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京セラの高耐久端末のこれまでとこれから、タフなスマホで描く新しい世界とは

 30周年を迎えた京セラの携帯通信機器事業。同社の携帯電話事業は携帯電話「HP-01」からスタートし、高耐久端末でも注目を集めている。

 京セラのモバイル事業の「高耐久端末」にフォーカスを当て、これまでとこれからについて、京セラ 通信機器事業本部 通信事業戦略部 第1法人ビジネスユニットの湯浅紀生氏が語った。

左=京セラ湯浅紀生氏 右=京セラ 辻岡正典氏

2007年から高耐久携帯電話を開発

 京セラの高耐久端末は、2007年に北米からスタートした。当初のラインアップはフィーチャーフォンで、2014年からはスマートフォンとして日本市場でもリリース。「限界に挑め、何も恐れずに LIVE MORE FEAR LESS」というコピーのもと過酷な環境やより気軽に使えるスマートフォンとして人気を集める。

 日本市場では140万台、全世界での出荷台数はおよそ1100万台を数える。

 京セラは、最初から高耐久端末の技術やニーズの認識があったわけではないという。湯浅氏は同社の製品開発の考え方を次のように語る。

 まず最初に「市場観察」を行う。今回の高耐久端末でいうと、北米の寒冷地帯や乾燥地帯に耐久性のニーズがあり、ここから企画が生まれたのだという。そうした新しい企画は必ずしも、現有する技術だけで具現化できるとは限らない。そうした際には、新たな技術を確立し製品化に向けて開発をすすめると湯浅氏。

 新製品が世に送り出されても、必ずしもそれがユーザーに受け入れられるとは限らない。そうした場合は、ユーザーからの声を聞き改良につなげることを欠かさない。特に、高耐久端末の場合、返却されてきた端末を研究し、高耐久技術の検証や次期モデルへの参考としているという。

耐久性は時代とともに進化

 TORQUEシリーズの初代モデル「G01」の時代には、試験項目は11項目。耐落下試験は1.22mの高さでラワン材(木材)を用いたものだった。次モデルの「G02」では京セラ独自の試験として対海水や耐荷重が追加。

2019年モデルの「G04」では、耐落下試験は、2.0mから鉄板・コンクリートに落下させるというさらに過酷なものに進化した。また、独自試験項目では、単に落下させるだけではなく、端末を何度も落下させる「連続落下」も加えられた。

TORQUEのタフさにまつわるエピソード

 過酷な環境での使用を支える技術として、強化ガラスとアクリルスクリーンによる「ハイブリッドシールド」や手袋や濡れた手のままでも使える「グローブタッチ/ウェットタッチ」などが挙げられる。

 また、長期間使用することを想定して、バッテリーはユーザーが簡単に交換できる着脱式。そのほかにも、全面・背面カバーなどのパーツまでユーザー側で交換できるようになっている。

 こうした高耐久モデルで培った技術はほかの製品にも生かされるという。

さまざまな場所で通信を実現

 今後の高耐久端末の事業におけるビジョンについて湯浅氏は「人類・社会の進歩・発展に役立つために、ニーズをとらえたラインアップ展開で新たな市場を開拓する」と語る。

 高耐久の価値は、活動・業務を止めないこと、使えなかった場所・環境で使えるというところ。その価値で通信により世界を変えられるのではと湯浅氏。

 同社が現在手掛けているのは、高耐久スマートフォンやタブレット。法人向けに業務用端末の利用が拡大しており、同社では今後もこの流れは続くと予想。京セラではSIMフリースマートフォン「DuraForce PRO2」の法人への導入から修理サポートまでをワンストップで提供するサービスも展開している。

 北米中心に、警察や消防、救急など重要性が高いサービスにも同社製端末が導入されており、日本でも災害時などに安定した通信を提供する「MCAアドバンス」に京セラ製端末の導入が決まっている。

 加えて、高耐久端末に特有の重さや大きさなどを敬遠していたユーザー向けに「ライトラグスマホ」を検討している。

 このほかにも、法人向けに高耐久な「DIGNO Tab」を発売しており、さまざまな機器を5Gへ接続する「5Gコネクティングデバイス」を展開する。

来春はTORQUEの新型も

 京セラが描く、高耐久スマホの今後として、過酷な環境で働くユーザーのトランシーバーの置き換えやボディカムとしての使用を挙げる。これまで、通信機器を持ち込めなかった環境で通信が実現することで、新たな世界が広がると湯浅氏。

 また、エクストリームスポーツの場などで、TORQUEの高度や加速度センサーからの情報を組み合わせることで、より臨場感のある映像を実現できる。

 加えて、スタジアム観戦において、高耐久タブレットをスタンドに接地することで、これまでスマートフォンの画面でしかマルチアングルなどを楽しめなかったところを大画面で試合映像を試聴できるようになる。

 さらに今後、北米向けにDuraForceの新型を発売するほか、日本市場においてもTORQUEシリーズの新型を今春にも発表するとした。