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音声接続料のあり方めぐり事業者が意見主張、「トラフィックポンピング」への対策やコスト削減に

 総務省で24日、開催された「接続料の算定等に関する研究会」で着信事業者が設定する音声接続料について、各社の主張を説明する資料が公開された。

音声接続料とは

 音声接続料は、ある事業者の携帯電話から別の事業者の携帯電話に発信した際に、発信した事業者から着信した事業者に支払われるネットワークの利用料金。支払いの方式には事業者がそれぞれのネットワーク利用料を払う「エンド-エンド料金方式」や、反対に両者ともに支払いをしない「ビル&キープ方式」などがある。

 現行の音声接続料の仕組みには、非指定設備の接続料の過剰な請求や「トラフィックポンピング」といった問題があることが指摘されており、これまで各着信事業者が設定してきた音声接続料を制度化する必要があるのではないかという声があった。

ドコモ・KDDIは前向き、ソフトバンクは画一的な導入には否定的

 NTTドコモとKDDIが導入を主張するのは「ビル&キープ方式」。背景には縮退する音声通話需要に対するコスト削減や両社が訴えるトラフィックポンピング対策がある。これは相互接続事業者が接続料を不正に請求するため、代理業者などを用いて大量の通信を発生させるもの。実際に日本国内で摘発されたケースもある。

 ドコモとKDDIでは、対策と抜け道のいたちごっこで事業者側での解決は困難と説明。接続料の支払いが発生しないビル&キープ方式を導入することで、解決につなげられるとする。実際に米国では同様の不正行為への対策として同方式が導入された経緯があるという。

 一方でドコモでは、コスト削減による利用料金の改定も示唆しているが、KDDIでは料金は競争環境を踏まえて決定するものであり、ビル&キープ方式導入後もその方針は変わらないとするなど、ユーザー料金への影響についての見解には多少の温度差が見られる。

 双方の合意があれば、とくに2社間で直接接続する携帯電話事業者は特段の支障がなければビル&キープ方式を導入すべきというドコモ、全事業者へのビル&キープ導入がトラフィックポンピング対策に極めて有効として、導入に前向きなKDDIに対して、ソフトバンクは、あくまで2社間で合意した場合にのみ導入できるよう求め、制度としての画一的な導入には否定的な立場を示した。

 同社は、海外主要国でビル&キープ方式が採用されているのは、ユーザーに着信料金を請求する米国のみとして、日本含めた発信者課金を採る国で同方式の採用事例がないと説明。自社で着信する場合、接続料での回収が前提となるためビル&キープ方式ではコスト回収が難しくなると主張する。

 加えて、不当に高い接続料の設定やトラフィックポンピングといった一部の課題解消のために一律的な仕組みの導入は短絡的であり、あくまで各課題ごとに抑止方法を検討すべきとした。

 音声接続料の検討は、5月までに制度整備の方向性の案を作成したのち、制度の変更が必要と結論付けられた場合は、情報通信審議会などでさらなる議論のうえで関係法令の改正が実施される見通し。