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総務省、競争ルールの検証報告書2024案を公開――NW利用制限の原則廃止やミリ波端末は約6万円まで割引可能など

 総務省は、競争ルールの検証に関するWGにおいて取りまとめた「競争ルールの検証に関する報告書 2024(案)」を公開した。また、同案に対するパブリックコメントを6月22日~7月22日まで受付する。

総務省、「競争ルールの検証に関する報告書 2024(案)」を公開

 同WGでは、2020年から継続してモバイル市場の競争に関する評価・検証を行っており、これまでに2019年10月に「競争ルールの検証に関する報告書 2020」を、2021年9月に「競争ルールの検証に関する報告書 2021」を、2022年9月に「競争ルールの検証に関する報告書 2022」、2023年9月に「競争ルールの検証に関する報告書 2023」を公開した。

 新たに公開した「競争ルールの検証に関する報告書2024(案)」では、中古端末を含む端末市場の更なる活性化、モバイル市場の競争を促進させるための実効性の高い対策、モバイル市場の競争促進に資する対策の3点に、集中的な検討が行われている。

ネットワーク利用制限の原則禁止

 報告書案では、ネットワーク利用制限を原則として禁止することが適当とした。ただし、犯罪などを抑止するために必要最小限の措置としてネットワーク利用制限を行う場合、キャリア間で対象となるIMEI(端末製造番号)を共有し、現在のように「ネットワーク利用制限の対象キャリアのみ利用不可」とするのではなく、他キャリアに乗り換えてもネットワークが利用できないようにするなど、実効性を伴う措置が必要としている。

ネットワーク利用制限の件数(RMJ発表)

 また、ネットワーク利用制限のみで犯罪などを防ぐことは困難であるため、本人確認の強化や与信審査管理などを適切に行っていく対策などが重要としている。

郵送下取りがキャンセルできない問題への対応

 通信事業者による下取りサービスでは、通信事業者に下取り端末を郵送する場合、利用者の希望通りに良品として下取りされる場合も、そうでない場合もキャンセルできない点は課題であり、早期に運用を改めるように報告書をまとめている。

 なお、各社の今後の対応については、NTTドコモが2024年4月に対応済み、KDDIは通常品以外の査定となった場合に秋頃を目処に対応予定(前倒しも検討する)、ソフトバンクは2024年度中に郵送下取りの申込後キャンセルを対応予定、楽天モバイルは査定金額の確定後のキャンセルについて、2024年3月から1年以内をめどに改善すべく検討・準備を進めていると回答した。

郵送下取りがキャンセルできない課題への各社の対応

ミリ波対応端末の普及促進

 5Gで用いられるミリ波帯は、増加し続けるトラフィックへの対応や、5Gの特長を活かしたサービスを実現するにあたって重要だが、2023年通期のスマートフォン出荷台数に占めるミリ波対応端末の割合は5.2%で、順調に普及しているとは言い難い状況にある。

 こうした状況を打開し、ミリ波対応端末を普及させることを目的に、ミリ波対応機種については、割引上限額を1万5000円緩和することが適当とした。

ミリ波対応機種は割引制限を緩和

 端末割引上限は、原則として4万円(税込で4万4000円)までに定められるため、ミリ波対応機種については5万5000円(税込で6万500円)までの割引を認める方針が報告書で示されている。

 割引上限を1万5000円緩和する根拠は、ミリ波対応端末と非対応端末の同機種の価格差の平均が約1万7000円であることを踏まえ、この価格差をミリ波対応による端末販売価格上昇分とみなしたという。

 ただし、現行制度ではいわゆる「転売ヤー」や、「1円端末」などの問題を予防するために、ミリ波対応端末であっても、割引上限は対照価格の50%を超えないようにすることが適当としている。

 さらに、今回の措置はミリ波対応端末の普及促進を目的にしているため、ミリ波対応端末が50%を超えた場合にはこの特例を終了することが適当としている。

端末購入プログラムにおける「買取等予想価格」の問題

 端末購入プログラムの適用にあたっては、その端末に対する買取価格を予想し、総務省に提出した上でWebサイトなどで公表することが義務付けられている。買取予想価格は、事業者が自主的に予想するもので、予想価格が適切に算出されることが重要であるが、算出方法が異なることもあり、同一機種でも通信事業者によって予想価格が大きく異なっている。

 報告書では、「特に一部事業者の予想価格が他キャリアより高い」と指摘しており、それを理由に、月額1円・合計24円の支払いで販売されるほか、他の事業者もこれに追随して予想価格の算出方法の変更を行い、当初予想よりも高い予想価格を算出するなど、電気通信事業法第27条の3に定められた趣旨にあわない販売が行われていると問題視されている。

 こうした問題から、端末購入プログラムの予想価格の算出方法について、運用ガイドラインである程度統一することが適当とした。報告書では、具体的に(1)端末の販売価格×(2)残価率×(3)その他考慮事項で算出することを提言している。残価率は、販売時点からnカ月後の中古端末事業者の買取平均額を元に、発売からnカ月後の買取平均額を、販売当初の販売価格で算出することが適当とした。

残価率の算出式

 なお、現時点では(3)のその他考慮事項は想定されないため、原則として端末の販売価格×残価率による算出が適当とした。

 また、買取等予想価格の根拠としては、フリマアプリなどでの個人間取引における取引価格ではなく、中古端末事業者の買取価格など、取引実態に即した価格を参考とすることが適当としている。