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デザインツール「Canva」が日本でも成長、AIの活用とローカライズの取り組みをCPOのアダムス氏らが語る
2025年7月23日 18:56
Canva共同創業者兼CPOのキャメロン・アダムス(Cameron Adams)氏が23日、来日した。Canvaは、Web上でさまざまなテンプレートなどを活用しながらデザインできるサービスで、発祥のオーストラリアを中心に、グローバルでサービスを展開している。
Canvaのサービスは日本でも提供されており、日本法人が設立されており、日本ユーザーにあわせたローカライズやコラボレーションなどを実施する。
今回は、アダムス氏とCanva Japanカントリーマネージャーの高橋敦志氏から、同社の現況や日本における展開具合などを聞いた。
キャンベラ→東京に飛ぶ時間で約30万のデザインが日本で誕生
アダムス氏は、日本市場について「非常にエキサイティングな地域、過去2年間で驚くべき成長を遂げた」とコメント。同社の創業以来、日本ユーザーにより5億以上のデザインが作成されている。キャンベラから東京までの飛行時間(10時間)でおよそ30万のデザインが制作されているといい「信じられないほどの量、秒単位で生成されている」と指摘する。
世界では、毎月2億4000万人が利用している。アダムス氏は、創業当時のデザイン制作について「非常に複雑。設計には高価なソフトウェアが必要で、そのソフトウェアをどのようにして使用するかを学び、写真やイラスト、フォントなどをどのように入手するか調べる必要があった」と振り返る。実際に、プリントアウトしてアウトプットできるのは、ごく少数のユーザーだけだったとし、Canvaにより、この複雑なプロセス全体を1つのアプリケーションに組み込み、シンプルなものを全世界で展開したと話す。
Canvaのサービス開始から世界では300億を超えるデザインが作成された。月間アクティブユーザー数の2億4000万人の内2600万人が有料のサブスクリプションプランを契約、法人契約も増加しており、日本でも日本航空や日産自動車などが契約している。
地域に合わせてローカライズ
グローバルで展開しているCanvaだが、展開する地域に合わせてローカライズしている。
アダムス氏によると、Canvaの会社全体で約5000人のスタッフが各地におり、日本にも16人のスタッフが活動している。
日本で行ったローカライズの例として、ふりがな表示の対応が挙げられる。高橋氏は、「日本ユーザーが初めてCanvaにアクセスしても『これって日本のサービスなのかな』と思われるくらいにしたい」とコメント。
また、フォトストック「アフロイメージ」や「円谷プロ」、「いらすとや」といった日本ユーザー向けのパートナーシップも展開。高橋氏によると、Canva全体でも、日本の規模が世界トップテンにランクインしたという。
AIを活用したサービス
従来は、テンプレートや素材を組み合わせたデザインが中心だったが、近年はAIを活用したさまざまなサービスを提供している。
たとえば、デザインAI「Magic Studio」では、プロンプトを入力することで、文字ベースのデザインを簡単に作成できる。そして、そのデザインに一致した写真を探してきて、美しくレイアウトする。AIによって生成されたデザインは、このあと文章や写真などユーザーの創作物をインクルードすることで、ユーザーの創作物を完成させていく。
CanvaのAIの考え方として、アダムス氏は「社内で独自のAIモデルを開発する」、「最先端のAIモデルを統合する」、「ほかのAI開発者による作品をCanvaに統合できる優れたエコシステムを構築する」の3つの柱を示す。
Canvaが持っているデザインの知見や既存のユーザーインターフェイス(UI)と統合させるAIサービスを開発しつつ、外部の優れた最新のAIと連携し、独自のサービスを提供する。たとえば、テキストを生成するAIには、OpenAIと連携した生成エンジンを採用、動画を生成する機能では、グーグルと連携してサービスを提供している。
Time Savers AI
AIについてアダムス氏は「Time Savers AI」という言葉を挙げる。
デザインをするユーザーは、どこかでアイデアを思いつき、それを形にして、顧客に提供することに面白みを感じている。アダムス氏は、この流れをサンドイッチにたとえ、「最初にアイデアを思いつき、想像し、インスピレーションを見つける。そして、最後に新しい顧客を見つけ、発表するが、現実の世界には、アイデアから歓声に至るまで、必要な作業が中間にある。サンドイッチの間にある“やりたくない退屈なもの”が存在する」と説明。AIは、このサンドイッチの具の部分にかかる時間をAIが短縮し、ユーザーがやりたいことがより多くできるようになるとアダムス氏はアピールする。
アダムス氏は、日本の経営者の92%が、「デザイナー以外の従業員にもデザインスキルと知識を持つこと」を期待しており、ビジネスにおいてもデザインスキルの重要性が高まってきていると話す。また、日本の経営者の90%は「AIのおかげでビジュアルコンテンツの品質が向上した」と回答、82%が「すでにAIを活用したツールでコンテンツ制作を加速させている」と、日本市場でもデザイン×AIが普及してきていることが見える。
Canvaは、デザイン以外でもAIの活用を進めている。ビジネス上のさまざまなデータを集約するのに利用されているスプレッドシートだが、アダムス氏は「84%のユーザーがスプレッドシートのデータを定期的に扱っているにもかかわらず、65%のユーザーが実際にデータを扱うことに不安を感じている」と話す。
Canvaでは、AIを通じてスプレッドシートのデータを的確に分析できる「Canva Sheets」を発売した。視覚的な方法でデータを操作できるほか、デザインツールと統合して使用することもできる。たとえば、グローバル企業が世界のさまざまな地域に向けてSNSで発信したい場合、通常であれば各地域の言語それぞれの素材を作成する必要があった。この「Canva Sheets」を組み合わせれば、テキストの変数データをスプレッドシートで作成し、Canvaで作成したデザインに関連付けることで、すべての素材を瞬時に作成できる。
プロとの垣根を越えるツール
近年は、大企業での採用も進んでおり、プロのデザイナーに向けての取り組みも進めている。
2024年にプロ向けのデザインツールを展開するAffinityを買収した。Affinityでは、プロが行う写真編集ができるツールで、Canvaではできない編集操作が行えるとアダムス氏は紹介。今後、AffinityとCanvaを連携させることで、プロデザイナーと非デザイナーを結びつけるエコシステムを構想している。
また、Canvaは教育機関や教員、生徒に向けてCanvaのソリューションを無償で提供している。日本においても、授業における国語力向上や創造性の育成などに活用されている現場もあるほか、作品を制作するのが難しい学生にも制作できる機会を提供するなど、教育面での活用も進んでいる。
日本市場においても、SB C&Sといった法人向けにソリューションを展開するパートナーとの連携も進めており、今後はAIの活用とともに、日本ユーザーへのローカライズや法人向けへの展開を本格的に進め、日本市場での規模拡大を狙っていく。




















































