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ドコモ決算、スマートライフ好調も通信減収で増収減益 26年度反転へ「変革の年」

 NTTドコモは、2025年3月期決算を発表した。通期売上高は6兆2131億円で前年比1.2%増、利益は1兆205億円で10.8%減の増収減益だった。当期利益は7185億円で前年比9.6%減だった。

NTTドコモ 前田社長

ARPUやMNPは増加傾向、25年は変革の年

 スマートライフ事業で金融決済やM&A、法人ソリューション事業などの成長分野で2000億円超の増収を実現。営業利益は、コンシューマー通信で減収したことや他社対抗コストなどがあり減益。スマートライフ事業が好調なことで、通信領域の減収はカバーしたが、利益は前年度を下回った。

 2024年度下期にはMNPがプラスに転じた。モバイル通信ARPUは3940円。当初目標には10円届かなかったが、第1四半期を境に改善傾向が続いており、今後も成長継続を目指す。2025年度は通期で3970円を目指す。旧プランから現行プラン「eximo」への移行率は第4四半期時点でも60%以上を保った。

 金融関連では、クレジットカードの「dカード PLATINUM」の会員数は5日時点で60万超。3月時点でのマネックス証券のdカード積立決済額は、2024年8月比で約5倍に伸長した。これらにより、金融サービス全体で収益が伸び、収益は4483億円となった。2025年度はARPU改善の取り組みを継続。6月には新プラン「ドコモ MAX」などの提供が始まる。新たなプラン「ドコモ mini」でARPU改善が見込まれる。ドコモ MAXでは、スポーツのほかにも「アイドル」や「アニメ」などバリューの拡大も検討する。

 2025年度の業績予想としては、売上高は2024年度比2%増の6兆3360億円、利益は9660億円で同5.3%減を見込む。2025年度は、2026年度以降の成長に向けた「変革の年」として、減益を見通している。

 マーケティング戦略では、モバイル通信サービス収入を25年度~26年度にかけて反転目前まで引き上げる。あわせて顧客獲得と販促費の効率的な運用を実現する。ネットワークでは、通信品質強化への投資を継続。さらに、ネットワーク構築プロセスを抜本的に見直し、2026年度の基地局の投資単金を低減し、2027年度にかけてネットワーク投資を300億円規模で効率化するとした。スマートライフ事業と法人事業では成長を継続させる。

エンタメ事業・法人向け事業では

 エンタメ事業では、オリジナルコンテンツのIP開発などでファンを増やすとする。配信や興行で収益化を図り、収益拡大を目指す。マーケティングソリューションでは、インテージと連携し、マーケティングDX支援を中心に収益が伸びた。売上は1724億円で2025年度は1850億円とさらなる成長を目指す。

 法人向け事業では、DX需要により大企業向けソリューションは2ケタ成長だったが、モバイルの競争激化で中堅中小企業向けは想定を下回った。2025年度はICTインフラや「IOWN」実装のICTプラットフォーム、ワンストップ提供のDXインテグレーションなどで、競争力のある新サービスを投入するとした。また、IoTやAI、デジタルBPO、地域DXなど成長分野を強化することなどで、2兆円規模の売上を目指す。

質疑応答

――通信品質の受け止めを聞きたい

前田氏
 (品質は)向上している部分はあると思います。Opensignalの5Gダウンロード速度やカバレッジでは評価をもらいました。ただ、全体的には他社が上回る結果になっております。現時点で、他社を上回る状況かというと、必ずしもそうではないと思います。しっかり投資もしていきますし、(品質は)向上させます。

 一定の時間がかかることは事実。そのなかでどういうふうに取り組んでいくべきかわかってきた部分もあるので、なんとか(品質を)向上させていきたいです。他社との差という意味でいうと、サブブランドも含めて通信品質ではそこまで乖離しているレベルではないのでは、と思っています。しっかり(対策を)進めていきたいと思います。

――衛星との直接通信は?

前田氏
 2026年夏にはサービス開始の目処が立っています。HAPSについては2026年度内に商用サービスしたいということで実験を繰り返しています。課題もありますが、そこに向けて努力したいと思います。KDDIが先行していることは事実なので、(衛星通信は)確実に2026年のサービス開始に向けて準備を進めます。

 災害対策は、必ずしも衛星の直接通信だけではないと思います。Starlinkをバックホールにする考え方もありますし、やれることを取り組んでいきカバーしていきます。

――通信収入は26年度以降に反転とのことだが、根拠は?

前田氏
 ひとつは2024年度からの顧客獲得をしっかりやっていくこと。正直、2023年度までは他社と比べて販促コストの額が低かったと思います。(他社に)取られ放題になりますから、2024年度は戦略的にコストを掛けてきました。結果、下期はMNPは反転しました。この流れを続けていきたいと思います。

 人口も減少しますので、顧客数はMNPを均衡させるだけでは(維持が)難しいので、若干でもプラスにしてハンドセット純増をプラスにしていきたいと覆います。ARPUは第1四半期で下げ止まりました。ポイントや金融決済などのバリューで、なるべくハイスペックな料金プランを選んでもらえるようにしており、全体のARPUが上がってきています。新料金プランでさらに流れが加速すると思います。これらの掛け合わせで2026年度には下げ止めの状況を作りたいと思います。

――銀行機能の獲得は今回決算までに、ということだったが現状は?

前田氏
 3月までに目処をつけたいと言っていましたが、なかなか叶わず残念。正直申し上げて、現時点で何も決まっておらず、あらゆる可能性を探っています。銀行の必要性への認識は全く変わっていません。市場としては金利も上がり、銀行機能を取り込むことでのビジネス拡大のチャンスはあると思います。

 ユーザーに対して提供できる金融サービスの幅も広まりますし、我々としてもユーザーからお支払いいただく場合や我々がパートナーに支払う場面でも、銀行機能の有無でやりやすさが代わります。あらためて、なんとか頑張って進めたいと思います。

――「ドコモ MAX」はDAZNが不要という声もある。シンプルな使い放題プランは検討しないのか?

前田氏
 バリュー軸でサービスを提供するというふうに転換させていきたいです。ユーザーに選んでもらわなければ意味がないのはもちろんですが、経済状況も含めてコストが増えていることは事実です。できる限りユーザーに対価を払ってもらえるようなサービスを提供するという方向に持っていきたいと思います。

 通信だけではなく、通信の上の価値でどう差別化していくかで、差別化されたドコモのサービスを楽しんでいただけると思いますし、それによって競争上、優位に立つということを目指していきたいと思います。

 いろいろなところでわかりにくいという評価もいただいていますが、我々も通信だけではなく、いろいろな事業をしているなかでセットでサービスを提供することでメリットを提供すべくこういうかたちにしています。eximoでは、半数のユーザーに割引がすべて適用されており、90%のユーザーにはなんらかの割引が適用されています。

 ドコモ MAXに上乗せした価値は、料金と比較すれば決して高いものではないと思います。これからもこの路線でやっていきたいです。

――他社はサブブランドも値上げしている。ahamoはどうなるのか

前田氏
 いろいろ考えたいとは思っています。(既存プランは料金等の)前提をもって加入してもらっています。それを変えるのであれば、コミュニケーションを取らなければいけません。あらためてじっくり検討したいですが、古い料金プランが残っていることは事実なので、整理していく必要があると思います。

――「ドコモ mini」は「irumo」からかなり容量を整理している。MNP獲得にマイナスにならないか?

前田氏
 irumoの0.5GB(終了は)、顧客獲得で短期的には影響するかもしれません。しかし、新規加入で0.5GBプランを契約したユーザーは半年以内に移行されています。そこにコストをかけることに意味がなくなっています。ユーザー数は増えもしないけど減りもしないということになるので、あまり影響を及ぼすことはないでしょう。

 irumoの容量を超えるユーザーが多く出てきているので、全体的に容量を増やしているほか、割引を増やし低廉な料金を設定しているので、競争力はあると思います。