に開発していく方針を明らかにした。

 また、「エンターテイメント・タブレット」という方向性を打ち出し、ゲームのデモを披露。動画再生ではHDMI出力により1080pのコンテンツを再生できる(端末の画面では720p)様子を紹介したほか、LGの独自サービスとして韓国ドラマや音楽、LGのセレクトによるアプリをユーザー向けに配信するサービスも紹介し、「5~6月には100コンテンツになる」と拡張していく方針を示した。

 同氏は、「今まではグローバルのものを日本で遅れて出していたが、この端末に関しては日本がグローバルでも一番最初に発売された。日本でもスマートフォンを持ってこれる環境が整ってきた」と市場の変化に触れ、「Optimusブランドで、日本でも今後トップシェアのベンダーを狙っていきたい」と意気込みを語った。

Optimus Padの特徴エンターテイメント・タブレットと紹介
韓国のコンテンツもOptimus Padのユーザー向けに提供

 

デュアルコアの性能と省電力機能

エヌビディア ジャパン テクニカル・マーケティング・エンジニアのスティーブン・ザン氏

 エヌビディア ジャパン テクニカル・マーケティング・エンジニアのスティーブン・ザン氏からは、Tegra 2の概要や特徴が解説された。

 同氏は、現在のスマートフォンの性能ではユーザーの「やりたいこと」を満足させられないとした上で、Tegra 2搭載のスマートフォンを「スーパーフォン」と呼称。Tegra 2を「モバイルスーパーチップ」と紹介した。その特徴は「デュアルコア」「Web体験」「GeForceによるゲーム」の3つで表し、8コア内蔵のダイ構成や、デュアルコアによるマルチタスキングのデモを披露。WebブラウザやFlashの高速な動作速度やパソコン版と同等の表示ができる様子を紹介し、ゲームでは基本性能の高さに加えて、Tegra 2に最適化されたアプリでは移植版であってもディテールが豪華になっていたり、パソコン版などと同じサーバーで対戦ができるといった、さまざまな特徴を解説した。

 同氏はまた、Tegra 2に最適化されたコンテンツを紹介するアプリ「Tegra Zone」について触れ、発売前の開発中のタイトルも概要が確認できるといった特徴もアピールした。なお、Tegra Zoneで紹介されるアプリのダウンロードや購入はAndroidマーケットで行うため、「Androidマーケットと競合するものではい」と説明されている。

 ザン氏からは省電力機能についても解説された。デュアルコアCPUでは、同じ作業を40%少ない電力で行えるという内容を、消費電力に関する計算式を交えて示し、加えてチップに搭載された8つのコアを複数の電源ドメインで分割して最小限の電圧で駆動できる仕組みを解説。「他社に対する差別のひとつでもある」と効率的な電力制御に自信を見せた。

Tegra 2の3つの特徴8コアを搭載するTegra 2の内部構成
FlashやHTMLの動作速度の比較パソコン向けFlashコンテンツが問題なく動作する様子
GPU搭載で高速なグラフィックス処理を実現デュアルコアの1コアをAIに割り振り、高度なCPU対戦も可能
デュアルコアが40%の省電力化を実現する計算式チップ内の電力制御例

 

次期Tegraは5倍の性能、2011年中に発表

 同氏からはさらに、モバイル向けチップのロードマップも紹介された。2011年中に発表予定の次期Tegra、コードネーム「KAL-EL」(カルエル)はTegra 2の5倍の性能を実現し、パソコン向けCPUであるCore 2 Duoの性能を超えるとする。その後はTegra 2の10倍の性能というコードネーム「WAYNE」(ウェイン)、「LOGAN」(ローガン)と進化し、2015年に登場する予定という「STARK」(スターク)では、Tegra 2の75倍の性能が実現されるとした。なお、「KAL-EL」については、クアッドコアCPUおよび3D表示対応の12コアGPUを搭載し、最大2560×1600ドットの解像度(30インチの画面に相当)、1440pの動画再生をサポートするといったスペックが明らかにされている。

 将来へのビジョンについても語られ、現在主流となっているパソコンやサーバー向けに加えてモバイル端末向けチップを加えることで、急成長を描くグラフを紹介。モバイル向けの戦略はARMアーキテクチャを中心に据えるとし、マルチコアを進めていく方針を示した。また、さらなる展開として、次世代のTegra向けにARM Cortex A15ライセンスを購入したことを紹介し、その後のコアを自社開発した上で、あらゆる製品で採用していく方針を明らかにした。

Tegra 2と後継チップのロードマップ次期Tegra、コードネーム「KAL-EL」のスペック

 

 質疑応答の時間には、ゲームコンテンツの拡充方針が聞かれたが、対応の一端として、「PlayStation Suite」がTegra 2でも動作することが明らかにされた。

 また、ロードマップに関しては、2015年の「STARK」がTegra 2の約75倍とされた点について、その必要性を疑問視する声も上がった。ザン氏は、「パソコンのメモリは640KBで十分だ」と予言したビル・ゲイツ氏の言葉を紹介した上で、75倍の性能をどう使うのか、「正直、今は分からない」とする。また、同社の予測として、パソコンの世界がスーパーハイエンドとローエンドに2極化するという予測が、モバイルにもあてはまるかもしれないとしたほか、ザン氏の個人的な考えと断った上で、「携帯をデスクトップパソコンのように使い、データはすべてクラウド上で、日常で唯一使うコンピューティングデバイスになるかもしれない」と予想を披露。性能が向上することで初めて気がつくといった、新たな使い方が表れるとした。

 

プレゼンテーション

 

会場の展示

Android 2.2搭載の東芝「Folio 100」(欧州向け)Android 2.2搭載のNEC「Life Touch Note」
Android 3.0搭載のLG「Optimus Pad」Android 3.0搭載のモトローラ「XOOM」

 




(太田 亮三)

2011/4/13 21:03