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「ポール、ノーベル委員会の電話に出てくれる?」――受賞を知らせる顛末の動画が話題に

 2020年のノーベル経済学賞に選ばれた、米スタンフォード大学のポール・ミルグロム氏とロバート・ウィルソン氏。同大学は、その受賞の知らせにまつわる動画をTwitterに投稿、注目を集めている。

 スタンフォード大学が投稿した動画は、受賞者のひとり、ロバート・ウィルソン氏が、深夜2時にポール・ミルグロム氏の自宅を訪れ、ドアベルを鳴らし、ノックするシーンから始まる。

 就寝中のミルグロム氏の自宅へ、近隣に住む共同受賞者のウィルソン氏が妻のメアリーさんとともに訪問。

ウィルソン氏
 「ポール、ボブだ。ノーベル賞を受賞したよ!(ノーベル委員会が)あなたと連絡をとろうとしているんだが、できないんだ」

メアリーさん
「彼らに携帯電話の番号を伝えたわ」

ミルグロム氏
「えー、受賞? わぁ……」

メアリーさん
「彼らの電話に出てくれる?」

 この動画は、ミルグロム氏の自宅に設置されたセキュリティカメラが捉えたもの。動画の右上にはずっと「Nest」という文字が表示されている。

 ウィルソン氏がドアベルを鳴らすと、ストックホルムに居るというミルグロム氏の妻に防犯カメラから通知が届いた。そのままウィルソン氏が「ノーベル賞受賞」を知らせたため、ミルグロム氏の妻も、ライブで防犯カメラの映像を見続けたと、スタンフォード大学のツイートは続けている。

 その後、Twitterでの別の動画や、スタンフォード大学内のニュースサイトで、両氏のインタビューが掲載された。

 それによれば、ミルグロム氏に知らせを届けた共同受賞者のウィルソン氏自身も、迷惑電話と思って自宅の電話のプラグを抜いており、ノーベル委員会はなんとかウィルソン氏の妻であるメアリーさんへ連絡を取ったのだという。

 1948年生まれのミルグロム氏と、1937年生まれのウィルソン氏の関係は、ミルグロム氏が大学院生としてウィルソン氏に教えを請う1970年代に始まった。ウィルソン氏のもとで学んだ人物がノーベル経済学賞を受けたのはミルグロム氏で3人目。「ミルグロムは数学者のような考え方だけど、私は投機的に考えるタイプ」とウィルソン氏は2人が異なる性質であるとも語った。

同時に多くのアイテムが出品されるオークション

 両氏が受賞した理由として、オークション理論への貢献が挙げられている。その理論の具体例として、従来の手法では取引が難しかった携帯電話の周波数などをオークションの対象にできるようにした点がある。

 2人が携わった周波数オークションは、1994年、米連邦通信委員会(FCC)によるもの。

 スタンフォード大学のツイートで公開された動画で、当時についてミルグロム氏は「米国での最初の周波数オークションを設計しました。これは、それまで誰も知らなかった斬新な設計で、ほかの多くの設計の基礎になりました」と振り返る。

 周波数オークションは、1つの商品に対して実施されるシンプルなオークションではなく、「多くのアイテムが同時に出品されている」(ウィルソン氏)という形態。それぞれの価値をどう見極めるか、落札に挑む複数の事業者の動きも加わることになり、電波により高い価値をもたらした。

 両氏の貢献として、スタンフォード大学では周波数に1000億ドルを超える価値が生み出されライセンスとして割り当てられてきたと説明している。