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「LUUP」に特定小型原付向けのナビ機能、都内で3月最終週に試験提供開始――大通りを避けて歩道走行を抑止するねらいも

 Luupは、モビリティシェアサービス「LUUP」で、「ナビ機能」の試験提供を3月最終週に開始する。LUUPのスマートフォンアプリで、貸出時に目的地の返却ポートを指定すると、推奨ルートが表示され、そのままナビゲーション機能が利用できる。

 今回のナビ機能は、ナビタイムジャパンと連携した取り組みで、「NAVITIME API」の自転車ルート検索機能を、特定小型原付向けのルート案内として活かすかたち。特定小型原付向けナビ機能の開発には、「ユーザーの交通違反を減らす」意図があるとLuup 代表の岡井 大輝氏は語る。

Luup 代表の岡井 大輝氏

違反の多くが「通行区分違反」

 岡井氏によると、LUUPの電動キックボードなどが属する「特定小型電動付自転車」(特定小型原付)では、交通違反の中で「通行区分違反」が最も多いという。「通行区分違反」というのは、走行場所に関する違反行為で、たとえば自動車が交差点の右折レーンから直進してしまった場合や、路側帯を通行してしまった場合などが違反となる。

 特定小型原付の場合、歩道では「最高時速6kmに制限されるモード」に切り替えると走行できるが、走行モードを切り替えずに歩道走行すると、この「通行区分違反」となってしまう。岡井氏も、特定小型原付の違反は、指定されたモードに切り替えずに歩道を走行したケースが大半ではないかと推測する。

 LUUPの違反対策として、「まずはちゃんとルールを知ってもらうことが重要」とし、電動キックボードを利用するすべてのユーザーに対し、交通ルールテストの全問正解を必須としている。

 また、定期的に講習会を実施したり、ルールをまとめたガイドブックを配布したり、交通ルールの周知活動を実施している。

 走行時や違反後の対策強化として、悪質な違反行為に対しては、そのアカウントを凍結しており、警察も取り締まりを強化している。

 違反者について、岡井氏は「テストを受けているので、基本的に知らないということはない。『これくらいばれないだろう』といった考えには、(アカウント凍結などの)ペナルティーなどを通じて『車両である』という認識を持ってもらう」とコメント。

 一方、ユーザーの中では「はじめていく大通りに出てみると、自動車の往来が多かった」や「路上駐車で自転車レーンが利用できなかった」ために、やむを得ず歩道を走行したという声もあるという。

 今回のナビ機能は、そもそも違反につながらないような走行を促し、「意図せず違反してしまう」ことを抑止しようという取り組みだと説明する。

大通りを避けるルート選定

 ユーザー向けに実施したアンケートでは、自転車や電動キックボードでの車道走行で「走りづらい」と感じた経験があると答えたユーザーが83%いたとし、その理由に「路上駐車」や「路面状況が悪い」「自動車やバイクの走行量が多い」「自転車レーンがない」という声が続いた。

 ユーザーが実際に利用する際の声として「Googleマップでざっくり調べる。都内では大通りを走れば行きたいエリアの方向に行ける」「大通りで怖い思いをした」という声や「交通量の少ないルートがあるとよい」といった声が聞かれた。

 岡井氏は「なんとなくわかりやすい大通りルートを選択」や「既存の地図アプリのルート検索だと、大通りを通りがちになる」とともに、そもそも「大通りの走行環境が電動キックボードや自転車に向いていない」とし、これらから歩道に乗り上げてしまっているのではないかとコメント。交通量が少ない道や大通り以外の道を優先的に提案するナビがあれば、ユーザーの利便性や体験価値の向上と、交通ルールを遵守した利用が両立できるのではないかと考え、今回のナビ機能の試験提供を実施するという。

完璧なナビ機能ではない

 ナビ機能の試験提供は、3月最終週から東京都内エリアで実施する。対象ライドは、電動キックボードと電動アシスト自転車の両方で利用できる。ユーザーが貸出ポートと返却ポートを選択すると、ルート検索され、ライドを開始すると、返却予定ポートまでの案内が開始される。

ナビ機能を利用した貸出から返却まで

 ルートは、標識や標示にかかわらず歩道を走行しないものになっているほか、大通りなどを避けたルートを提案する。走行中にルートを外れた場合の再検索機能はサポートしていないが、ライド中でも別の返却ポートを再指定すると、ルートが再検索される。

 一方、このナビ機能は「完璧なものではない」と岡井氏は説明する。ナビ機能の開発にあたっては、「特定小型原付のルート検索はどこも提供していない」として、類似する自転車用のものを採用し、特定小型原付向きのルート検索に活用している。

 自転車と特定小型原付のルールは共通点が多く、車道走行時は一番左側の車線の左側を走行したり、自転車レーンがある際は自転車レーンを走行しなければならなかったり、似たような走行ルールが規定されている。今回のものは、「NAVITIME API」の自転車ルート検索機能を特定小型原付向けにしたものとして提供される。

 ナビ機能の利用に際しては、LUUPのモビリティに備えられているホルダーに装着するかたちで利用する。スマートフォンを操作しながらの運転も法律違反となるが、注視したり手に持ったりしない形での利用ができるため、今回のナビ機能の導入につながったという。

LUUPの電動キックボードにもスマートフォンホルダーが備えられている

順天衛星を使ったアシスト機能も

 今後の展開について岡井氏は、位置情報の精度を上げられる「準天頂衛星システム」を使ったユーザーアシスト機能を考えているという。

 GPSよりもより高精度な位置情報を測位できる準天頂衛星を利用すれば、ユーザーが車道と歩道どちらを通行しているかを検知し、ユーザーに注意喚起を行ったり、違反行為の抑止にも役立てられるとコメントする。

 一方で、コスト面やビル群や人が多いと測位が難しい技術的な課題もあり、継続的に取り組んでいく姿勢を示した。