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楽天が目指すAIの姿、人間味を持たせる意味合いとは 「Rakuten AI Optimism」三木谷氏の基調講演

 AIが目まぐるしく進化する中、楽天が目指すAIとは何か。同社最大のビジネスイベント「Rakuten AI Optimism」で楽天グループ 代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が基調講演の中で、そのビジョンを語った。

楽天グループの三木谷浩史会長

インフレの生活防衛に挑む「楽天モバイル」と「3兆のデータ」

 激しい円安が生活に影響を及ぼしている。エネルギー価格や原材料の高騰は止まらず、この6年で消費者物価指数は、2020年との比較で6月に13.6%上昇した。政府は減税の方針などを打ち出しているが、三木谷会長は現在の政策や国際情勢を鑑みれば、円安基調は続くだろうと見通しを示す。

 消費者にとって厳しい状況が続く中、楽天グループでは、楽天モバイルを通じて通信費を下げることで、生活を守ることに貢献してきたと語る三木谷氏。その土台には仮想化技術やAIの活用がある。

 AIの技術革新の速度は極めて速い。IT業界では、18カ月~24カ月ごとに性能が2倍になるという「ムーアの法則」が有名だが、AIの性能は7カ月ごとに2倍になっているという。

 AIは処理をするアルゴリズムであり、そこに入る変数である「データ」が重要になる。このことを三木谷氏は「データこそがダイヤモンドの原石」と表現。ここに楽天グループの強みが発揮される。同社のサービスは毎月累計5000万人に使用されている。ユーザーの購買や行動ログデータなど、数としては3兆を超える。

 ショッピングや検索など、単体でサービスを提供する企業とは異なり、同社は多数のサービスをエコシステムとしており、ひとつのデータプラットフォームで動くことからそのデータを活用してさまざまなサービスを提供できるとする。多忙で自分で買い物をする暇がなく、秘書に頼んでいるという三木谷氏だが、これをWeb上のAIで実現できると話す。

独自のハイブリッド戦略と「スーパーAIエージェント」、そして「AI店長」へ

 「どのAIでやるのか」が今後のポイントになるという。世界的に大手のAIサービスは数多くあるものの、サードパーティ製品にすべて依存することは、セキュリティやコスト面でリスクが大きい。楽天が自社でAI開発を進めるのはこうした理由からだ。

 同社ではパラメーター別に「7B」(70億パラメーター)、「2.0」(470億パラメーター)、「2.0mini」(15億パラメーター)、「3.0」(7000億パラメーター)の4種があり、中でも7000億パラメータークラスのものを開発している日本企業は少ない。ただし、グローバル企業と全く連携しないわけではなく、OpenAIやグーグル、アンソロピックと自社のAIを組み合わせるハイブリッド戦略でAIを展開していく。

 楽天が目指すのは、単一のサービスに閉じたAIではない。これまでは楽天市場、楽天トラベル、楽天モバイルと、それぞれのサービスごとに個別のAIが存在していたが、今後はこれらを統合したプラットフォームへと進化させていくという。たとえば「北海道へスキー旅行に行っている人に、スキーグッズを楽天市場で紹介する」といった、ユーザーの行動や興味に先回りして寄り添う「スーパーAIエージェント」としての展開を視野に入れている。

 こうした取り組みを踏まえて、楽天が実現を目指しているもののひとつが、楽天市場における「AI店長」という。「楽天はアマゾンと圧倒的に違う。楽天にとっては店舗の皆様が大切」と三木谷氏は訴えかける。

 AI店長は、ユーザーがどのような商品が欲しいか、やり取りを重ねて最適な商品を提案する。レビューや評価の情報も教えてくれるほか、注文までを受け付ける。三木谷氏は「(楽天市場の)人は大切だが、処理能力には限界がある。店長をアバターにすることでより広範な問い合わせや質問への対応ができるようになる」とする。

 楽天市場は「自動販売機」ではないという三木谷氏。続けて「最終的にはリアルな人間が対応するのがベストだが、24時間365日、何万もの処理を人がすることはできない。その人のプロファイルやペルソナを読み込み、各店舗にAI店長がいるという環境を作りたいと語った。

なぜ人はロレックスを身に着けるのか? 楽天が追求する「人間味のあるAI」

 AIがさまざまなサービスに入り込み、進化していくなかでも三木谷氏は「人をどう大切にするか」だと話す。

 「人はなぜ(高級時計の)ロレックスを身に着けるのか。クオーツ時計でも普通のデジタル時計でもいいと思うが『人間味のあるもの』を必要としているのではないか」と推察を述べる。

 対話型AIは生活にも深く浸透している現在だが、そうしたものはあくまで一般的なものだと、線引きする。そのうえで、ショッピングエージェントとしてのAIは単なる取引の遂行にとどまらず、顧客の意図をくみ取って提案できるようになることが大事と語った。