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論点は3つに絞られた、総務省「携帯料金タスクフォース」第4回

 26日、総務省で「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース(第4回)」が開催された。前回は非公開で、携帯各社からヒアリングが行われ、約1カ月ぶりに公開の場で議論が行われた。

 今回も出席した高市早苗総務大臣は、「利用者にとってわかりやすい料金、サービスの実現に向けて課題がハッキリしてきた。今回は論点を整理していく段階」と挨拶した。

3つの論点は「ライトユーザー/割引の見直し/MVNO促進」

 総務省側が今回示した検討課題、つまり論点は大きく分けて「利用者ニーズや実態を踏まえた料金体系」「端末価格からサービス・料金を中心とした競争への転換」「MVNOサービスの低廉化・多様化を通じた競争促進」という3つ。

 まず料金体系について、資料では「大手キャリアの料金はライトユーザーにとって割高になっていないか。シニアや子供以外のスマホライトユーザー向けプランはどう考えるか」と指摘する。これに全国地域婦人団体連絡協議会事務局長の長田三紀氏は「タスクフォースの大きな目的は、携帯電話料金の引き下げがあった。それほど使っていない人に見合ったものが必須。2020年に向けて、(全国各地で)Wi-Fiがあって、自宅に導入している人もいる。携帯電話の電波を使う必要がない、という人も多くいる」と述べ、利用が少ないユーザーに向けた配慮を訴える。

 長田氏は3点目の「MVNO促進」に絡めて、利用が少ないユーザーとのマッチングが進めば、と述べつつ、トラブル発生時への対応などサポート体制を拡充するため、MVNO事業者の共通基盤などを検討しなければ、これからさらに拡げるのは難しいのではないか、とする。これに野村総合研究所(NRI)上席コンサルタントの北俊一氏は「MVNOが安いのは、そうしたコストをかけていないから、という面もある。価格面で既にMVNOは厳しい競争に入っている」と述べ、格安SIMとサポートという関係の難しさを示す。

販売奨励金に規制?

 あわせて26日に示された資料で、諸外国における販売奨励金の現状などが紹介され、日本だけMNP(携帯電話番号ポータビリティ)で端末を買いかえると、ユーザーは端末代金を負担するどころか、キャッシュバックや商品券などによってむしろ収入になっていることが明らかにされた。

 既に大手キャリアの幹部からは、「行き過ぎは是正する」との姿勢が示されているが、各社が競争していくなかで、行き過ぎたキャッシュバックなどが発生しないよう、事業者団体の取り組み、あるいは行政からの働きかけをどう整理すべきか、という論点が挙げられている。

 これに立教大学名誉教授の舟田正之氏は「販売奨励金そのものに規制をかけるのは難しいかなと思っている」とコメント。事業者間の取引に行政が立ち入ることの是非も当然のことながら、実際に規制することが可能なのか、実効性にも疑問がある、とする。

 これに対して、弁護士の森亮二氏は、行政が市場に対してアクションを起こすことは、これまでの通信市場の歴史を踏まえると望ましくない、としつつも「期間拘束なども絡みあって、料金がシンプルになると何が得になるか、わかりやすくなるのではないか」と指摘。また中央大学総合政策学部教授の平野晋氏は「行政からの働きかけはまだ時期尚早だが、打ち出していかなければならない。ただ、カルテルなどに抵触しないよう慎重にやる必要がある」として、今後の課題に挙げる。

「型落ち機種0円」がもたらす悪循環

 また韓国では、法令によって3年間という期間限定ながら、2014年10月から奨励金に上限が設けられた。その結果、同じ機種・同じ料金プランであれば、どの店でも端末代金は同じになり、MNPと新規契約が減少する一方、機種変更の割合が増加した。いわば携帯電話会社を乗り換えるケースが少なくなった、とも言える状況だ。

 奨励金の規制により、携帯電話業界の競争も締め付けられるのではないかという資料だが、NRIの北氏は「日本ではMNPによる顧客獲得が年間500万件と言われているが、そのうち、どれだけが他のキャリアに不満があって乗り換える、あるいはサービスで選ぶ“真水のMNP”なのか」と指摘し、奨励金につられてMNPするユーザーが大半ではないか、と推測する。

 総務省からは、いわゆる型落ち端末に対する奨励金への考え方も論点の1つに挙げられており、「型落ちの値段を調べると一括0円。MNPしたほうが絶対にお得という行動を誘発する」と北氏。

 その上で北氏は、「なぜ日本では、そこまで安く携帯電話が販売されるのか」とその背景を以下のように説明する。

北氏
「かつて、大手キャリアはODMでオリジナルの端末を調達した。フィーチャーフォン1機種で50万台、100万台売れ、なかには500万台売れたものもあった。こうした仕組みでは、キャリアが一括で調達して代理店に割り振る。しかし半年経過すると、次の機種が登場して、型落ちになる。粗利を削ってでも、代理店は在庫を一掃してきた。その感覚がスマホ時代になっても残っている」

 「新品のiPhoneが実質0円で売られており、在庫になった機種をさばくには、マイナス(キャッシュバック/商品券/ポイントなど)に行くしかない。もとをただすと端末の調達数が過度。おそらくアップルからは、(キャリアに対して)非常に多くのiPhoneを売ってくれ、ということになっていると思う。iPhone 6なら、今、MNPで一括0円でキャッシュバックというケースがある。そうなると、それ以外の機種は、もっと価格を下げないとさばけない。ここを変えない限り、端末が余ってしまう。型落ち端末への補助金をどう考えるかはすごい問題。売り切れる端末数を調達するのが正しいがなかなか難しい。妙案はない」

大手キャリア、MVNOにデータベース開放へ

 会合の締めくくりとして高市大臣は「踏み込んだ議論になった」と評価し、論点の3番目であるMVNO関連の分野について、今年6月に閣議決定された日本再興戦略において、「大手キャリアの顧客システムをMVNOに開放することで、事業者間協議を促し、検討を進める」という方向が打ち出されていることを紹介。もし大手キャリアのシステムとMVNOのシステムが連携できるようになれば、MNPや新規契約でMVNOのサービスを利用する場合、開通までの時間が短縮できる、あるいはMNP予約番号をすぐ発行できるといったことが可能になるという。

 次回会合の日程は未定だが、事務局ではとりまとめに入る見込み。

高市大臣

関口 聖