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ドコモ、NSGグループとの協業でICT教育の促進へ――5GやXRを活用
2021年6月4日 06:00
NTTドコモとNSGホールディングスは2日、協力して5GやAIを活用してICT教育を促進していくと発表した。
会見には、ドコモから代表取締役副社長 丸山 誠治氏と、執行役員 5G・IoTビジネス部長 坪谷 寿一氏が登壇。
NSGホールディングスからは、代表取締役社長 池田 祥護氏と、執行役員(学校教育事業) 川﨑 千春氏が登壇した。
冒頭の挨拶では、「d払い」障害の謝罪も
冒頭の挨拶でドコモの丸山氏は、6月1日に起きた「d払い」の障害について謝罪した。原因は「d払いのバーコード表示に関連するシステムの不具合」であり、1日の22時32分にサービスは復旧済み。今後は、障害の原因を詳しく調べた上で、再発防止に努めていくとしている。
ドコモが考える「教育分野のDX」
続いて丸山氏は、ドコモの教育に対する取り組みに関して説明した。
OECD(経済協力開発機構)が教育目標として設定した「OECD Learning Framework 2030(2030年に向けた学習の枠組み)」の中では、「時間や空間の制約を乗り越えることが必要」とされている。ドコモはこの枠組みの実現のために、教育のデジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が不可欠としている。
昨年は文部科学省の「GIGAスクール構想」により、公立学校におけるタブレットなどの導入が進んだが、ドコモはその次のステップとして「学びの場の変革」を推進する。
同社が変革の対象に挙げたのは「学びの質」「学びの場所」「キャンパス」「学校の在り方」の4つで、5GやXRを用いた学習コンテンツの高度化などを図っていく。
丸山氏は、「今回のNSGとの協業により、互いの強みを活かして効果的な教育の実現を目指し、地域社会や国際社会の発展にも寄与していきたい」とコメントした。
新潟市を拠点に事業を展開するNSGグループ
NSGの池田氏は、新潟市に本部を置くNSGグループの概要について説明した。
同氏は、今回の協業により、同グループが培ってきた指導ノウハウやオリジナル教材のデジタルコンテンツ化を推進するとコメントした。また、学習者の理解度に応じたアダプティブラーニングを実現し、教育分野におけるDXを推し進めると語った。
協業の主要テーマは4つ
続いてドコモの坪谷氏が、今回の協業に至った背景と具体的な内容について説明した。
ドコモは2020年3月から5Gサービスを開始し、法人向けには、映像伝送やロボティクスなど30以上のソリューションを提供してきた。
会見ではNSGグループとドコモ新潟支店の事例が紹介され、新潟コンピュータ専門学校での5Gに関する講演などを通した両者の関係が、今回の協業の背景にあるとした。
坪谷氏は、協業の主要テーマとして「教育フィールドとソリューションのマッチング」「新たな教育コンテンツ構築」「ビッグデータの活用」「地域社会への貢献」の4つを挙げた。
「教育フィールドとソリューションのマッチング」では、NSGグループの教育フィールドと、ドコモの5Gソリューションの最適な組み合わせを模索する。
「新たな教育コンテンツ構築」では、NSGグループの教育ノウハウやコンテンツをデジタル化し、能動的な学習を促す手段を探っていく。
「ビッグデータの活用」は、配信したデジタル教材の閲覧数などの学習履歴データを蓄積し、AIを活用して分析するというもの。その上で、効果的な学習方法を学生に対してレコメンドするという。
「地域社会への貢献」では、新潟地域から新たなICT教育の取り組みを発信する。また、DX人材の育成や、その人材が活躍できる場を創出するエコシステムの確立を目指す。
5Gエリア化された校舎での取り組みなどを紹介
NSGの川﨑氏は、今回の協業における、教育現場での具体的な取り組みについて説明した。
同氏は「教育現場のデジタル化」の定義として、「学習履歴データを活用した個別最適な指導と、学習データの分析に基づく永続的な教育現場の改善」を示した。
特に専門学校の実習授業とXR技術との親和性は極めて高く、教員のデモンストレーションをデジタル化することで、時間や場所にとらわれない学習が実現するという。
座学の領域でも、学習者個々のデータをAIで分析することで個別最適化が図られ、資格試験の合格率の向上などが期待される。
続いて川﨑氏は、新潟コンピュータ専門学校における取り組みを紹介した。
同校では今年4月に「5Gコース」が開設されていたが、6月中にドコモの5Gネットワーク環境が構築される。5G環境を整えた校舎7階では、IoTやロボットなどに関し、実際の5G通信を用いて授業を実施していく。
また、校舎1階に設置されているeスポーツスタジアムも5Gエリア化される。5Gの高速・低遅延な特性を活用し、新潟地域のeスポーツ大会や、海外との同時プレイなどを実施する見込み。
次に新潟農業・バイオ専門学校の取り組みが紹介された。
同校では、ARグラスを活用した遠隔作業支援ソリューション「AceReal」などをトマトの施設栽培で活用し、実証研究を進める。
実証研究の内容は、ARグラスなどを使用するグループとそうでないグループに分け、同条件で農作業を実施するというもの。その上で、両グループの作業量やスピードの比較から、技術や習熟度の差を検証していく。
そのほか、国際ビューティモード専門学校やJAPANサッカーカレッジでは自由視点映像「SwipeVideo」を導入し、学生の早期の技術習得につなげる。
最後に川﨑氏は、今後の展望を紹介した。デジタル化された教育内容は、国内約2000件の教育機関へ提供されるほか、海外にも展開される見込み。このような取り組みを通じ、国内外の持続的な発展に寄与していくとした。
質疑応答
質疑応答では、ドコモに対し「今回の協業による、ドコモの5Gサービスエリアの展開に関する影響はあるのか」という質問があった。
これに対してドコモは、5Gエリアの拡大を全国で進める「面的な拡大」とは別に、eスポーツ施設や病院などを対象とした「スポット的なエリア展開」を、ニーズに応じて進めていくとコメントした。
続いて、ドコモが先日の決算会見の中で示した「データ活用人材の強化」に関する質問には、「(現在ドコモが抱える)200名ほどのデータ活用人材を、今後1~2年のうちに1000名まで増やしたい」と回答した。その上で、NSGグループの中に適した人材がいれば、採用も検討したいとした。