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電話・ネット詐欺対策アプリ「Whoscall」がリニューアル
2025年10月9日 11:42
10月8日、台湾Gogolookは東京で電話・ネット詐欺対策アプリ「Whoscallリニューアル発表会」を催し、さまざまな場所と手法で拡大する詐欺の概況が紹介され、電話・ネット詐欺対策として、広く利用されている「Whoscall」(フーズコール)の進化、デザインを一新した最新バージョンの内容などが説明された。
世界で1億件以上がダウンロードされた「Whoscall」
発表会の冒頭、台湾Gogolookの創業者でもあるジェフ・クオ CEOが登壇し、世界最大級のオンライン詐欺対策ネットワーク「GASA」(The Global Anti-Scam Alliance)のレポートなどを交えながら、進化し続ける詐欺の概況などを説明した。
パソコンやスマートフォン、携帯電話などにおける脅威は、2011年ごろはウイルスなどのマルウェアによる被害が顕著だったが、2014年ごろからはダークウェブの出現により、個人情報の蓄積や売買が拡大。2020年には新型コロナウイルスなどの話題性を利用した詐欺が増え、最近ではAI技術を悪用した映像や音声によるディープフェイクの詐欺が増えているとした。なかでも詐欺やソーシャルエンジニアリングによる脅威は、急速に拡大しており、2020年ごろは脅威全体の30%だったものが現在は90%を占めるところまで増えているという。
詐欺が発生する手段としては、電子メールや電話、テキストメッセージ、SNSなどが多く、なかでもSNSはXやInstagram、TikTokなどが新たな詐欺を生む温床になりつつあるとした。
また、スマートフォンやパソコンを狙った詐欺というと、シニア世代がターゲットだと思われがちだが、デジタルネイティブと言われるZ世代で46%、ミレニアル世代でも35%が被害に遭っており、誰でも詐欺のターゲットになり得るという。日本の成人が直近12カ月に詐欺に遭遇したのは約28%で、約4人に1人が何らかの詐欺に出くわしているという。
こうした状況に対応するため、同社は電話・ネット詐欺対策アプリ「Whoscall」を開発し、2010年から提供してきたが、これまでに1億件以上がダウンロードされ、6.6億件の詐欺電話、18億件の詐欺SMS、3000万件の詐欺Webサイトの詐欺防止に貢献してきた。これに加え、近年は詐欺対策の啓蒙活動にも注力し、自治体との実証実験やイベントでの活動などにも取り組んでいる。
こうした詐欺対策は社会全体で団結・推進していくことが重要で、同社では世界各国の政府機関やNPOなどと連携するほか、GoogleやAppleをはじめ、国内外の携帯電話会社や金融機関などとも連携を図っている。ちなみに、国内では楽天モバイルが「迷惑電話・SMS対策 by Whoscall」として提供している。
ロゴデザインも一新した「Whoscall」最新バージョン
ジェフ・クオ CEOに続いて、日本カントリーマネージャーの阿久津有美氏が登壇し、デザインを一新した「Whoscall」について説明した。
新たにデザインされたロゴは、吹き出しを模した「レガシーシェイプ」に、「Whoscall」の「W」、人と人が手をつなぐ「コラボレーション&コミュニティ」、個人のエンパワーメントを表わすグラフィックを組み合わせている。
アプリの機能としては、スマートフォンが急速にAI時代に移行しつつある現状を踏まえ、よりビジュアルでわかりやすいインターフェースにデザインされている。詐欺対策アプリという一見、難しそうな要素に対し、少しでも親しみを持ってもらうため、今回は「Vee(ヴィー)」というキャラクターをデザインし、アプリを使用中、さまざまなシーンでユーザーに情報を伝える仕様となっている。
具体的な対策としては、電話番号の不審な挙動検知、SMSコンテンツ分析、検証済みユーザー報告、Linkリスク分析、画像コンテンツリスク分析などが実装され、これらの対策には、Googleが提供するGeminiも活用される。
また、Whoscallでは詐欺に遭遇したユーザーからの報告も活かす形で、対策する機能を実装しているが、個人データ保護やデータの匿名化処理の対応に加え、アプリ上で不要な権限を一切要求せず、各国のデータ保護の方針にも準拠させている。「Whoscall」は2024年現在、57の国と地域で利用され、ユーザーの報告件数は1年で950万件に上り、詐欺報告収集件数も1億3500万件に及ぶ。
より多くのユーザーが詐欺防止のために、さまざまな情報を報告できるように、報告内容や実績に合わせ、アプリ内で「Elite Specialist」などの称号を付与する機能も搭載されている。さらに、視覚障害などのハンデキャップを持つユーザーでも安心して使えるようにするため、詐欺電話や詐欺メッセージなどを発見した際のアラートを音声でも出力する機能も今後、用意される予定だ。
「シングル」に加え、「デュオ」と「ファミリープラン」を導入
「Whoscall」はiOS、Android向けに提供され、App StoreやPlayストアからダウンロードできる。「番号検索」や「URLチェック」などの機能が搭載された無料版のほかに、プレミアム版も提供される。知らない番号の識別、迷惑電話自動着信拒否、SMSアシスタントなど、スマートフォンをより安全に利用するための機能が数多く搭載される。
「Whoscall」のプレミアム版はこれまで月額350円で提供されてきたが、今回のリニューアルに伴い、開発コストなどを反映した新料金プランが発表された。これまでは1台のみをサポートする「シングル」が提供され、新しい料金プランでは月額490円、年額4600円で提供される。
これに加え、新たに2アカウントで共有できる「デュオ」が月額790円、年額7400円、5アカウントで共有できる「ファミリー」が月額1490円、年額1万4000円で提供される。従来プランで契約したユーザーの料金は据え置きになる。また、10月31日まではキャンペーン期間として、新規に契約するユーザーに対し、「デュオ」と「ファミリー」を30%オフで提供する。
さらに、詐欺対策が社会的にも課題となっている現状を踏まえ、同社では法人向けのサービスも提供される。企業が社員やスタッフに対して、福利厚生のギフトとして提供したり、消費者向けイベントや株主総会向けギフトなどで提供されることを期待しているという。
家族の詐欺対策は「合言葉とWhoscallでダブルチェック!」と京師美佳氏
製品紹介に続き、発表会では防犯アドバイザー&犯罪予知アナリストとして、各メディアでも活躍する京師美佳氏が登壇し、「自分や家族・周囲の大切な人を詐欺から守るには」と題したトークセッションが行なわれた。
京師氏は今回、リニューアルした「Whoscall」で注目した点として、ファミリープランと音声アラートを挙げた。
ファミリープランについては、自身の母親にスマートフォンを渡していて、そこに「Whoscall」をインストールしているが、自分自身のスマートフォンも自分名義で購入している状況を明かし、ファミリープランの登場により、家族みんなが保護できることをメリットとして挙げた。特に、高齢者については自ら契約することについて、「もったいない」と考えてしまうことも少なくないため、ファミリープランなら、子どもや孫からプレゼントして利用してもらって、安全に使ってもらえることが期待できるとした。
一方、音声アラートについてはハンディキャップの人々への対応はもちろんだが、仕事中に着信などがあってもスマートフォンの画面が見られないようなシチュエーションが少なからずあり、そういったシーンでも音声アラートであれば、運転中などでも慌てて出る必要がなく、「あとで見てみよう」と落ち着いた対応ができるとした。
詐欺の手口が巧妙化していると言われている中、注目している手口や動向があるかを問われ、京師氏は「やはり、これからはAIを利用したディープフェイク、詐欺のなりすましが増えていくことが予想される」とした。「たとえば、ディープフェイクで写真や声を生成し、お子さんやお孫さんになりすまして、オレオレ詐欺を仕掛けてくる動きが海外では活発化している」「実際に、海外ではハリウッドの有名俳優になりすまし、高額を送金してしまったケースもあり、そこでもディープフェイクが使われていた」とエピソードを交えながら、説明した。「こうした海外で流行った詐欺の手口は、日本にも少し遅れて持ち込まれるので、今後、気をつけていただきたい」と注意喚起を訴えていた。
詐欺の手口が高度化し、巧妙化する中、どのように対策を取っていけばいいのかを問われた京師氏は、「これまでも身近な人になりすまし、SMSなどのメッセージアプリから電話へ、LINEへと誘導するという手口が多いが、家族や身近な人との間については、アナログな方法だけど、本人かどうかを見分ける『合い言葉』のようなものが大事」だという。「それに加えて、Whoscallを組み合わせ、『ダブルチェック』で対策しましょう」と、トークセッションを締めくくった。
















