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楽天 三木谷氏、楽天市場出展者イベントで「AI革命で20%効率化実現、楽天モバイルは購買力向上に貢献」とアピール

 楽天グループは25日、楽天市場出展者向けのイベント「楽天新春カンファレンス2024」を都内で開催した。イベントでは、同社代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏が講演し、出展者向けに楽天モバイルの現状や楽天市場への貢献が説明されたほか、生成AIを含めたAIの活用指針について語られた。

代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏

AIはインターネット以上の大きな革命

 三木谷氏は、まず令和6年能登半島地震について、楽天モバイルや楽天ふるさと納税を活用した寄付の状況などを説明。楽天ふるさと納税では、返礼品を受け取らない形での寄付が13億1142万円(1月25日時点)、楽天クラッチ募金で2億9650万円(1月25日時点)の支援が寄せられたほか、楽天モバイルでは移動基地局の設置や無料充電サービス、Wi-Fiルーターによるネットワークの無償提供、被災ユーザーのプラン料金を1月~3月分を無料にする支援を実施している。

 三木谷氏は、続けて今回の講演の主題は「AI」であると前置きし、「AIは販売手段だけでなく会社や人のあり方を変える大きな革命。インターネット以上の大きな革命ではないか」と、AIに対する期待感を示した。

 同社については、1997年5月に楽天市場をスタートさせ、多くの出展者とともに成長、クレジットカードやモバイルなどが登場し、楽天エコシステムとして現在の姿がある。今回AIをこのエコシステムに付け加えることで「単純に物を売るということ以上のビジネスにできる」と、出展者に向けてアピールする。

 楽天グループの2023年度について、速報値としてグループ流通総額が40兆円、売上利益が2兆円以上と明らかにする三木谷氏。その中でも、楽天モバイルの話に話題が移り、「若者に、人生の選択として自動車とスマートフォンのどちらを選ぶかと問うと、多分97%はスマートフォンを選ぶのではないか」とスマートフォンの重要性をアピール。

 人間の生活と切っては切れないあらゆる生活の中心にスマートフォンが存在する一方、楽天モバイルの参入前は「携帯料金がどんどん上がっていた。1人7000円以上、家族4人で6万円など、携帯料金は安い方が良いのにもかかわらず、値上げ傾向だったところを楽天モバイルが低価格で高品質、無制限を実現した」と楽天モバイルがもたらした功績を説明する。

 また、物価上昇の中携帯料金だけ低価格化となっており、消費者物価指数の上昇抑止と、携帯料金の低下で「年間4億円」の効果があると主張する。

 加えて、MNO4社のなかでは、ECサイトのクロスユース率が最も高いとし、楽天市場の中で見ると、楽天モバイル加入後で流通総額が60%多く、年間で4万3521円の効果が出ていると説明。「楽天モバイルの成長で、楽天市場出展者の売上を増やしている、エコシステムのアンカーとなっている」旨を説明し、楽天モバイルを含めたエコシステムの貢献をアピールした。

2024年をAIの進化を進める最初の年に

 続いて三木谷氏は「AI革命」と題して話を進める。

 昨今話題になっている「AI」と「生成AI」との違いについて三木谷氏は従来型のAIについて「過去のデータを学習して同じような解を出してくるのが従来のAI、自動運転など過去を学習して判断するもの」と説明。一方、生成AIについては「人間のように考えられるのが一番大きなポイント。商品やコンテンツを新たに作れるようになる」とした。

 たとえば、従来型AIでは先述の自動運転のほか、分析や予想、医療分野、チェスの対戦といった特定の専門職のみが利用しているものだという。生成AIでは、新しい薬の調合や動画を自動で編集して映画を作るといった、さまざまなものに波及していくと説明する。

 楽天では、このAIをツール化し、「マーケティング効率」と「店舗効率」、「オペレーション効率」といった3つの次元「AI Cube」で捉え、AIの価値を最大化していくとする。

 三木谷氏は、2024年を同社でAIの進化を進める最初の年として、AI化を意味する造語「AI-nization」を掲げた上で、「AIを進めるうえで、楽天が非常に有利」とアピールする。

「Rakuten AI」の強み

代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏

 楽天グループのAI「Rakuten AI」の強みとして三木谷氏は、まず「リッチなデータ資産」だと説明する。

 国内会員数が1億円超え、グローバルでは18億のメンバー数を持っており、年間の取引規模として「ポイント発行数」が年間6600億、累計4兆ポイントとアピールする。

 これに加え、楽天グループでは、ショッピング(楽天市場)のほか、トラベルや銀行、証券、クレジットカード、モバイルなど、さまざまなサービスの利用状況が1つのIDに結びついており、「世界的に見ても希有なデータを持っている。おそらく世界ナンバーワンだ」という。

 たとえば、トラベルで予約した人の行先で着る衣料品の購買履歴や、銀行で住宅ローンを組んだ人の家具や家電の購買履歴など、クロスユースならではのデータを持っていると三木谷氏は説明する。

 次に三木谷氏は、「Rakuten AI」の強みとしてOpenAIが参画するビジネス向けのAIプラットフォームで「技術面」を、グローバル人材を多数備えていることで「人材面」の強みをアピールする。

 人材面でのアピールでは、「社内公用語が英語」であることや「グローバルでの研究開発拠点を構えている」点などを挙げた。

代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏

AIの活用で20%効率化

 三木谷氏は、AI活用の効用として「トリプル20」という言葉を取り上げる。これは、楽天社内で「AI活用による生産性最大化」の目標としてあげているもので、「マーケティング効率」と「オペレーション効率」、「クライアント効率」(出展者の業務効率)をそれぞれ20%上昇させることを指している。

 このAIを楽天エコシステムに組み込むことで、楽天グループ全体が飛躍的に成長すると、三木谷氏は自信を見せた。

 AIを組み込むことについて、ユーザーが実際に触れるインターフェイス(UI)も変化が起きると話す。たとえば、楽天市場で商品検索した際の画面も、「AIベース」のサービスになると変わってくるだろうという。検索ボックスに検索ワードを入力するというやり方は「非人間的」とし、コンシェルジュの形式など、より人間らしいものに変化していくだろうという。

 たとえば、楽天トラベルでは、ユーザーの旅行先を提案するAIコンシェルジュや、掲載施設側がプランの内容や部屋の情報をインプットすると最適なプランをアウトプットするような仕組みが導入されている。

 このほか、楽天生命の代理店向け生成AIや楽天証券などでのAI活用例を紹介。楽天モバイルでも、AIを使ったネットワーク運営を行っており、低廉な価格が実現できたと胸を張る。

楽天市場 出展者はどう活用できるか

 楽天市場の出展者は、AIをどう活用できるのか?

 三木谷氏は「画像を元にした商品説明」や「マーケティング戦略の構築」などでAIを活用できるようツール化していくと説明する。

 たとえば、商品画像を解析してより検索ワードに近い商品を表示させる「セマンティック検索」では、テスト期間における商品転換率(どれだけの人が購入したか)が+2.7%となるなど、マーケティングにおける効果が期待できる取り組みを実施。

 また、店舗が商品画像と要素を入力すると、AIが画像を解析し商品名や説明文を作成し提案するツールにより、店舗運営を効率化。

 加えて、商品画像の背景に、その商品が使用される場所などの背景画像を自動で生成し合成するといったことも実施する。たとえば、炊飯器の商品で「炊飯器だけの画像」か「炊飯器の背景に野菜がうつった画像」のどちらがよく売れるか、といったことも測定しながら掲出できる。

 このほか、店舗分析や問い合わせ対応、日常業務支援などにもAIを取り入れたツールの展開を実施する。

 なお、AIを活用するためには「AIを理解する必要がある」と三木谷氏は指摘する。そのため、AIの一般的な概要や楽天の「ChatGPT-4」ベースのAIチャット「RMS AIアシスタント」の活用方法が学べる「Rakuten AI大学」(仮称)を近日提供するとしている。

 ここまでAIの活用について力説した三木谷氏だが、一方でほかのECサイトと楽天市場の異なる点として「人間のあたたかさ」をあげた。AI一辺倒ではなく、出展者の人柄がショップに表れ、ユーザーからも支持されているとして、AIはあくまで業務支援(サポート)のためのものであることを、あらためて言葉で示し、講演を終えた。

代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏