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モバイルへの注力姿勢くっきり、楽天・三木谷氏が「新春カンファレンス2023」で語ったこと

 楽天グループは26日、「楽天新春カンファレンス2023」を開催した。ECサイト「楽天市場」の加盟店向けに開催された同イベントには、楽天グループ 代表取締役会長兼社長 最高執行役員の三木谷浩史氏が登壇した。

 三木谷氏の講演は約45分間にわたったが、その内容の大半が楽天モバイルの事業にフォーカスしたものとなり、モバイル事業へ注力する姿勢を強く印象づけた。本稿では、その内容をお届けする。

三木谷氏

グループ内で存在感を高める楽天モバイル

 楽天モバイルの存在感は、楽天グループ内で着実に高まっているようだ。三木谷氏が披露したデータによれば、2022年1月~12月のユーザー(1年以上の利用者)において、楽天モバイルへの加入前と加入後を比較すると、加入後は楽天市場の年間流通総額が49%上がったという。

 楽天では、国内ECの流通総額を2030年までに10兆円にするという目標を掲げる。その目標達成時点で「おそらく2兆円ほどは、楽天モバイルの効果によって積み上げられる」(三木谷氏)。

 三木谷氏は、スマートフォンなどのモバイル端末が、人々の間で不可欠な存在になっていることを強調する。2023年の元旦は、「楽天市場」における流通のうち、89.3%がモバイル端末経由になったという。

 5Gなどの普及に伴い、データトラフィックも増加している。楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VII」は月額3278円でデータ容量が無制限の料金プランとなっており、三木谷氏は「100GBでも200GBでも楽しめることが強み」とアピールした。

 同氏は続けて「誰が100GBも使うのかと思われるかもしれないが、ソニーのプレイステーションのゲームソフトを1本ダウンロードすると、それだけで50GB。ネットフリックス(Netflix)で1時間の動画を観ると、だいたい1GB。だから、100GBは大した量ではない。それを上限3278円の料金で提供することで、国内の消費を元気にする。そして楽天市場への集客を図ることが、楽天の大きな戦略のひとつ」とコメント。

 楽天モバイルの契約後、ユーザーの利用データ量が大幅に増加したというデータも示された。

「スマホと衛星が直接通信する」時代に向けて

 三木谷氏が楽天モバイルのコアテクノロジーとして位置づけるのは「仮想化」「自動化」「Open RAN」の3つ。

 「携帯ネットワークはもともと、巨大なハードウェアによって支えられている。他社さんでやっていることは、中身がどうなっているのか基本的にわからず、ブラックボックスになっている」と語った三木谷氏は、楽天モバイルが携帯ネットワークを“極めてインターネット的にした”と表現する。

 楽天モバイルのネットワークでは、「ほとんどのものがクラウド上にあり、自動化されている」(三木谷氏)。基地局も非常に小さくなり、コストの低減や安全性の向上などにつながっている。

 今後は、米AST SpaceMobileとの「スペースモバイル(SpaceMobile)」プロジェクトにより、衛星通信サービスの提供も見すえる。

「楽天モバイル」は“最も高い城壁”

 続けて「楽天ポイント」を紹介した三木谷氏は、ポイントの失効率がわずか2%であることを強調し、「利便性は現金に近くなっている」とコメント。2022年のポイント発行数は約6200億円相当に達した。

 三木谷氏は「楽天市場」について、「楽天エコシステムで“ど真ん中”にある」と表現。その周囲を守る“城壁”にたとえられたのが「楽天カード」「楽天銀行」などのサービスだが、注目すべきは「楽天モバイル」が“最も高い城壁”とされたこと。同氏は「楽天モバイル利用による(楽天への)帰属意識は大きい」と語る。

 あわせて、楽天モバイルのクロスユース成長性に関するデータも披露された。たとえば、楽天モバイル契約後、楽天関連のサービスの利用数は平均で+2.58となる。また、楽天モバイルユーザーの85%が、楽天市場を利用している。

 これまでは個人のユーザー向けに「携帯市場の民主化」を掲げていた楽天モバイルだが、1月30日からは法人向けのサービスもスタートする。「法人プラン」として、通話+データ3GBで月額2178円のプランなどが用意される。

 三木谷氏は「楽天のエコシステムを10兆円という目標に近づけていくために、重要な役割を担うのが楽天モバイル」とあらためて強調。続けて「世界にまれにみるEコマースを実現したい」と語り、今後への意欲を見せた。