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総務省、条件付電波オークションの入札方法や参加資格などを検討

 総務省は、14日、「割当方式検討タスクフォース」の第3回を開催した。

 タスクフォースは、5G用周波数の割当における"電波オークション"の具体的な制度設計などについて検討するもの。

 第3回の会合では、事業者に対する電波の割当に一定の条件を課す「条件付きオークション」導入の検討にあたり、制度設計やオークション実施における条件、入札方法の検討などが行われた。

制度設計について

 全国各地でサービスを展開する場合は、現在の開設計画認定制度における排他的申請権の期間が10年以内とされていることや、ミリ波帯など高い周波数帯はロー・ミッドバンド異なり、全国的なエリアカバレッジを政策目標とすることは想定されないことなどを踏まえ、その期間を10年以内とすることを提言した。

 一方、周波数帯を比較的狭いエリアでスポット的に利用する場合などは、全国的に利用する場合と比べて短期間に基地局の開設が可能と考えられること、多種多様なプレイヤーが参入することでイノベーションを促進することなどを踏まえ、10年よりも短い期間とすることも考えられるとまとめた。

 通常、無線局の免許は原則として一局ごとに先願主義(先に申請した事業者に割り当てられる)となっている。しかし、通信サービスを提供する際、基地局などの設備を全て同時に開設することは難しい。そこで、一定期間、免許を得た事業者に限って申請できるようになっている。これが「開設計画認定制度」だ。

 この期間が必要以上に長くなると、周波数が十分に活用されなくなるが、あまりに短く設定されると、事業運営の安定性や投資コストの回収に悪影響をおよぼす懸念がある。

条件付オークションに付する条件

 伝搬距離が比較的短い、ミリ波帯などの高い周波数帯においては、利用が集中するエリアでスポット的に利用されることが想定されるため、従来の5G向けの周波数割当では絶対審査基準とされた、「全国及び各地域ブロックの5G基盤展開率」のような、恒常的かつ広域なエリアカバレッジを条件とすべきではないと提言した。

 一方、全国でニーズが顕在化したスポットでサービスを展開する場合かつ、全国単位で割当を行うときは、全国各地におけるサービス利用可能性を確保し、周波数の死蔵を回避する観点から、ニーズに応じて適切かつ機動的にサービス提供が可能な体制を全国各地で構築することなどの条件を付すことが必要とした。

 また、イノベーションや新サービス創出を促進する観点から、イノベーションに資すると想定される技術(5G SA、ネットワークスライシングなど)を採用することが想定されている。

 海外の事例では、韓国におけるミリ波帯の割当で、ネットワーク構築義務として割当から3年後に1万5000局、5年後に10万局の基地局開設を義務付けたが、条件を達成できなかったKT、LGU+が免許剥奪、SKテレコムは2023年5月末までに1万5000局を達成できない場合、免許期間を短縮する処分が行われた。

オークション参加資格の審査

 日本の開設計画認定制度において、申請者に対する絶対審査基準として、電波法に基づく欠格事由がないことや、電気通信事業法第9条の登録を受けているまたは受ける見込みが十分あること、財務的基礎があげられる。

 諸外国では、法的・技術的・財政的要件を満たしていることの宣誓のほか、嫌がらせ目的での入札などを排除するために、保証金の提供を求める事例がある。

 こうした事例を踏まえ、条件付オークションの参加資格の要件には、現在求められている3つの要件に加えて、保証金の提供を求めるべきであると案を示した。

最低落札額の設定

 最低落札額の算定について、諸外国では、比較法、AP法、収益還元法などがある。このうち、諸外国では主に比較法が用いられている。比較法は、他国のオークション結果について、帯域幅、人口、免許期間などの変数で基準化して算定している。

 日本でミリ波帯などを対象に条件付オークションを実施する場合は、諸外国におけるミリ波帯などのオークション結果を参照して最低落札額を算定するなど、最低落札額の設定を提言した。

オークション方式の選択

 条件付オークションの実施にあたり、「同時複数ラウンド繰り上げオークション SMRA(Simultaneous Multi-Round Auction)」、「組合せ時計オークション CCA(Combinatorial Clock Auction)」などがある。

 「SMRA」の入札はラウンド制で行われ、全周波数ブロックが同時に入札にかけられる。参加者は、各ラウンドで希望する個別の周波数ブロックに入札し、各周波数ブロックについて、最高入札者額を主催者が開示する。あるラウンドにおいて、いずれの周波数ブロックに対しても新たな入札が行われない場合、ラウンドは終了する。

 「CCA」の入札は、時計フェーズと補足フェーズにわけられる。時計フェーズでは、周波数ブロックはカテゴリーに分類され、同一カテゴリーに含まれる周波数ブロックは同質のものとして取扱される。主催者が周波数ブロックの金額をカテゴリーごとに設定し、ラウンドごとに上昇させる。いずれのカテゴリーについても、需要量が供給量以下となった場合にラウンドは終了する。

 補足フェーズでは、時計フェーズの結果に基づいて参加者が補足フェーズにおいて入札可能なパッケージの選択肢およびその金額の範囲が決定される。主催者は、参加者が入札したパッケージを組み合わせて、いずれのカテゴリーにおいても需要量が供給量以下となり、かつ、それらの入札額が最大になるものを決定する。

 参加者は、主催者の決定したパッケージを落札し、二位価格方式によって定められる金額を支払いする。

 今回のタスクフォースでは、それぞれの特徴や適するケースを踏まえて割当する周波数帯に応じて適切な方式を採用することが適切とまとめている。

電波利用状況のフォローアップ

 条件付オークションによって割当される条件について、条件の遵守状況などや有効利用の状況などを調査することが提案されている。

 また、排他的申請期間の終了後に再び条件付オークションを実施すべきかは、割当希望者に対して十分な割当機会を確保できると考えられることなどを踏まえて、排他的申請期間終了にともなって直ちに再オークション(再割当)を実施する必要まではないとまとめた。

オークション収入の取り扱い

 条件付オークションは、利用に高度な技術やノウハウが必要となるミリ波などの高い周波数帯について、創意工夫によるイノベーションや新サービスの創出につながることを政策目標として実施されることを踏まえ、その収入については、Society5.0の実現に資する施策に充てるものとされている。

 具体的な施策として、基地局などのインフラ整備に関する施策、ミリ波の利活用を含む5Gなどに関する研究開発に関する施策などの促進を検討すべきとまとめた。