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スマホ画面の割れる過程を完全再現、AGCとJAMSTECが破壊パターンの予測方法を開発

 AGCは海洋研究開発機構(JAMSTEC)と共同で、化学強化ガラスが破損する際の破壊パターンを、数値解析手法を用いて詳細に再現することに成功した。

 化学強化ガラスは、スマートフォンのカバーガラスなどに用いられる素材。なお、この成果はオンラインジャーナル「Physical Review Letters」「Physical Review E」に掲載されている。

解析結果

 化学強化ガラスは、表面に大きな圧縮応力を与えるほど強度が上がる反面、内部に引張応力が形成されるため、傷が深く入ると多数の亀裂が生じて破損してしまう。したがって、強度が高く割れにくい化学強化ガラスを製造するには、強化応力の大きさを適正にデザインすることが重要とされている。

 一方でガラスの破壊パターンは、亀裂が分岐する複雑な現象であることから、これまでのシミュレーション技術では再現が難しかった。そのため、強化応力の最適化には、落下試験や割れの解析など、多くの実験による試行錯誤が必要不可欠だった。

化学強化カバーガラスの応力状態

 今回はAGCの破壊観察技術と、JAMSTECによる土壌・地盤の破壊解析に応用されてきた数値解析技術を組み合わせ、「残留応力場の中での動的破壊進展解析手法」が開発された。これは、化学強化ガラス中を伝搬する亀裂進展の過程をほぼ完全に再現することに成功した、世界で初めての事例となる。

 AGCグループは、ガラスをはじめとする脆性材料や複合材料の強度解析に同手法を活用し、新たなソリューションの開発を進めていく。