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ドコモの甲子園球場ツアーが極めて希少な体験だった――「未来フィールド」帯同レポ

 22日、NTTドコモの招待制イベント「ドコモ未来フィールド」が阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)で開催された。

 「ドコモ未来フィールド」は、子供たちが“プロのセカイを体験できる”と銘打った取り組み。これまでに井上尚弥選手と大橋ジム、NHK交響楽団、サッカーの大宮アルディージャなどで体験・見学ツアーが開催されてきた。

 17回目となった今回、通常の甲子園球場のスタジアムツアーでは立ち入れない場所を訪問できるなど、プロ野球ファンならずとも魅了される、希少な内容となった。

 参加したのは、子供と保護者といった30組60名。北海道~沖縄まで、全国から寄せられた約3000組の応募から、倍率100倍の抽選を経て現地に集った。当日午前は球場内部のスタジアムツアー、その後、プレミアムラウンジで昼食を採り、午後には阪神タイガースOBも参加する野球教室を楽しんだ。

普段は立ち入れない一塁側ブルペンへ……

 集合した一行がまず案内されたのは、なんの変哲もない廊下……と思いきや、実は、スタッフのみならず、選手が行き交うところ。

 その場でツアーガイドから、100年を迎えた甲子園球場の歴史、“甲子”の由来などが解説される、1カ所、タイガースのロゴが格子状に配された場所が紹介される。

 実はここ、試合後に選手がインタビューを受けることもある場所だという。ツアーの一環として、参加者はすかさず記念撮影タイムに入り、開始早々、盛り上がることに。

通路の一角で撮影大会に

 続いて訪れた場所は、ブルペンと呼ばれる球場内の施設。プロ野球好きなら球団などの映像コンテンツで目にした事があるだろうスポットであり、投手が登板前に練習し、本番に向けて整えていく場所。

捕手側から見たブルペン。一塁側の施設だ

 普段、甲子園球場では、隣接する甲子園記念館が提供するスタジアムツアーでアクセスできるブルペンは、3塁側にある。つまり、甲子園を訪れたビジターチームが利用する場所だ。

 しかし、「ドコモ未来フィールド」のツアーで訪れたのは1塁側。つまりホーム側であるタイガースの投手たちが利用するブルペンであり、それも、普段のツアーではNGとされるマウンド上にも入ることが許可されていたのだ。

 タイミングによっては、甲子園記念館のツアーでも、1塁側ブルペンを2階の窓から見学できるそうだが、「ドコモ未来フィールド」はプレミアムな体験の提供をコンセプトにしているとのことで、球団側とドコモ側とが開催に向けて検討を続けるなかで、1塁側ブルペンへの入室とマウンドへの立ち入りが実現した。

 実際に足を置いてみると、想像していたよりも固く感じる。スタッフによれば、ブルペンとグラウンド上のマウンドだけは米メジャーリーグと同じ土を用いており、固さもメジャーと同等にしている。これは選手たちの要望を踏まえて数年前に導入されたものだ。

メジャーリーグと同じ土、固さに仕上げられたマウンド

 参加者たちは、子供のみならず、保護者もマウンドに立ち、ここでも記念撮影。写真を彩る小道具や、選手が身につけるものと同じユニフォームが用意され、プロ野球選手の気持ちを感じられる場面となった。

小道具も用意

一塁ベンチの座り心地

 一塁ブルペンを味わった後、参加者はついに甲子園球場のグラウンドへ足を踏み入れる。取材中でありながら、選手と同じ目線で見る甲子園球場の大きさや美しさに目を奪われてしまう。

 参加者たちも当然、グラウンドから観る景色に心を踊らせた様子で、ここでももちろん記念撮影。ツアーで許可されているのは、観客席に近いゾーンに敷かれた人工芝だけで、天然芝の外野側や、“甲子園の土”のある内野側には入れない。

 スタジアムツアーとしては、グラウンドに立って終わりではなく、1塁側のベンチへ入れる時間が設けられた。ホーム、つまりタイガースの選手、首脳陣が利用する場所であり、「ああ、ここで監督が試合を観ていたな……」「選手たちがここから身を乗り出していたぞ」と、より一層、感慨深くなる。

一塁側ベンチ

 そこへ、ツアーガイドは、箱に入った“甲子園の土”を披露し、実際に触れられるようにしてくれた。天然芝とのコントラストが印象的な黒みの強い色合いで、触ってみると、サラサラした感触。参加者の子供たちも同じように感じたようで「サラサラだ!」と口にしていた。

甲子園の土に触れる
ホームベース、実は厚みがあり、しっかりと埋められていることも解説

 ベンチには、モニターが配置されており、ここからブルペンの様子をチェックできる。投手を交代させるときには、モニターのすぐ横に用意された電話で連絡する。ちなみに、ベンチ内でモニターとは逆側の場所に掲げられていたのは「阪神甲子園球場グラウンドルール」。ファウルなど“ボールデッド”と判定される基準が示されている。

 硬そうなベンチに座ってみると、その見た目に反して、ややクッションが効いた印象を受けた。また、ベンチ前面は柔らかめな素材であり、サヨナラで選手たちが飛び出す場面をつい思い出してしまう。

 ここまでで約2時間。昼食は、プレミアムラウンジという場所でのビュッフェだ。プレミアムラウンジは、90万円程度のプレミアムシートの年間予約席などを利用し、さらに1席あたり約40万円を支払って利用できる場所。ちなみにプレミアムラウンジでのカレーは、甲子園球場の名物としても知られる球場内のカレーと同じものだとか。

あの人気OBたちがやってきた!

 昼食後、「未来フィールド」で用意されたのは野球教室。阪神タイガースアカデミーのコーチ陣がバッティング、ピッチングをレクチャーしてくれるというもので、さらに今回は阪神OBである糸井嘉男氏と今成亮太氏が登場。

さっそうと登場する今成氏と糸井氏……だが、糸井氏は松葉杖を手にし、参加者は驚きの声を挙げた
まずは挨拶
2人が自身の人生を浮き沈みを振り返って紹介

 引退後もメディアなどを通じて活躍する両氏が、アカデミーコーチとともに2時間、子供たちに「打つときには体を倒さない」「グリップはこう持って」などとバットの握り方から、スイングのフォームまでつきっきりで指導。ピッチングは主に、阪神OBでもある歳内宏明アカデミーコーチが教えてくれるという内容だった。

まずは準備運動

 しかも野球教室が開催された場所は、球場すぐ横にある屋内練習場。当然、一般には開放されていない場所。さらに野球教室も2時間という、そこそこの長丁場。参加者のひとりである、るなさん(12歳)は「練習が一番楽しかった」と回答。野球を習い始めて1年ほど、というるなさんは、今成氏からも「いいね!」と声を掛けられていた。

屋内練習場

 神奈川県横浜市から来たという、あつやさん(12歳)も普段から軟式野球をプレイしており、今回、今成さんからの「バッティングでもうちょっと前で打とう」という技術的な指導が一番印象的だったそう。一度限りの野球教室とはいえ、具体的な改善ポイントまで示し、ここもまたプレミアムな体験となったようだ。

プレミアムな体験目指し

 かねてよりドコモでは、絵画コンクールなどを実施してきたが、2023年夏に「ドコモ未来フィールド」をスタート。今年で3年目を迎え、初めてプロ野球を題材とした回を開催した。

 ドコモは、ほかの企業では実現できない、プレミアムな体験を目指して「ドコモ未来フィールド」を推進。今回のパートナーである阪神タイガースには協賛しており、一緒にできることを探すなかで検討が進んだ。

2時間の練習を終えて最後に挨拶

 普段選手が歩く通路を経由してブルペンに行く、といった経路を設定することも調整が難しい場面があったそうだが、その通路だけは撮影NGにすることで実現させるなど、互いにアイデアを出し合い、内容が固まっていったという。

集合写真などがプレゼントされ、コーチらとハイタッチして会場を去る

 将来なりたい職業としてさまざまな「プロ」の様子を垣間見せる未来フィールドは、ドコモにとって社会貢献活動の一環。とはいえ、ドコモ回線の利用者が応募できるようになっており、参加者がドコモに対して親しみを持つようになってくれれば、解約率の低減など事業への貢献も見込める。

 現在も複数のイベントへの参加を募っているが、今回のような甲子園球場での催しの第2回開催に期待していいのかという問いに「来場直後は表情の硬かったお子様も、(野球教室を経て)今はすごく楽しんでいる様子。プロに実際レクチャーしてもらうという体験は得難いですよね」と前向きな様子。いつの日か開催されることに期待したい。