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KDDI株主総会、「4G周波数の一部の5G転換を検討中」

 KDDIは、17日10時より第36期定時株主総会を開催した。総会は都内ホテルで実施された。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、会場には100名程度の株主のみ入場を受け付け、オンラインや書面による議決権の行使などを行った。また、会期も30分程度と短く設定され、事業内容や業績の説明は書面による説明に留め、総会では主に株主からの質疑応答を中心に実施された。

代表取締役社長 髙橋 誠氏

 総会の議長は、同社代表取締役社長の髙橋 誠氏。事前に受け付けていた株主からの質問について、取締役執行役員専務の村本氏より回答があり、続いて質疑応答が行われた。

質疑応答

 質疑は、高橋氏が議長のもと、各担当者が回答を行った。回答者は、取締役執行役員専務(コーポレート統括本部長)の村本 伸一氏、取締役執行役員常務(パーソナル事業本部 パーソナル企画統括本部長)の雨宮 俊武氏、取締役執行役員専務(パーソナル事業本部長 兼 グローバルコンシューマ事業本部担当)の東海林 崇氏、技術統括本部長の吉村 和幸氏。

――5Gへの移行、新型コロナウイルス感染症と同時進行後のニューノーマル(New Normal、新しい生活様式)に向かってどのような具体的な行動をされるか。

取締役 村本氏

取締役執行役員専務 村本 伸一氏

 在宅勤務やオンライン授業・オンライン診療などで、通信インフラの重要性が改めて顕在化した。また、感染拡大防止で人流データを統計的に活用し、緊急事態宣言前後の人々の動きを分析した。ビッグデータをリアルタイムで解析し、解決策を見出すことは、政府が目指すソサエティー5.0であり、日本社会が早期の実現を求めている。KDDIでは、早期に強靭な5Gネットワークを整備し、ニューノーマルに向けた日本社会全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に貢献していきたい。

 コンシューマー向けには、5Gならではの魅力的なサービスを提供するとともに、スマートフォンを使ったライフデザインサービスの利便性を高め、さらなる充実を図る。

 企業には在宅勤務の需要の高まりを受け、セキュリティやクラウドなどを一つのパッケージとして提供し、企業の本業を支えていきたい。

――持続可能な社会に向けてどう対応していくか、通信インフラ自体を地球への負荷を少なくしてどう持続させていくのか。

取締役 村本氏
 データセンターにおいては、高効率の無停電電源装置(UPS)と直流電源を採用し効率的な電源確保を行った。また、サーバールーム内の熱を放出し、粉塵の除去と湿度の調整を行った冷たい外気を取り込むテクノロジーを採用した。これらの取り組みで、2030年に2013年度比7%削減を、2050年には実質ゼロを目指す。

 また、国内の通信基盤維持の取り組みとして、国内海底ケーブルの他ルート化に取り組んでいる。ケーブル敷設にあたり、サンゴなど海洋生物の生態系を考慮したルートを選定している。ルートの冗長化をすることで、障害時のサービスの影響を最小限にする。

 今後も積極的に新技術を導入し、環境負荷の軽減と通信基盤の維持強化に努めていく。

――自己株式について、今年も自己株式保有がゼロになる償却を実施した。社会インフラを担う企業として利己、他利のバランスをどのようにとっていくのか。

取締役 村本氏
 中期経営計画においては、社会の持続的な成長に貢献する旨を記載している。持続的な利益成長をしていく事業を毎年しっかり成長させていくことがユーザーや社会の期待に応えることだとしている。

 配当など株主への還元以外にも、通信料金の値下げを行ったり、利益の増加とともに納める税金の上昇も社会貢献になる。今後も事業を通じて社会貢献していきたい。

――ワンセグ搭載端末について、NHKの受信契約が必要だという判決が出た。端末購入時にはそのような説明はなく、カタログにも記載がなかったが、法令遵守の点で端末販売時に丁寧な説明が必要なのではないか。

 NHKはインターネットでストリーミング配信をする。現状ネット契約だけでNHKとの契約義務がないにも関わらず、NHKの徴収員により契約を迫られる可能性が高いと思う。KDDIとして契約時の説明を行うなど対策したほうがいいのではないか。

取締役 雨宮氏
 NHKとの契約に対して個々に申し上げる立場にはないが、現状店頭ではユーザーから質問があった際に、受信料契約が必要になる旨と受信料窓口を案内している。

 ストリーミング配信での受信料有無の案内については、これから検討していきたい。

――今回の総会の開催について、1年のまとめとなる総会が30分足らずにまとめられるのはどうかと思う。

代表取締役社長 高橋氏
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を考慮しての開催となった。我々としても苦渋の決断だった。今後も改善していく、どうぞご理解いただきたい。

――取締役の選任について、消費者目線で見られる人を入れたらどうか。また、女性の社外取締役について、しっかりと活動していただいているのか。

取締役 村本氏
 取締役会の実効性評価は年に1回行っており、その結果を見る限り、男女関係なく、それぞれの立場に基づいて、しっかり活性化した議論をしている。消費者目線での議論も十分に意見を頂いている。

――楽天モバイルは、特別な契約・追加料金無しで世界でローミングできる。ソフトバンクは、アメリカ放題など追加料金無しでアメリカ国内でローミングできている。KDDIとして対抗策はあるか。

取締役 東海林氏
 海外ローミングについては、KDDIも対応している。料金では「世界データ定額」プランを早割で利用いただければ、空港でレンタルするWi-Fiルーターの料金と比較してもそん色ない料金となっている。今後も、エリア・料金などを改善していきたい。

――5Gの周波数と基地局建設計画について、総務省は基地局数を3倍に引き上げたいという報道があった。また、4Gの周波数の一部を5Gに活用するというが、エリアは広がるが大容量は実現できないという問題があると思う。これらについてどう考えているか。

技術統括本部長 吉村氏
 KDDIとして、まずは5Gとして割り当てられた周波数で今年度で1万局を全国に開局を目指す。今年の秋頃に法整備されるといわれている4G周波数の一部の5G転換については、KDDIとしても検討している。

 地方への基地局展開にあたっては、ソフトバンクと「5G JAPAN」を設立した。互いの基地局のリソースをシェアすることで、地方への基地局展開を加速していく。来年度末に5万局の展開を行い、2023年度までには、現在の4Gネットワークとそん色ないネットワークを提供したい。