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LINEで贈れる「LINEギフト」、“相手ありき”の機能で伸長する配送ギフトのしくみとは
2024年8月20日 18:15
LINEヤフーが展開するギフトプラットフォーム「LINEギフト」は、新型コロナウイルスの影響下で急成長している。特に、店舗で利用できるギフト券形式よりも、商品を配送で贈る形式が大きく伸長しており、同社もこの配送ギフトを中心に、サービスのインターフェイスや出店ブランドへの働きかけなど取り組みを行っている。
今回、LINEヤフー 執行役員 ソーシャルコマース統括本部長の嘉戸彩乃氏が、LINEギフト成長のポイントや、今後の成長戦略などを説明した。
LINEユーザーの5人に1人が利用
国内のギフト市場について、国内の市場全体では2024年に11兆円を超える市場規模があり、コロナウイルスの影響があった2020年から年々伸長傾向が見られる。
贈り物の種別を大きく3つに分類すると、取引先や福利厚生として贈る「法人ギフト」と、誕生日やクリスマスに贈る「カジュアルギフト」、お中元やお歳暮、出産祝いなどに贈る「フォーマルギフト」に分類される。LINEギフトでは、主に「カジュアルギフト」と「フォーマルギフト」の2点を事業領域としている。嘉戸氏によると、カジュアルギフトが伸びる一方フォーマルギフトが割合を落としているという。理由の1つにはコミュニケーションのあり方が変わってきているのではないかと推察する。
LINEギフト自体の数字をみると、2015年のサービス開始から累計で3500万人が「贈る」「受け取る」など何らかの形で利用している。直近のアクティブユーザー数では、2023年度に利用したユーザーは約1900万人。LINEアプリのアクティブユーザー数が約9700万人であるため、LINEユーザーの約5人に1人がLINEギフトを利用している計算になる。
年間流通総額は、2023年度は前年度比で+29%成長、2024年度の第1四半期は前年同期比で+42%となっている。嘉戸氏は「1000万人規模のコマース市場で、ここまで成長しているサービスはあまりないのでは」と、成長に自身を見せる。
LINEと密接に関係したサービス
LINEギフトでは、LINEの友だち同士であれば、商品と宛先を選択し、メッセージカードを送るだけで相手に商品を届けられる。配送ギフトであっても、相手の住所を知らないままでも送付することができる。
ユーザーの内訳について、嘉戸氏は「6割が女性で、20~30代のユーザーが中心」とコメント。一方、母の日や父の日に子供から親に贈り物をするケースも増えており、受け取り側になる40~50代のユーザー数も増加傾向にあるという。
先述の通り、LINEギフトには店頭で利用できる引換券を贈る「eギフト」と、相手の住所に商品を直接配送する「配送ギフト」の2つのタイプがある。2023年度の数字では、全体の39%が配送ギフトだが、年々伸長傾向にあり、特にクリスマスなど季節ごとのイベントでは、配送ギフトの割合が増えている。
LINEギフトでは、約1500のブランド/ショップから、約40万商品をラインアップしており、同僚や部下へ感謝のギフトから誕生日のお祝い、クリスマス、バレンタインなど日常的な利用、母の日などシーズナルイベントでの利用までさまざまなシーンで利用できる商品がラインアップされている。
日常的な利用の中では、誕生日ギフトが全体の74.7%と圧倒的な数を占めている。一方、母の日などシーズナルイベントでは、イベント当日に利用が急増する。嘉戸氏は、「母の日や父の日は、その年によって日付がバラバラになっている。LINEアプリでイベント当日に気づき、その日にLINEで相手に気持ちを届けることができるために重宝されているのでは」とコメント。通常、イベントに合わせたギフトは、当日から3~4営業日前までに手配しなければならないが、LINEギフトでは、手配と同時にメッセージカードをLINEで送れるので、当日でも間に合うLINEギフトにイベント当日の利用が集中しているようだ。
“相手ありき”のサービス
LINEでは、送る相手もLINEユーザーであることを利用して、“はずさないギフト”を贈れるような機能が用意されている。
たとえば、ギフトでよく利用される商品にメイクアップ商品があるが、利用するユーザーの好みや肌質などでさまざまな色や種類が用意されている。LINEギフトの一部商品には、ギフトを受け取ったユーザーが種類を選択できる商品が用意されており、相手の好みがわからなくても安心してギフトを送れる。
また、刻印ができる商品では、刻印する文字を相手が指定できる機能もある。たとえば、出産祝いなどで、生まれてくる子供の名前がわからなくても、相手にギフトを送れる。
商品の見せ方にも工夫
また、LINEギフトのサービス画面では、贈るシチュエーションにあった商品をあらかじめカテゴライズして表示させている。ギフトを贈るユーザーのなかでは、「何を贈るか決めずに来訪する」ユーザーが多く、LINEギフトのサービス内でシチュエーションにあわせた商品を提案し、そのまま購入して相手に贈る流れを形成している。
サービス画面では、季節に合わせたシチュエーションの提案や、世の中のトレンドに合わせたテーマを設定して提案している。また、「パートナー」や「両親」など贈る相手にあわせてタグ付けしているものもあり、ユーザーが贈りたい相手やシチュエーションにあわせて、プラットフォーム内で商品を決められる工夫が施されている。
これらの取り組みの影響か、LINEギフトでは、訪問してその場で購入するユーザーが多いという。ほかの商品やECサイトと比較検討することなく購入に至るケースが多く、自社のECサイトを持っているブランドであっても、牌の奪い合いになるようなことがない。
また、ギフトを選ぶ中でそのブランドを新たに発見してもらえたり、ギフトを贈る受け取るといった“ポジティブな体験”で商品が活用されることで、出店企業のブランディングにも寄与すると嘉戸氏は語る。
独自ギフト商品の開発も
一部の出店企業に対して、同社が担当を付けて“見せ方の工夫”や“独自商品の開発”などを進めることもある。
たとえば、出店企業の1つ「にしき食品」では、当初レトルト食品のパッケージ写真を掲載していたものを、贈った相手が喜ぶシーンをイメージしやすいように、調理後の写真をメインに掲載することで人気商品に成長させることができた。
また、ブランド化粧品を展開する「日本ロレアル」では、ギフト需要で売れやすい「3000~5000円」に収まるギフト用商品を開発。ボトルに誕生日メッセージを入れるなど、誕生日イベントを意識した商品を開発したところ、通常版と比較して月平均7.7倍の売上規模になった。
ブランドの知名度向上にも寄与している。洋菓子を扱う「シュゼット」では、これまで対面販売が中心だったところ、eコマースでのカジュアルギフト需要が得られたことで、「新たな販路や需要が開拓できた」(シュゼット DM・広域営業部 部長の竹内紘基氏)という。
よなよなエールなどを手がけるヤッホーブルーイングでも、ファンからクラフトビールをよく知らないユーザーに贈ってもらうことで、クラフトビールの裾野を広げてもらうなど、“ファンコミュニティ”拡大に寄与しているとしている。
EC事業への進出、前年比130%以上の成長を連続達成へ
今後の注力テーマとして、嘉戸氏は「多様なシーンにあった商品を開発」「パーソナライズ機能の拡充」「個人間ギフトの利用シーン拡大」の3つに注力していくと説明。一方、商品数の拡大については「(売れる商品という観点では)上位のものに売上が集まっている。いかにギフトにあった商品を展開していくか、商品の中身が大事」(嘉戸氏)と考えを示した。
事業目標として、流通額を今後5年間「前年比130%以上」と継続した成長を目指す。また、利用者数や1利用者あたりの利用回数、単価をさらに拡大させていくとしている。
加えて、LINEアプリに「ショッピングタブ」を2024年度中に新設し、LINEとしてEC事業へ挑戦する方針も示された。すでにECサイトを持つヤフーやZOZO、PayPayといったグループ内のシナジーを活用し、LINE視点のショッピング体験の提供を目指す。