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YouTubeのキーパーソンが語る、音楽×AIの取り組み

 YouTubeは21日、「YouTube Music AI インキュベーター」について、日本国内でもプログラムを開始したことを発表した。YouTube Music AI インキュベーターは、YouTubeがAIを活用し、音楽業界を活発化させるための取り組みの一環として展開される。

 「アーティストやそのファンの人々にとってYouTubeが最も素晴らしい場所になるまで、努力を続けていく」――こう語るのは、Google & YouTube音楽部門のグローバル責任者を務めるリオ・コーエン(Lyor Cohen)氏だ。

コーエン氏

 2017年にコーエン氏が来日したとき、日本国内におけるトップ50のアーティストのうち、YouTubeで音楽の動画を公開しているアーティストは半分にも満たなかったという。

 「2019年にはこの数字が80%になり、今ではなんと100%になった」とコーエン氏は胸を張り、「デジタルによる変革で日本の音楽市場が大きなダメージを受けるのではないかと懸念されていたが、CDの売上もデジタルの売上も伸びている」と続ける。

 グローバルで活躍する日本のアーティストの例としてコーエン氏が挙げたのは、YOASOBI、imase、Ado。いずれもYouTubeチャンネルにおいて多数の登録者数を誇るアーティストで、活躍の場や知名度拡大の一翼をYouTubeが担う。

 そういった状況を踏まえ、コーエン氏は「日本の音楽業界の人々にとって、YouTubeは世界に打って出るための魔法のじゅうたん。チャンスをつかんでほしい」とエールを送った。

 音楽配信サービス「YouTube Music」と「YouTube Premium」のメンバー数は、1月時点でトライアルを含めて1億人を突破しており、グローバルなプラットフォームとして大きな影響力を持つ。YouTubeでは3年間、クリエイターやアーティスト、メディア企業に700億ドル(約10.6兆円)以上を還元してきたという。

 今後のミュージックシーンにおいては「AIが影響力を持つ」と語るコーエン氏。アーティストのクリエイティブな作業に役立つ道具としてはもちろん、創作のハードルを下げ、ファンが音楽活動へ関わることも手助けする。コーエン氏は「私たちにとって音楽は“聴くもの”だった。今の若者は(音楽に)参加したい」と語った。

 AIの可能性について試行錯誤しながら、責任を持って音楽業界のパートナーと協力するために、YouTubeでは昨夏、「AIを音楽に活用するための基本的な考え方」をグローバルで発表。適切なかたちでAIを活用すべく取り組んでいる。

 YouTube Music AI インキュベーターも先述の取り組みの一環としてグローバルで展開されており、今回、日本にも導入されることになった。バーチャルシンガー・ソフトウェア「初音ミク」などの開発で知られるクリプトン・フューチャー・メディアが協力することもあわせて発表された。

クリプトン・フューチャー・メディア 代表取締役の伊藤博之氏

 YouTube Music AI インキュベーターの参加者には、Google DeepMindが開発した音楽生成モデルの「Lyria」への早期アクセスが提供される。Lyriaでは、たとえばプロンプトにアイデアを入力することで、ビートをメロディーに変えたり、ボーカルにサウンドトラックを添えたりできる。

YouTube 日本 音楽パートナーシップ ディレクターの鬼頭武也氏は、Lyriaについて説明した

 YouTubeでは、アーティストや作詞・作曲家、プロデューサーなどからフィードバックを集め、プロダクト開発などに役立てるという。