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Googleの汎用AI「Gemini」が教育現場で活躍、教育向けLLM「LearnLM」でパーソナライズされたチューター体験を提供

 グーグル(Google)の生成AI「Gemini」は、ユーザーが日頃さまざまなことを相談できたり、時には話し相手になったり、仕事の資料を作成したり、あらゆる場面での利用が加速している。一方、生成AIのユースケースとして最近上位に挙げられているのが「教育」での利用だという。

 同社によると2025年の調査で「過去12カ月間のAIアプリケーションの利用目的」で70%超のユーザーが「学習目的」と回答しており、さまざまな年代で、学習や教育面でのAI活用が進んでいる。

 一方で、日本では2019年からGIGAスクール構想の取り組みが進められており、クラウドサービスの導入や生徒が1人1台端末を利用できる環境の整備などが進められてきた。

6割強の自治体でグーグルを採用

Google for Education Japan事業戦略・業務統括本部長の中野生子氏

 Google for Education Japan事業戦略・業務統括本部長の中野生子氏は、GIGAスクール構想で約1200の自治体のうち約64%が同社のクラウドツール「Google Workspace for Education」を利用していると話す。教育現場における生成AIの活用も浸透してきており、都内の公立学校では、39%の学校が「授業中に先生が生徒に生成AIを活用させている」と回答し、85%の学校が「先生がAIを活用して授業の準備や教材研究をしている」と回答している。

 Google Workspace for Educationでは、一般のGoogleアカウントと比較して教育向け、生徒向けにさまざまな機能がカスタマイズされている。たとえば、データ保護についてはエンタープライズレベルでの保護機能が施されており、入力した内容がAIの機械学習に利用されることはない。また、18歳未満のアカウントに対して生成AIの応答を制限するフィルターを設けたり、特権管理者が履歴やログを確認できる機能を備えるなどの対応が取られている。もちろん、Googleサービスとの連携や常に最新の情報にアクセスできるようになっている。中野氏は「安心、安全に利用できる環境とするのが教育現場では重要」とし、教育現場での利用に特化した機能や性能を備えたものと説明する。

 一方で、通常利用しているGeminiでは、困ったことやわからないことを質問すると、すぐに回答を得られる。教育向けのGeminiでは、ユーザー(生徒)が考えて解答にたどり着けるようにする“ガイド付き学習”としての機能が備えられている。この機能を利用すれば、たとえば英語の前置詞について尋ねるプロンプトに対して、ヒントやイメージを膨らませる問いかけで、ユーザー自身が正解にたどり着けるようにサポートする。

ガイド付き学習の設定がない回答(左)とある回答(右)

 また、ユーザー自身で資料を用意し、その資料に基づいて回答する機能「NotebookLM」では、授業で使った資料や教材をインプットさせて使うことで、授業に沿った内容の回答が得られる。音声や動画を使った解説を生成することもできるため、「これまで文字中心のやりとりが主流だったが、生徒自身が得意な形で理解を支援してくれる」と中野氏は指摘する。

ユーザーそれぞれに最適な「チューター」を構築

 これら、学習向けの回答を支えているのは、学習向けにデザインされたモデル「LearnLM」だという。Google DeepMindプリンシパル サイエンティストの全炳河氏は、DeepMindの例として囲碁AI「AlphaGo」(アルファ碁)を取り上げ、「AlphaGo」が世界チャンピオンに勝利した2016年3月からプロ棋士の質が急激に上昇したと話し、AIにはプロ棋士の成長を後押しする効果があったと指摘する。

Google DeepMindプリンシパル サイエンティストの全炳河氏
囲碁AI「AlphaGo」(アルファ碁)

 一方で、「LearnLM」の開発にあたっては、学習科学を基盤に置き、ユーザーが自ら学ぶ能力を引き出すことを念頭に開発が進められたという。「便利なツール」から「学びを支援するパートナー」になるよう、教育の専門家を交えながら「リスクを小さく、より多くのユーザーを支援する」ものを目指していると全氏は話す。

 ユーザーの学習をガイドする、いわゆる「チューター」を構築するため「LearnLM」の開発では、優れたチューターになる要素や実装方法、システムの評価方法などがまず検討された。これに加え、できるだけ多くのユーザーをサポートするためにどうするかが考えられた。全氏は「パーソナライズされ、かつ効果的なものにする必要があり『AlphaGo』よりも難しいものになった」と語る。

 「AlphaGo」は、囲碁のルールに沿った動きを考えて評価すればよいだけで、自分自身で対局することで機械学習することもできる。「LearnLM」では、さまざまなユーザーがさまざまな科目を学習するため動きが複雑で、学習者のシミュレーションも容易ではない。また、成果を評価する基準も不明確で、学習者が納得するタイミングも学習者によって異なる。

 これらの複雑で難解な課題を乗り越えるため、まずは「学習指導」の指示に従うことを目標にモデルを開発したという。先生や研究家が考え抜いた原則や指導方針をプロンプトに入力すれば、できるだけそれに従うようにトレーニングし、有効性を評価しモデル自身が再び学習することで、「学習科学」を効率よく実践に活かす仕組みを導入した。

 これら「LearnLM」の研究開発で得られた成果は、実際に汎用AI「Gemini」に組み込まれて教育現場で活用されているほか、Geminiを基盤とする同社の製品群にも「学習科学」として組み込まれているという。

プロンプトで細かく調整するのがうまく利用するコツ

 教育現場でGeminiを使いこなすコツとしては、「どのような学習をしたいか/させたいか」をプロンプトで細かく指定することだと全氏は説明する。

 「LearnLM」では、それぞれの国や地域に向けて学習データを組み込んでおり、ユーザーがどれだけ学習できているかを評価するものも、国や地域によって変わってきているという。たとえば、同じ日本国内のユーザーでも「日本の学校」か「外国語学校」かで授業や評価の方法が変わってくる。位置情報が外国で利用環境が日本語のユーザーでも「現地の学校」なのか「日本の教育をリモートで受けているのか」によって変わってくると全氏は指摘し、どのような教育環境での支援を求めているのかをプロンプトで入力した方が、ユーザーにとってよりよい形で支援できると語る。

 また、先生として授業で利用するクイズや教材を作成する場合、教育指針や大事にしていることをプロンプトで入力することで、中立性を最大限担保しながらも“先生の色を出した”教材を作成できる。NotebookLMであれば、 日頃から利用している教材や資料をソースとして入力すると、ソースの内容に合わせた資料を作成できる。

 一方で、「日本製の教育向けAI」の開発や運用が一部で進められている。“グローバル”で“汎用AI”として運用しているGeminiの強みを全氏は「非常に多くの国と言語の学習データを使っている点」と説明する。たとえば、“文学”はそれぞれの国と地域で異なるため、それぞれに合わせたデータでの学習が必要になる。一方、“数学”であれば、ほとんどの国で同じデータが利用できる。全氏は、これらの学習データをバランス良く組み合わせて提供することが重要になると話した。