ニュース

ニュース速報からドキュメンタリーまで、「YouTube」で配信するテレビ局

 テレビを見ないという人が増えつつある一方で、テレビ局がYouTubeで各社の番組を配信するようになって久しい。今ではたとえテレビがなくとも、ニュース番組を見られるようになった。多くのテレビ局がYouTubeでも活動するようになった今、グーグルはどう向き合っているのか。グーグルの担当者がYouTubeにおけるテレビ局の存在とニュース配信への取り組みを説明した。

グーグル 永原氏

地震や水害、いざというときの情報源に「YouTube」

 YouTubeでニュースチャンネルを開設しているのは在京キー局をはじめ、地方局も多数がチャンネルを開設している。

 各局は地上波でもおなじみの番組から速報や特集を動画として配信。特にライブ配信では最新のニュースをすぐに確認できるなど、テレビに近い試聴体験を得られる。

 特に万が一の災害時などには、最新情報のライブ配信が各社で行われることも多く新鮮な情報を手にしやすい。テレビと違って過去の映像をいつでも視聴できるため、被災時のみならず平時にも過去の動画を見て自らの防災に役立てるといった使い方もできそうだ。

 YouTubeのホームからアクセスできる「トップニュース」は、重大事故・事件、災害発生時には「ニュース速報」という表記に変わるなど、プラットフォーム側でもニュースを求めるユーザーにあわせた対応を進めている。

スマホアプリでニュースに表示を絞った様子

 さらに、選挙時には開票速報のほか注目当選者に関する特集も配信されることがあるため、特に若年層にとって、普段は遠くに感じられる政治に関する話題に触れるきっかけづくりのひとつにもなりそうだ。

 多くのSNSでは、ユーザーの興味関心を分析してより関心が高いとされるコンテンツをリコメンドする仕組みがあるが、裏を返せば自分の関心外の情報は手に入りにくいとも取れる。そこで、YouTubeのテレビ局各社のチャンネルを日常で閲覧するメディアのひとつに取り入れると、広い視野をもつひとつのきっかけになりえるかもしれない。

配信でテレビ局を支援する

 グーグル YouTube ヘッド オブ ニュースパートナーシップの永原練太郎氏は、YouTubeが娯楽の枠を超えて情報を手にするための媒体になっていると説明する。

 同氏は、93%のユーザーが「情報や知識を得るためにYouTubeを使用している」と回答した調査結果を紹介し「YouTubeという場がニュース配信社にとって大事な場所であることを示している」と語る。

 早くからYouTubeに取り組んできたテレビ朝日のチャンネル登録者数は319万人(7/7日時点、以下同)とかなりの規模で、配信限定のコンテンツを多く手掛けるテレビ東京のチャンネルも180万人と続く。

 単純なニュースに限らず、最近では各社が地上波で放送する特集コーナーをYouTubeで配信しているほか、配信独自のコンテンツにも力を入れている。国際情勢を深掘りするものや地上波では放送時間の都合上難しい、テクノロジー関連の詳細解説などが並ぶのも特徴のひとつ。

 再生時間が長いと動画の評価が高くなるなどのメリットがあるYouTubeの特性から、長尺のドキュメンタリーを配信するテレビ局も増えつつある。縮小するテレビ広告市場を鑑みて、テレビ業界の新しいビジネスモデルの模索が始まっているようだ。

 さまざまなユーザーへニュースを届け、テレビ局の収益源サポートとあわせて、YouTubeが貢献する分野に位置づけているのが「情報の多様性」。同社によれば、ニュースチャンネルで配信される動画の半数以上は地方局によるもの。「経営改革の一環」としてのYouTube活用をアピールする。

 永原氏は、YouTubeで重要なポイントとして、表現の自由とコミュニティを守る責任をあげる。自由は重要としつつも「自由ばかりでは新たな課題が出てくる」とも指摘し、ガイドラインに沿って視聴者と報道機関の両方から信頼されるプラットフォームを守る意思を示した。