ニュース
東大で「Beyond AI 研究推進機構」第4回シンポジウム開催、ソフトバンクも連携し、日本のAIや半導体技術を議論
2024年3月2日 08:00
東京大学 Beyond AI 研究推進機構は1日、第4回 Beyond AI 研究推進機構 国際シンポジウムを東京大学(東京都文京区)で開催した。Beyond AI のためのデバイスとハードウェア技術をテーマに、主に半導体などハードウェアの視点から議論された。
ソフトバンクも連携
Beyond AI 連携事業は、東京大学とソフトバンクが連携し、社会実装や事業化を図る研究事業。
会の冒頭では、ソフトバンク 代表取締役社長兼CEOの宮川 潤一氏によるビデオメッセージが放映され、ソフトバンクとしても、生成AI基盤の拡大を進め、研究機関にも利用できるように準備を進めているとアピール。また、生成AI開発の子会社「SB Intuitions」に触れ、グループ内の生成AIのエキスパートを集結させ、国産LLMの開発を進めていることを説明した。
一方で、急増するデータ処理に対応するハードウェアや、それを処理するためのエネルギーの供給など課題も多く、人とAIとの共存社会における重要なテーマであると指摘。今回の「Beyond AI のためのデバイスとハードウェア技術」のテーマで繰り広げられる議論に期待しているとした。
省電力化や日本の半導体産業について議論
会合では、生成AIに関わるデータセンターの省電力化に関する技術や、日本の半導体産業について議論された。
たとえば、TSMC ビジネスデベロップメント シニアバイスプレジデントのケビン チャン(Kevin Zhang)氏は、「何をするにしても半導体、モバイルデバイスやヘルスケアなどで半導体は不可欠。日本でも半導体のエコシステムの重要性が増してきている」とコメント。AIの台頭を考慮に入れる前の数字でも、収益総額が全世界で5000億ドルに達しており、自動車分野などでも機械的なものから電子的なものに大きな変革の波があり、将来にわたって信じられないほどの需要が発生するとした。
Rapidus 取締役会長で、LSTC(技術研究組合 最先端半導体技術センター)理事長の東 哲郎氏は、日本の半導体産業について、「1987年~92年の期間、世界における日本のマーケットシェアは50%近くでトップシェアだったものが現在は10%を割ってしまっている。これだけシェアを落としてしまったのは、日本が最先端のロジック部分を諦めてしまっているから。日本にとって重大な問題だ」と指摘。産業界全体がデジタル化するなか、半導体技術が社会の中でもカギになってきているとし、地政学的な問題で納期に時間がかかったりするなど輸入に頼る現状に問題が出てきているとした。
一方で、電力消費問題も“死活的な問題”とし、国レベルで2nm半導体といった世界最先端の半導体技術に力を入れていくべきだとした。
東京大学 大学院工学系研究科 教授、附属システムデザイン研究センター センター長の黒田 忠広氏は、「AI処理のボトルネックとなっているのは、演算ではなくメモリーアクセス」と指摘。データセンターにおける消費電力も、演算部と肩を並べるくらいDRAMメモリーへのアクセスが占めているとし、メモリー部分のボトルネックを解消することが、今後の技術のカギになるとした。