ドコモ決算は減収微増益、山田氏がiPad向けミニSIM発売に言及
NTTドコモの山田隆持氏 |
取締役常務執行役員財務部長・坪内和人氏 |
NTTドコモは4月28日、2009年度連結業績を発表するとともに、2010年度の取り組みについて発表した。同社・山田隆持社長は、その席上、iPad向けにミニSIMカードの発売準備をしていることについて言及した。
■連結業績、顧客満足度、解約率
NTTドコモの2009年度連結業績は、営業収益が前年比3.7%減の4兆2844億円、営業利益は0.4%増の8342億円、税引前利益は7.1%増の8362億円、当期純利益は4.9%増の4948億円となった。
NTTドコモの山田隆持社長は、「2009年度はお客様満足度の向上という点では成果が表れた1年となった。また、パケットARPUの増加はドコモの根幹をなすものであり、ここでも成果があった。2009年度は種をまいた1年であり、一部には若木に成長したものもあったが、これらが2010年度に実行フェーズに入ると捉えている。変革の時期は、追い風と捉え、ドコモが強みを発揮できるサービスと技術の提供に全力をあげて取り組んでいく。顧客満足度のさらなる向上にも取り組むほか、新たなチャレンジ項目に取り組むことで、2012年の営業利益9000億円達成に向けた足固めの年としたい」などと語った。
顧客満足度の向上では、2009年度の年間純増シェアが31.5%とNo.1になったこと、解約率が0.46%となり過去最低となったことをあげ、「きちっとお客様に認めてもらっている。とくに解約率は、ドコモを使っていて、良かったと思ってもらっていることを判断する指標として重きをおいている」と指摘。さらにパケット定額制料金プランの契約率が50%を突破したこと、iコンシェルが400万契約を突破、BeeTVが107万契約になったことなどにも触れた。
また、ファミリ割MAX、ひとりでも割50、オフィス割50といったMAX系割引の契約率は63%に到達。「10年以上の契約者による割引を含めると全体の80%を占めている。比率の増加はだんだん減少しており、MAX系による減収への影響はゼロに近くなってきた」とした。バリュープランの契約者数は3300万契約を突破。契約率は58%に達しているという。
年度決算概況 | 決算のポイント |
決算のポイント | 第4四半期業績 |
■ARPU、端末販売台数
オペレーションの状況 |
ARPU |
ARPUについては2009年度の総合ARPUが360円減少の5350円。音声ARPUは、400円減少の2900円、パケットARPUは70円増加の2450円となった。
2009年度におけるmovaからFOMAへの移行は227万件となり、94.9%にあたる5320万台がFOMA。movaは288万台となっており、「これを2010年度中には123万台にまで引き下げ、FOMA契約率98%を目指す」とした。
端末の販売台数は前年比10.4%減の1804万台。「第4四半期は6%減と減少幅が少なっている。端末の切り替えを待っていた人がいること、スマートフォンの販売台数が増加することなどの要素もあり、2010年度は1820万台の販売を計画している」という。
■2010年度の業績見通し、事業方針
一方、2010年度連結業績見通しは、営業収益が前年比1.5%減の4兆2220億円、営業利益は0.7%増の8400億円、税引前利益は0.8%増の8430億円、当期純利益は0.4%増の4970億円とした。
2010年度の事業方針では、変革目標として「お客様満足度のさらなる向上」を掲げるほか、チャレンジ目標として「各項目が実行フェーズに入る年」(山田社長)とし、「パケットARPUの伸びによる成長」、「LTE導入とネットワークの進化」、「サービスのパーソナル化の推進」、「ソーシャルサポートサービスの展開」、「融合サービスの導入推進」、「端末のさらなる進化」、「グローバル展開の推進」、「国内出資・提携の推進」の8つの項目をあげた。
解約率 | MOU |
2009年度の取り組み | 割引プランの状況 |
総販売数 | 純増シェア |
2010年度業績予想 | 事業運営方針 |
■顧客満足度のさらなる向上へ
「お客様満足度のさらなる向上」としては、施策費用として、前年度の約300億円の予算を、約400億円へと増額。「これらの施策費はコスト効率化によって捻出する。一般経費を削減するなど、我々が汗をかいて生み出す上で実施するもの」とし、48時間以内の訪問対応、エリアネットワーク品質の向上、「ケータイてんけん」の強化、パケ・ホーダイダブルとBiz・ホーダイダブルとの統合によるスマートフォンへの買い替えをスムーズに行う施策の展開といった各種取り組み例を紹介した。
「48時間以内の訪問対応は、2009年度実績で5万5000件。そのうち80%を改善し、97%のユーザーから満足だったという声をいただいた。2010年度は5万7000件の訪問実績を目指す」という。
そのほか「ケータイてんけん」では、2009年度の252万件の実績を、2010年度には600万件に拡大。電池パック・補助充電アダプタサービスも、2009年度の720万件の実績を、2010年度には1000万件にまで増やす。
顧客満足度向上策 | 顧客満足度向上策 |
顧客満足度向上策 | パケットARPU向上に向けて |
パケットARPU向上に向けて | 動画コンテンツ拡充 |
■スマートフォンのiモードメール対応は2010年度中頃に
スマートフォン |
チャレンジ戦略の「パケットARPUの伸びによる成長」では、2010年度におけるパケットARPUで110円増加を見込む計画。山田社長は、「年間パケットARPUは2560円となり、音声ARPUの2550円と初めて逆転することになる。2012年度までにはパケット定額制の契約率を70%として、パケ・ホーダイダブル契約者の50%以上が2段階定額の上限に張り付くことを想定している」と語った。
さらに、「ヘビーユーザーに魅力あるコンテンツを提供するだけでなく、ミドル・ライトユーザーにパケットを使ってもらうことが大切。また、スマートフォンについては、コンテンツ利用、料金、ラインアップの拡充という三位一体で利用者拡大に向けた環境整備を進めていくことが必要。スマートフォンでのiモードメールアドレス対応を2010年度半ばまでに実現するほか、年度内にはおサイフケータイの対応を一部機種で行う。すでにドコモマーケット対応も実現している。2010年度のスマートフォンの市場規模は300万台。そのうちドコモとして100万台を売りたい」と語った。
また、「スマートフォンによって、パケットARPUの110円増加のうち、20~30円の増加を期待している」(NTTドコモ取締役常務執行役員財務部長・坪内和人氏)とした。
■Xperiaは10万台超えの売れ行き
4月1日から発売したスマートフォンのXperiaは、4月20日時点で10万台を超える売れ行きをみせ、「これまで当社が発売したスマートフォンのなかで一番の売れ行き。今年秋にはAndroid 2.1にバージョンアップする予定。また、特徴のある商品には型番だけでなく、Xperiaのような商品名をつけていくことになる」と、出足の成功を強調してみせた。
そのほか、パケットARPUの拡大に向けては、通信エリアの広さや通信速度の速さを生かしたPCデータ端末の強化、電子書籍やタブレットPCなどの新たな市場への対応も大きな要素になるという。
データ通信端末は、2008年度は26万台、2009年度は58万台の実績となっており、「2010年度は70万台を販売し、純増シェアの50%を獲得したい」と意欲を見せた。
データ通信 | トラフィック対策 |
■山田氏、iPadやLTEに言及
山田社長は、iPadについても言及。「アップルが1月27日に、iPadを発表した際に、SIMロックフリーであるということを話している。iPadの購入者でドコモの回線を使いたいという人がいれば、回線を提供することを考えている。iPad向けにミニSIMを販売するという方向で検討を開始している」とした。
「LTE導入とネットワークの進化」では、2010年12月にLTEを導入する計画を改めて説明。2010年度中に、3Gエリアにオーバーレイする形で、東京、名古屋、大阪から導入を開始し、約1000局の基地局を設置するとした。下り最大速度は37.5Mbpsだが、駅や空港などの屋内の一部では10MHz帯を活用することで、最大75Mbpsでのサービスも可能になるという。
「まずはデータカードから提供し、ラインアップを拡充。2011年からハンドセットも提供する。ハントセットは、3GとLTEの両方が使えるデュアルモードになる」(山田社長)。なお、Wi-Fi対応については、「今後、パケット利用が増加していくのは明らかである。Wi-Fiも視野に入れて準備を行っていく必要がある。データオフロードの推進は必要」と語った。
■2000億円のコスト削減策
設備投資 | コスト対策 |
「サービスのパーソナル化の推進」として、iコンシェルの契約目標を790万契約としたほか、「ソーシャルサポートサービスの展開」では、健康・医療、金融・決済、環境・エコの3分野におけるサービスに力を入れるとした。
「融合サービスの導入推進」では、固定電話、情報家電、自動車、産業機器との融合サービスを展開。「端末のさらなる進化」では、アプリケーションプラットフォームの統合をベースとした効率的な端末の開発やスマートフォンへのiモードサービスの取り組みなどを開始する。
さらに、「グローバル展開の推進」では、インドをはじめとする海外でのビジネス展開の強化や、渡航者向けのサービスの拡充を展開。「国内出資・提携の推進」では、「国内外や、コア事業、新規事業を問わず、ドコモのあらゆる事業強化を目的とした出資、提携を推進し、収益拡大と持続的成長を図る」とした。
また、コスト削減として、一般経費関連で700億円(2007年度比)、ネットワークコストで1100億円(同)、地域会社統合による1社化の効果で200億円の、合計2000億円規模の削減を図るとした。
■SIMロック解除について
一方、山田社長は、「SIMロックフリーに関しては、お客様が望むのであればと考えている。ただ、利用者には、CDMA2000とは方式が異なること、周波数が違うこと、受けられるサービスが違うといった認識を持っていただく必要がある」などとしたほか、「法人向け市場は、携帯端末全体の10%強の構成比率だが、ドコモにとって重要な市場であり、これまで強かった大手企業、中堅企業の大手だけに留まらず、今年度から中小企業にも注力したい。直販だけでなく、ドコモショップが法人ビジネスに打って出るということも必要であり、それを含めて展開していく」などと語った。
さらに「端末調達のコストは1台あたり平均で、2000数100円下がっている。これは、安い機種に売れ筋がシフトしているのが要因で、1台あたりの単価が落ちているのではなく、総合単価が落ちているもの」(NTTドコモ取締役常務執行役員財務部長・坪内和人氏)とした。
LTE | サービスのパーソナル化 |
社会支援事業 | 端末の進化 |
2010/4/28 19:14