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ソフトバンクとNVIDIAがAI活用の次世代5Gデータセンターで協業
2023年5月30日 16:51
ソフトバンクとNVIDIAは、5Gおよび6Gを見据えた次世代データセンターで生成AIの活用を見据えた次世代プラットフォームの構築で協業する。2023年後半にもNVIDIAから「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」搭載のMGXアーキテクチャー採用のシステムがソフトバンクへ提供される。
5GとAIを組み合わせ
両社が取り組む新たなプラットフォームはNVIDIAの「NVIDIA GH200 Grace Hopper Superchip」(Grace Hopper)と「BlueField-3」(DPU)を用いた仕組み。NVIDIAによるモジュール型のサーバー規格「MGX リファレンスアーキテクチャー」を活用しており、専用のハードウェアがなくても仮想化された5Gネットワークと生成AIのアプリケーションの使用を可能にする。
昨今、急速に用途が拡大する生成AI。NVIDIA 通信事業担当シニアバイスプレジデントのロニー・ヴァシシュタ氏によれば現在の通信分野における問題点は、インフラ側がAIなど新しいアプリケーションに必ずしも最適化されていないことと指摘。専用機器を用いたハードウェアや仮想化ネットワークでも、ピーク使用率を考慮した設計である必要があるものの、一方で通常の使用はピーク使用率の25%程度ともいい、ピーク時のみを考慮した設計では、効率が悪くなるとも説明する。
今回、ソフトバンクとNVIDIAが導入する仕組みは、設備の効率性や性能などの諸問題を解決に導く。同社ではこの仕組みを「NVIDIA Accelerated Cloud」と称しており、ヴァシシュタ氏は「5GデータセンターをAIファクトリーに、AIファクトリーで5Gを運用する」と通信とAIが一体化したものになることを説明。これにより、高度なパフォーマンスと利益率の改善をもたらす。
これまでのオープンvRANの課題だった、性能の低さを改善したことなどをNVIDIAのvRANの特徴と位置づけるヴァシシュタ氏。FDDとTDDの両方をサポートし完全仮想化であることから、ハードウェアを変更することなくソフトウェアの切り替えでMIMOのほかさまざまな周波数に対応できるという。
23年後半にもソフトバンクへシステム提供
ソフトバンクとの協業では、ソフトバンク内部でのAIアプリケーション利用に加えて、顧客に対してもその機能を提供できるようになっているなどAIの浸透を見越した設計がなされている。
協業で活用が予定されるGrace Hopperは、台湾で開催されているイベント「COMPUTEX TAIPEI 2023」で量産が発表されたチップ。CPUとGPUの2つの機能をあわせ持つ特徴がある。NVLink-C2C通信で最大900Gbpsの総帯域幅を持ち、AIのみではなく5Gでも高い性能を発揮するという。
Grace Hopperを用いた5Gデータセンターでは、最新のオープンRAN 5Gと比較しても2.5倍の電力消費効率を実現しており、1サーバーで36Gbpsの通信速度を実現する。6Gを見据えた設計がなされており、低遅延など5Gのメリットを活かしたモビリティサービスなどをエンドユーザーに直接提供するなど、新たなビジネス機会の創出も可能とアピールする。
ヴァシシュタ氏は「ユースケースはどんどん増えていく」としたうえで「(ソフトバンクの)内外でこの製品の能力をすぐに体感できるようになる」とも語る。一方で現在も多数あるx86系のアーキテクチャでもあわせてAI利用の検証を進めており、Armとx86ベースの両面でサポートが進む方針を示す。
NVIDIAからGrace Hopper Superchip搭載のMGXアーキテクチャー採用のシステムがソフトバンクへ提供されるのは2023年後半の予定。
【お詫びと訂正】
記事初出時、2023年後半にソフトバンクが次世代データセンターを展開するとしていましたが、実際にはNVIDIAがGrace Hopper Superchip搭載のMGXベースのシステムをソフトバンクへ提供する時期が2023年後半です。お詫びして訂正いたします。