ウィルコム、債務の私的整理に向けて事業再生ADRへ


 ウィルコムは、強固な収益基盤の確立と財務体質の改善を図るため、事業再生実務家協会への事業再生ADR(産業活力再生特別措置法所定の特定認証解決手続き)を申請し、同協会に受理されたことを明らかにした。

 ウィルコムでは、現行PHS事業に加え、10月1日より高速データ通信サービス「WILLCOM CORE XGP」を展開する予定となっている。同社では、新たな事業展開のために「財務体質の抜本的な改善を機動的に推進することが不可欠」として、事業再生ADRの正式申請に踏み切った。

 ウィルコムの債務は、2009年3月末の時点で約1300億円。その内訳は、社債が約350億円、金融機関への債務が約935億円。事業再生ADRの計画案は、債権者である金融機関に対して約935億円の返済期限延長を求めるもの。延長期間の詳細などは明らかにされていない。

 計画案は、債務者(ウィルコム)と弁護士ら第三者で構成される事業再生実務家協会の連名で、債権者(金融機関など)に対して一定期間、債務の元本残高、つまり借入金の残金の返済期限延長を要請するもの。さらにその後、借入金の返済スケジュールの変更も求めていく予定となっている。具体的な再生計画の内容については明らかにされていない。

 なお、ウィルコムでは債務の免除や株式化(Debt Equity Swap:企業債務と交換で株式を発行する)といったさらに踏み込んだ企業再建案について、現時点で想定していないという。

 同社は事業再生ADRを利用した理由として、サービスの継続を確保できることを挙げている。また、今回の事業再生ADRの申請によって、ユーザーや販売店、メーカー、取引先などに影響が出ることはないとしている。

 今年8月、ウィルコムは突然の社長交替を発表、元ソニー・エリクソンの代表取締役社長の久保田幸雄氏を代表取締役社長に迎えた。現在の資本金は50億円で、株主構成は米投資ファンドのカーライルグループは60%、京セラが30%、KDDIが10%となっている。

 事業再生ADRは、企業再生に向けたいわゆる私的整理の1つで、再生計画案が債権者に同意された場合、私的整理が成立する。一方、債権者の同意が得られない場合、裁判官を交えた調停が開かれ、調停が成立すれば私的整理、不成立となれば民事再生・会社更生手続き、つまり法的手続きが進められる。

 



(津田 啓夢)

2009/9/24 13:50