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病気や健康の情報源としての「YouTube」、信頼性を守るウラガワ

 エンタメやニュース、さまざまなジャンルの動画を楽しめる「YouTube」。多くの人が娯楽のひとつとして利用する一方で、情報を検索するためのツールとしての側面もあわせ持つ。「健康情報」もまたそのひとつだ。

 便利な反面、信ぴょう性が低い情報も飛び交うインターネット。YouTubeでは、デマや誤りからユーザーを守るために、何をしているのか? YouTube ヘルスディレクターのガース・グラハム氏が、健康関連の情報の信頼性と透明性を守るための、これまでの取り組みと新たな施策について語った。

グーグル グラハム氏

YouTubeは健康情報のツールに

 1日のYouTubeの動画再生回数は、全世界で合計数十億時間にもおよぶ。これはすべてのジャンルの動画の合計だが、2022年の日本では健康関連の動画が40億回超の再生を記録した。

 今や多くの人が病気・健康に関する情報をインターネット上で検索する。グラハム氏によれば、医師の診察を受けたあとにどうするか、どう考えればいいかを判断するためにネットを活用することが多いとされる。特に若年層において、検索エンジンよりも頼られることがあるYouTubeはその筆頭ともいえる。

 2021年の健康関連の動画の再生回数は世界で1100億回を超えたという。多くの人が自らの健康に関する情報を求めて訪れるYouTubeに必要なのは信頼性だ。

医師や看護師、カウンセラーを「信頼できる情報源」に

 「我々は質の高い健康関連の情報を世界中に届けることに投資し、力を入れている」とグラハム氏。YouTubeでは2021年、全米医学アカデミー(NAM)と協力。NAMにより、信頼できる情報源の定義付けやそれを維持する基準などがまとめられた。加えて、米国外へ展開すべく、WHOとともに専門家を交えての検証を行われた。

 基準を満たすクリエイターの動画には、信頼できる証としてパネルが表示されるようになる。日本では、京都大学大学院医学研究科 医学/医科学専攻 医療情報学分野および社会健康医学系専攻 健康情報学分野が、NAMが作成した原則と定義を確認した。実際に病院などの公式チャンネルの動画を試聴すると「日本の医療機関による動画コンテンツ」といった表示が確認できる。

 このほか、検索欄から病名など健康に関する情報を検索すると「医療/健康情報セクション」として、信頼できるクリエイターによる動画が表示される機能も備わっている。

 この仕組みが新たに医師や看護師、公認心理師にも適用されるようになる。

 資格基準としては、日本で医師や看護師、公認心理師の免許・資格を有している必要があるほか、直近12カ月で動画の再生時間が合計2000時間以上、もしくは過去90日間のショート動画の視聴回数が合計500万回以上であることなどがあげられている。製薬会社や医療機器メーカーなどの運営するチャンネルは対象外となる。

 米国では、2022年10月からこの制度が始まっており、日本でも年内にはスタートする見込み。現時点では公的な資格・免許のみが対象となっているが、グラハム氏はこの取り組みについて「まだ始まったばかり」と説明しており、今後対象範囲が広がるとみられる。

メンタルヘルスでの保護も

 「摂食障害」に関する動画についてメンタルヘルス面でサポートする新しい取り組みがある。摂食障害を誘発するような内容の場合は、動画の視聴に年齢制限を設け、誤った情報を持っていたり助長したりするような動画は削除するといったもの。

検索欄下に連絡先が表示されている

 年齢制限を設けるのは、若年層は影響を受けがちで誤った動画の内容を真似することが多いためという。また、検索欄から「摂食障害」で検索すれば「摂食障害相談ほっとライン」の連絡先がパネルとして表示される。摂食障害の原因のひとつには、心理的な要因があるとされており、YouTubeで検索したユーザーに第三者への相談を促す。

 摂食障害協会との協議で取り組みが行われており、同様の事例は米国や英国でもある。

 YouTubeでは、メンタルヘルスやそのほかの情報源として信頼され、安全な場所であると認識してもらうことをゴールと位置づける。加えてグラハム氏は「患者はいろいろなソースから健康に関する情報を探す。重要な情報が表示されることが大事で、質の高い情報を入手できるようにすべく、国内外でこうした取り組みを行っている」と語った。