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Instagram、15周年を記念して今後の戦略を発表 AIを中心にクリエイティビティとつながりを拡張
2025年10月7日 18:59
Meta日本法人のFacebook Japanは、Instagramの15周年を記念し、今後の戦略や取り組みについて発表を行った。イベントでは、Facebook Japan代表取締役の味澤将宏氏がこれまでの歩みを振り返りながら、今後の成長戦略の中心にAIを据える方針を示した。
Instagram 15年の歩みと日本市場の重要性
Instagramは2010年10月6日、ケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏の2人によってiPhoneアプリとして誕生した。当時のスマートフォンのカメラ性能がまだ十分でなかった時代に、洗練されたフィルター機能やアプリ内で完結するスムーズなアップロード、他サービスとの連携のしやすさが支持を集めた。
2012年のFacebook傘下入り以降も、利用者の声を反映した開発文化を維持。2013年にDM機能「Instagram Direct」や動画投稿を導入し、2016年には24時間で消える「ストーリーズ」を追加した。気軽に投稿できるこの機能は、日本で特に高いエンゲージメントを生んでいるという。
2017年には「インスタ映え」という言葉が流行語になるなど、Instagramが人々の消費行動に与える影響は一気に大きくなった。ユーザーは、興味のある製品やサービスをInstagramで見つけ、購入し、さらに自身の投稿で発信するという行動が一般化し、これを受けてビジネスやマーケティングへの活用が広がっていった。
こうしたトレンドを背景に、Instagramは2018年にECサイトと連携したショッピング機能や、レストラン予約機能を日本でローンチ。翌2019年には、インフルエンサーやクリエイターの投稿を活用してブランドや広告主が広告を展開できる「ブランドコンテンツ広告」を発表した。
2020年の「リール」導入を機に、コロナ禍を経て本格的なクリエイター支援が始まった。これにより「クリエイターの民主化」が進み、誰もが既存メディアに頼らず作品を発信し、ファンと直接つながるコミュニティを築けるようになった。
Instagramでは、クリエイターがプラットフォーム上で収益を得られる仕組みを整えており、ライブ配信中に視聴者が投げ銭を送れる機能や、コンテンツをサブスクリプション形式で収益化できる仕組みなどが提供されている。2023年に登場した「一斉配信チャンネル」も、ファンとの距離を近づける新たなツールとして、多くのクリエイターやアーティストに活用されている。
Instagramは、自己表現とクリエイティビティを支えるプラットフォームとして、安心して利用できる環境づくりを重視している。2016年には、いじめや誹謗中傷への対策として、機械学習を用いたコメントフィルター機能を導入し、不適切なコメントを自動的に非表示にする仕組みを整えた。
特に2020年以降は、10代のユーザーの安心安全に力を入れている。2022年にはペアレンタルコントロールツールを導入し、保護者アカウントと子どものアカウントを連携させることで、利用時間やフォロー関係などを把握・管理できるようになった。
さらに2023年1月には、日本でも13〜17歳を対象とした「ティーンアカウント」が導入され、保護者がInstagramアカウントを持っていなくても、対象ユーザーには自動的に保護機能が適用されるようになった。すでに日本では対象年齢の全ユーザーに導入が完了しており、ペアレンタルコントロールツールとあわせて、安全で健全な利用体験の実現に貢献している。
現在、Instagramは月間アクティブアカウント数が30億を超え、世界有数のオンラインコミュニティへと成長している。日本はInstagramにとって、ユーザー数が大きいだけでなく、エンゲージメントが高く、新しい使い方が生み出されるという点で非常に重要なマーケットだと味澤氏は説明する。日本発の機能としては、QRコードによるアカウント交換(2019年導入)や、旅行・飲食店検索で使われる地図検索機能などがあり、いずれも後にグローバル展開された。
成長を支える「リール」と「メッセージ」
現在、Instagramの成長を牽引しているのは「リール」と「メッセージ(DM)」の2つの機能。利用時間全体のうち、リールが占める割合はすでに50%を超えており、視聴時間は前年比20%増と拡大している。
また、リールをDMで共有する回数は1日あたり45億回に達し、フォロワー全体よりも、親しい友人や家族とのクローズドなやり取りが広がっていることが分かる。
このトレンドを踏まえ、Instagramはモバイルアプリもホーム・リール・DMを重視したUIの再設計を予定しており、近くテストを開始する予定。リール視聴に最適化したiPad専用アプリも新たに公開された。
AIを軸に据えた次世代戦略
今後のInstagramの中核となるのはAI。Metaは大規模言語モデル「Llama」や「Meta AI」、AIスマートグラスなどの開発を進めており、InstagramでもAIによる体験向上が重点的に進められている。主な取り組みは、レコメンドの精度向上、広告効果の改善、クリエイティブツールの強化の3分野。
まずレコメンド分野では、AIによる精度の向上によって利用時間が前年比6%増加。今後は、ユーザーが興味の有無をフィードバックすることでAIが学習し、より好みに合ったコンテンツを表示する機能のテストも予定されている。
さらに、英語圏で導入が始まっている「Meta AI」を検索機能に組み込み、質問応答や要約などのエージェント的活用も視野に入れている。日本でも導入が検討中だという。
また、コンテンツの発見に検索が広く利用されていることを受け、一部の英語圏の国で既に実装されているMeta AIを検索画面に組み込むことが検討されている。これにより、検索精度が向上するほか、質問への回答、要約といったエージェントとしての活用が可能になる。日本でも、Meta AIの導入と同時に、この機能の導入が検討されているという。
広告分野では、AIによる自動配信機能「Advantage+」の導入が進み、広告費用対効果(ROAS)は平均3.71倍を維持。獲得単価も9%改善するなど、成果が見られている。
クリエイティブ分野では、「Restyle」や「Edits」などAI編集ツールの活用が進む。たとえば「Edits」では、屋外で撮影した動画をワンタップで水中風に変換するなど、直感的な編集が可能になった。
また、話者の声や口の動きを保ったまま言語を変換できる音声翻訳機能「Meta AI Voice Translation」も導入されている(英語とスペイン語に対応)。
フリューとのコラボが映すZ世代のトレンド
15周年を記念して、Instagramはプリントシール機大手のフリューとコラボレーションを実施。フリューのプリ機「EVERFIRM」で、Instagram限定デザインが2024年1月5日まで楽しめる。
フリューの榎本雅仁社長によると、2015年頃からプリユーザーの間でInstagramの話題が増え始め、2016年には「白縁の落書き」などInstagram投稿を意識した機能が搭載されたという。「インスタ映え」が流行した2017年以降は、SNS映えを意識した撮影体験が主流となった。
近年は、フィード投稿中心の「承認欲求」から、親しい友人と楽しむクローズドな共有へと移行。ストーリーズ投稿が中心となり、プリを撮ったユーザーの約8割がストーリーズで共有しているという。
榎本氏は、プリの価値について「理想の自分でいられることで自己肯定感を高められる存在」「自己表現の手段」「仲の良い友人とのつながり」といった点を挙げる。そのうえで、プリは本来もっと多様な価値を提供できるはずだと語る。今後は、プリで生まれる体験とInstagramでの共有をひとつの流れとして楽しめる世界を目指していくという。

















