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ドコモの人間拡張基盤、今度は“痛み”の共有

【CEATEC 2025】

 10月17日まで幕張メッセ(千葉県千葉市)で開催されている総合技術見本市「CEATEC 2025」にNTTドコモ(1H007)が出展している。初出展となる今回の展示の目玉は、PaMeLaと開発した「他人の“痛み”を共有できる技術」だ。ドコモのプラットフォーム「人間拡張基盤」の動作、触覚、味覚に次ぐ感覚の共有技術で、痛覚を共有する技術の開発は世界初だという。

人の痛みに「寄り添える」技術

 今回の技術は、ドコモの人間拡張基盤とPaMeLaが開発した“痛み”を脳波から測定する技術を連携させたもの。痛みを持っているユーザーの頭にセンサーを取り付け、装置を経由することで、大脳の脳波を分析し、痛みを測定している。「痛みを持っている人」と「共有する人」それぞれの痛覚の感度を推定すると、その人の感じ方のレベルに合わせた痛覚を共有したり、痛みを持っている人が平時と比べてどれくらい痛いのか比較したりできる。

 現状は、温度の変化による痛みを中心に推定を進めているという。担当者は、人に与えた痛みの度合いを数値化することがなかなか難しいと語り、まずは数値としてわかりやすい温度変化による痛みの推定を行っている。今後は、ドコモグループ全体で推定精度向上への取り組みを実施していくという。

 ブースでは、実際に温度変化による痛みを推定するデモンストレーションが実施されていた。登壇していた芸人の「キクチウソツカナイ。」は、実際の痛みが推定され数値化されてしまうことで「リアクション芸人が泣きを見るかもしれない」とこぼしていた。

キクチウソツカナイ。
痛みを推定するデモンストレーション
デモ中の数値の変化
痛みを推定する装置

 担当者は、今回の技術を「医療に役立つユースケースが多くなるのでは」と話す。医療関係者からは「患者が実際にどういう痛みを感じているかを知れることで、その痛みに“寄り添える”ようになる」という声も聞いているとし、想像上のユースケースとしながらも、痛みに応じた治療や薬の処方など、患者の痛みをより軽減できるようなものにも繋がるかもしれないとコメントする。

 今後の展望として、温度の変化以外の痛みについての研究開発も進めると説明。このほか、触覚や味覚などさまざまな感覚と組み合わせた体験や、内臓など身体の内部で発生する痛みの推定、心のケアなど痛み以外の感覚を共有する技術の開発を進めていく。

エネルギー分野の展示も

 ドコモブースでは、このほかエネルギー分野に関する技術が展示されていた。

 たとえば、二酸化炭素を空気中から直接回収する技術「DAC(Direct Air Capture)」技術が注目されている。この技術を活用した装置を移動体に取り付けることで、二酸化炭素吸収量を定量化させる取り組みでは、ドコモ・バイクシェアの自転車に装置を取り付けることで、吸収した二酸化炭素を「カーボンクレジット」として創出させるプラットフォームの開発を進めている。

ドコモ・バイクシェアのシェアサイクルとDAC装置。

 展示されていた装置では、通常の走行でおおむね1~2時間で吸収限界に到達するといい、ユーザーの環境意識を高めることにも繋がるとしている。

走行中の風などで二酸化炭素を吸収する。ブースでは、擬似的にサイクリングでの吸収量を確認できる

 このほか、家庭内での節電を促すAIエージェントも展示されていた。AIによるわかりやすくやわらかな口調で、特定の家電や生活習慣の変化を直接言及するのではなく、「家族が同じ部屋に集まる」ことを提案したり、ユーザーの自宅に合わせて節電についてアドバイスしたりしてくれる。また、AIに「エアコンの設定温度を下げたらどうなるか」とユーザー側から質問することもできる。

節電AIエージェント